【青山 和弘】【最速インタビュー】小泉進次郎農水大臣「まずは現金給付!そして消費減税への道も断つべきではない!!」

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農水大臣就任に先立ち、気鋭の政治ジャーナリストが小泉氏を直撃インタビュー。日本、そして自民党が抱える農政の問題を語り尽くした。
―物価高が叫ばれる中、野党各党は消費減税を訴えています。小泉さんは先日、「賃上げの恩恵が届かない年金生活者など低所得者に対しては現金給付をすべき」と主張されましたが、参院選に向け自民党はどう対応すべきですか。
消費減税を求める声は、私も理解できます。最近の経済指標を見ても、賃上げの効果が物価高、特に食料品の値上がりで相殺されてしまって、実質賃金が上がっていません。
特にコメが高い。そこでわかりやすく物価に紐づいている食料品に対する消費税を下げてもらいたいというのは、世の中の率直な叫びとして受け止めるべきだと思います。
ただ物価高に苦しんでいる方々に届けられるのは、「現金給付」が一番早い。そして、自民党が現金給付を実施する場合には、給付の先にやることも一緒に提示した上で行う必要があります。
一番早く届けられるのは、マイナンバーに紐づいている「公金受取口座」(編集部注・国や自治体から受ける給付金・還付金等の入金先としてあらかじめ登録しておく預貯金口座)への給付です。
現在マイナンバーに紐づいている口座数は6400万。全国民の2人に1人は登録しているわけです。そして登録していない方には給付までに登録していただく。そうすれば口座の数はグッと増えるし、災害やパンデミックがあったときの備えにもなるのです。
どうしても公金受取口座を登録したくない方々も一定程度いると思います。そうした方々は、時間はかかりますが、手続きを役所でやっていただく。一番早いのはこれです。
―現金給付は石破政権も検討しましたが、世論の評判が悪いので撤回しましたよね。
いち早く効き目があるのは、給付なのは間違いない。ここで重要なのは、給付はあくまでつなぎで、次のステップがあるということです。
私は自民党が「絶対に消費減税しない」というスタンスである必要はないと思います。ただ消費税の上げ下げの議論とセットで、社会保障改革をどうするのかの議論が不可欠です。この議論をせずに、わかりやすいからといって消費減税を訴えるのは無責任です。
立憲民主や国民民主、維新も、実は「恒久的な消費減税」とは言っていない。
消費減税はあくまで時限的措置で、その後で「給付付き税額控除」(編集部注・税金から一定額を控除する減税で、課税額より控除額が大きい低所得者にはその分を現金で給付する)をやるというのが、実は各党の一致した主張なのです。
(1)現金給付(2)時限的な消費減税(3)給付付き税額控除という、いわば「ホップ・ステップ・ジャンプ」なんです。
だから自民党が現金給付を実施するにしても、給付の先にやることを一緒に提示した上で行う必要があります。
ところが参院選を目の前にしているから、各党が違いを際立たせるため、「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ステップ」の部分、消費減税の話に集中しているわけです。
―消費減税は社会保障費の削減とセットで検討すべきというお話でしたが、「社会保障費のここは削れる」という部分は念頭にありますか。
増え続ける社会保障費をどう抑制するかは常に考える必要がありますが、自民党の社会保障の基本哲学は、「小さなリスクは自分でみる、大きなリスクは社会でみる」です。
今回、高額療養費の見直しが検討されましたが、これは命に関わる大きなリスクに対応した制度です。そのため自民党が基本哲学を忘れて、命を左右する部分にいきなり手を突っ込んできたという誤ったメッセージが伝わってしまった。改革には順番が大切で、単純にコストカッターになるべきではないんです。
その一方で、価格の見直しなど、改革しないといけないことが山ほどあるのもまた事実です。
例えば、先進国の中で入れ歯を一番安く作れるのが日本。入れ歯の自己負担って、上下の総入れ歯片方で約9000円なんですよ。アメリカでは35万円ぐらい。
それに湿布などのOTC類似薬をはじめ薬の過剰処方の問題もある。こういう問題に手をつけないままでいいわけがない。こうしたことを議論する必要はあるでしょう。
一方で年金について言うと、パートなどで働く第3号被保険者や非正規社員の方々など、働いているすべての人に厚生年金にも加入していただく。
育児と仕事の両立支援や女性の社会参画など働き方が多様化する中、正規社員以外にも厚生年金のセーフティネットを広げるべきです。
年金への過度な不安を煽る年金の破綻論は世論には受けるようですが、誰の得にもならない。厚生年金の加入者が増えれば、むしろ財政基盤が強化されるということをきちんと訴えていかなくちゃいけないと思います。
加えて、人生設計が多様になってきたので、年金を何歳からもらい始めるかを、今は選べます。支給開始年齢を一番遅い75歳にすれば、約80%年金が増える。この制度をちゃんと皆さんに説明すれば、年金に対する信頼度は上がると思います。
「年金制度を抜本改革します」というと聞こえはいいけど、逆に不安を煽るものです。基盤的な制度を簡単に左に変え、右に変えというのは道を誤りかねない。
例えば国民年金を厚くする財源のために消費税率を上げますか? 誰も歓迎しないと思いますよ。
後編記事『【直撃インタビュー】小泉進次郎農水大臣「生産者団体や農協などの既得権益に気を遣っていては、米価は下がらない!」』へ続く。
こいずみ・しんじろう/’81年、神奈川県生まれ。父は元総理大臣の小泉純一郎氏。米・戦略国際問題研究所非常勤研究員を経て’09年、神奈川11区から初当選。環境大臣、自民党選対委員長などを歴任した
あおやま・かずひろ/’68年、千葉県生まれ。’92年、日本テレビ放送網に入社し、’94年から政治部。野党キャップ、自民党キャップを経て、ワシントン支局長や国会官邸キャップを歴任。’21年フリーに
「週刊現代」2025年6月9日号より
【つづきを読む】直撃インタビュー・小泉進次郎農水大臣「生産者団体や農協などの既得権益に気を遣っていては、米価は下がらない!」

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