久しぶりの実家で絶句しました…〈年金月23万円〉70代父の通帳から消えた「7,000万円」、残高突如ゼロの謎。父が語る“真相”に40代息子、一転して大絶叫【弁護士が解説】

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一人暮らしの高齢者が詐欺や悪質商法の被害に遭う事件が、連日のように報道されています。遠方に住む独居の高齢親がいる子世代も、心配に駆られることでしょう。本稿では、篤史さん(仮名)の事例とともに、詐欺、悪質商法の被害救済に注力する市川巧弁護士が、被害に遭った場合の対処方法や対策について詳しく解説します。

依頼者の篤史さん(仮名/40代)は、久しぶりに一人暮らしをしている70代の父親の家に行ったところ、言葉を失いました。7,000万円あったはずの残高がほぼゼロになっている預金通帳をみつけたのです。父の年金は月額23万円ほど。年金だけでも日々の生活には困らないため、預金はここ数年、ほぼ手をつけていなかったはずです。
なんとか冷静さを保ち、父を問いただすと、しばらく前に若いセールスマン風の男性が家に来たことを明かしました。
その男性からは、「いまどき超低金利だから銀行にお金を預けるよりも、不動産に投資したほうが有利だ。それも発展途上国の不動産に投資すれば、何年後かには購入したときの何倍もの資産価値になる」といわれました。その気になった父は、男性に勧められるまま不動産販売会社との契約書を取り交わし、銀行預金のほぼ全額を振り込んだとのこと。
父は得意気な様子で篤史さんに契約書をみせました。「なんてバカなことを……」篤史さんは思わず大声で父を叱責してしまいます。
篤史さんは「父は悪質業者に騙されたのではないか」「一応、契約書はあるが父が購入したという海外の不動産が本当に存在するのか」「存在するとしても、父の所有になっているのか、なにから調べたらいいのか、調べる方法があるのか……」と考えるべきことで頭がいっぱいです。警察に届けたうえ、弁護士に相談することにしました。
一人暮らしの高齢者を狙う悪質業者は後を絶ちません。いまはインターネットで被害に遭うケースが多いですが、昔ながらの飛び込み営業のような入り口で被害に遭うケースも散見されます。
相談者のケースは後者です。この場合、一見もっともらしい契約書が作成されているように思えるかもしれません。
しかし弁護士等の専門家からみれば、契約書の内容が不合理であったり、勧誘の際の文言と食い違ったりしていることがあり、特定商取引法、消費者契約法の「不実告知」や、民法の「錯誤」、「詐欺」に該当することがあります。
その場合、契約相手である不動産の売主に対して契約の取消しを主張し、支払った金額の返還を求めることになります。
相手業者に(詐欺的とはいえ)営業実態がある場合、弁護士が代理人として、事実を指摘したうえで契約の取り消しおよび返金を求める通知書を送れば、早期の返金がなされることもあり得ます。
実際、筆者が過去に扱ったケースでは、相手業者に内容証明郵便で通知書を送ったところ、すぐに相手業者の代理人弁護士から連絡が入り、支払った金額のほぼ全額を回収できました。

高齢者が被害に遭わないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。
まず、高齢者が子どもたち家族と同居している場合は、日ごろから、高齢者(親)の資産状況を把握しておく、そして、怪しい取引に巻き込まれていないか、不審なお金の使い方をしていないか、定期的に通帳を見せてもらうなどしてチェックすることです。子どもが親の資産状況を把握しておくことは、将来の相続対策としても有効でしょう。
高齢者の認知機能が低下しているような場合は、成年後見制度や家族信託を活用して、子もしくは弁護士等の専門職が、高齢者(親)の財産管理を担うことで詐欺被害を防ぐことができます。
このような被害から大切な家族を守るためにも、日ごろからのコミュニケーションと、いざというときの専門家への早期相談は不可欠です。
市川 巧弁護士貝坂通り法律事務所

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