上場企業の創業経営者の衝撃的な薬物逮捕劇が起きた。複数の女性も相次いで逮捕された事件では、超高級ホテルを舞台に“薬物性接待パーティー”が行なわれていたという。その実態に迫る。【前後編の後編。全文を読む】
千代田区にあるラグジュアリーホテルの高層階。女性が部屋に足を踏み入れると、目に飛び込んだのは脱ぎっぱなしの衣服やコンビニ食品のゴミ、飲みかけのペットボトルが室内に散乱する様子だった。高級スイートには似合わない有様に驚く間もなく、鼻をつく異臭。そこに現われたのは、全裸にガウンを羽織った初老の男性だった。苛立った様子で、女性に「服を脱いで椅子に座れ!」と指示した──。
5月12日、覚醒剤取締法と麻薬取締法違反容疑で逮捕された不動産投資会社「レーサム」創業者で元会長の田中剛容疑者(60)。
田中容疑者が逮捕されたのは、昨年6月に都内の高級ホテルで覚醒剤とコカインを所持していた容疑だ。当時室内にいた元レースクイーンの奥本美穂容疑者(32)が同時に逮捕され、同16日には同じくその場に居合わせた国立・東京科学大の現役学生・小西木菜容疑者(21)も逮捕されている。
こうした違法薬物を摂取しながらの高級ホテルでのパーティーは連日開かれていたとされ、「女性を斡旋する男が存在し、『港区女子』や芸能関係の女性を田中容疑者のもとに送り込んでいたようだ」(社会部記者)とみられている。
「報道を見て“あっ、あの人だ”と驚きました」
そう語るのは、事件化した夜の約半年前(2023年冬)に、田中容疑者の“薬物性接待”に参加したと証言する元キャバクラ嬢でOLの女性Aさん(27)だ。
Aさんから提供された仲介者とのLINEのやり取りでは〈明日、明後日の予定は今のところどんな感じかな?? 例の人来てて〉〈今日どう頑張っても早くは来られないかな?〉〈案件中はテレグラムでやり取りするから〉などとある。
冒頭のシーンは、Aさんが部屋に入った時の証言から構成した描写だ。
「店のお客さんだった男性にバイトとして紹介されていました。それが『1時間20万円払うから頼む。女性を切らすと大変なんだ』『ラリってるジジイの相手だけど下着姿で寝てるだけ。EDだから襲われることは絶対ない』と言われて……」(Aさん)
高額報酬に目がくらみ、部屋を訪ねたのが冒頭の場面。その時に感じた異臭についてはこう語る。
「私はやったことがないですが、明らかに何か良くない草を燻したような強烈な匂いが部屋に充満していました」(同前)
実際の“仕事”内容はどうだったのか。ショーツ1枚の姿にさせられたAさんは椅子に座らされ、そこから要求はコロコロ変わっていったという。
「男性は私がいた約2時間、ずっと自分の股間を触っていましたが、勃起はしていないようでした。遊びのルールとして『常時女性は2人』だったようで、私1人だったことに不満の様子で『早く女を呼べ!』と仲介者に怒りの電話を入れていた。
途中で飽きたのかスマホで成人向けの動画を映して、『一緒に観よう』と誘ってきました。性的なシーンで、『お前もこういうのやったことある?』とニヤニヤしながら聞かれました」(同前)
卑猥な言葉を投げかけられながらも、身体的な暴力を受けることはなかったとAさんは証言する。ただ、薬物に関してはこんなやりとりがあった。
「クリームが塗られた歯ブラシを手渡されて、『自分で身体に塗れ』と指示されました。胸元付近に塗っていましたが、『股間にも塗れ』と指示されました。身体のなかに入れたくなかったので、塗って感じたフリをしてやり過ごしました」(同前)
約2時間後“後任”の女性2人が部屋に来て、Aさんは解放された。
「2人の女性は何度か来たことがあるそうで、AV女優と大学生だと言っていた。謝礼の受け取りは仲介した男性が住むタワマンを指定されましたが、怖くてタクシーで直帰しました」(同前)
田中容疑者の代理人弁護士は逮捕容疑やAさんの証言について、「小西様が現場にいたとする当日、警察が臨場したのは、突如として男性3人が室内に乗り込んできて恫喝する構えを見せたことから、田中氏が自ら通報したと承知しております。不同意性交等に関するご主張は事実に相反していると述べています。その他は捜査中のため回答は差し控えます」とした。
薬物の入手経路など、不明な点はまだ多く残っている。事件の真相解明が待たれる。
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※週刊ポスト2025年6月6・13日号