これまでの懲役刑と禁錮刑が6月から「拘禁刑」に一本化された。
高齢や依存症など受刑者の特性に応じた処遇を通じて、懲罰から社会復帰支援と更生に重きをおいた取り組みに向かう。
とはいえ、スタートしたばかりの制度運用は手探りのところもあるだろう。少年刑務所の現役教育専門官と、元受刑者が、収容施設をめぐるこれまでの課題と、今後の展望について双方の立場から語り合った。
「拘禁刑で刑務所はどう変わるのか?」と題したセミナーは5月29日に西川口榎本クリニック(埼玉県川口市)で実施された。
登壇者は、川越少年刑務所の教育専門官として働く田村勝弘さんと、罪を犯した人たちの場をつくる元受刑者の湯浅静香さん(「碧の森」代表)。
拘禁刑の導入をめぐって、湯浅さんは「出所を見据えた処遇」に期待を寄せる。
薬物に依存し、窃盗を繰り返すなかで実刑判決をうけた湯浅さんは、服役した女子刑務所で、薬物依存に関連するプログラムの受講を希望したが叶わなかったという。
また、仮釈放の前には、社会で生活するための知識などを学ぶ機会があったが、期間も内容も十分ではなく、「社会の情報を2週間で理解しようとするのはとても無理だった」と振り返る。
これまでの受刑者は、服役中の教育が定着せず、入所前と同じ状態で社会に戻ることになる–。社会を理解できず、社会からも理解されないため、自暴自棄になり、また刑務所に入るという悪循環を指摘した。
「入所時から出所を見据えた教育」のほかにも、「元受刑者と直接話せる場をつくるなど、服役中に社会とのつながりを持ち続けるような処遇」が必要だと語る。
拘禁刑施行後の刑事収容施設では、24種類の処遇課程も導入され、高齢者、精神障害のある人、薬物依存などの特性に応じたものが用意されるという。
田村さんによれば、たとえば薬物に関するプログラムは「これまでの教材は内容が古く、現実にそぐわないこともあった」と話す。
今後は、収容施設のなかでも、医療機関と同じようなプログラムができるのではないかと語る。
社会が刑事収容施設や受刑者に期待するように、受刑者自身もまた「再犯防止を期待している」と力を込める。
「自分はこうありたいと思う人生を歩めるように、そして自分はこうありたいと言葉にできるスキルを身につけてほしい」(田村さん)
湯浅さんは、服役中に被害者のことを考える時間が「ほぼなかった」と省みる。
「私は帰る場所を失いたくないから、ひたすら夫に謝るので精一杯でした。場所と環境がととのえられないと、被害者や贖罪を考える心の余裕も生まれません」