「勤務態度はいたって真面目。そんなことをする人だと思わなかった」――。
【画像で見る】強欲従業員たちの「衝撃手口」や、実際に被害に遭った経営者たち
こう語るのは、ある居酒屋経営者だ。飲食店で従業員が経営者の目を盗み、店の金を横領する事件が想像以上に多くの店で起きている。その目的はギャンブルやキャバクラだというから呆れてしまう。
筆者は外食ジャーナリストとして多くの飲食店経営者と関わるが、こうした従業員による横領の話は後を絶たない。今回はその中から「本当にあった話」として、ワンオペを悪用したものや、本来は縁起物であるはずの「熊手」を隠れ蓑にしたケースを紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)
本当にあった飲食店の横領話 shibainu/イメージマート
飲食店で発生している横領の最もオーソドックスな手口が、レジから現金を抜き取るもの。店長のような現場の管理者が、レジデータの取り消し機能などを駆使して経営者や本部に対して1日の売上額を実際より低く報告し、その差額を懐に入れるというものだ。
多くは1000円や2000円といったバレにくい少額からスタートし、だんだんと盗むことに慣れてくると1万円、3万円……と金額が大きくなる。やがて大胆な金額を抜き取るようになると、経営者が違和感を持ち始めて発覚につながるケースが多い。店内は多くのお客で盛況なのに、報告で上がってくる売り上げの数字が妙に低く、経営者の体感と数字が一致しないことで「おかしい」と発覚するのだ。
経営者が現場の店長に金銭の管理を丸投げしたことで、会社の金を持ち逃げされたという話も聞く。
「信頼しているから」と店長に日々の売上金の管理はもちろん、会社の銀行口座の情報まですべてを共有していた居酒屋経営者のケースを紹介しよう。この店では日々の売上金の管理に加えて業者への支払いも任せていたため、店長が自由にお金を引き出せる状態だった。
それがある時、店長にすべての金を持ち出され、行方をくらまされたという。被害総額は900万円にのぼり、数カ月前から業者への支払いが滞っていたことも後から発覚した。長年にわたり勤務しており、勤務態度もいたって真面目。お客からの評判もよく、経営者は「まさかあの人が……」と肩を落としていた。いくら信頼していたとしても、経営者がこまめな確認を怠らないこと、万が一の場合、致命傷になるような情報共有は行わないことが必要だ。
「そんな手が!」と驚く手口もある。
飲食店のレジ回りに関するシステムを提供する企業の担当者から聞いた、ある券売機制のラーメン店の話をしよう。この店舗ではランチのピーク帯が過ぎ、他のスタッフが退勤して店長のワンオペになったところで、券売機に「故障中」と張り紙を出していた。もちろん故障などしていない。
券売機が使えない代わりに、お客は店長に直接現金を支払う。そしてそのお金はそのまま店長のポケットへ……。本部の社員が抜き打ちで店舗を巡回した際、故障していない券売機に張り紙があるのを見つけ、問い詰めたところ発覚したという。
ある居酒屋では、店内に飾っていた「熊手」が横領の隠れ蓑になっていた。熊手とは毎年11月に各地の寺社で行われる「酉の市」で商売繁盛を祈願して購入される縁起物で、七福神や鯛、小判などのモチーフの間に、本物の“万札”が折りたたまれて何枚もはさまれているデザインのものもある。
店内の壁にそうした熊手を飾っていたある店では、いつものように営業していると常連客がふと「あれっ? お札減ってない?」と声を上げた。見れば、確かに飾り始めた当初からお札が減っているではないか!
店からすれば、毎日忙しく営業する中で、いちいち熊手のお札の枚数など気にしていられない。その後こっそり設置した監視カメラには、営業後、壁によじ登りお札を抜き取る従業員の姿が写っていた。問い詰めると定期的に1枚ずつ抜き取っていたという。商売繁盛を祈願するはずの熊手が、まさか横領に利用されてしまうとは……。神様も泣いているに違いない。
実はこうした横領、発覚後に従業員を「即刻クビ」にすれば解決するという簡単な話ではない。続く記事では700万円を横領されたにもかかわらず、犯人を雇い続けた店のケースや「横領されやすい店の特徴」などを解説していく。
〈「使い道はギャンブルやキャバクラ」「最初はバレにくい1000円程度から」飲食店の“強欲従業員”たちが手を染める“大胆すぎる横領” 犯人を「即刻クビ」にできない悲しすぎる事情〉へ続く
(大関 まなみ)