「選挙は儲かるんです」…立花孝志氏に突如浮上した「ポスター代水増し疑惑」弁護士が指摘する法的問題

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『NHKから国民を守る党』から『NHK党』と名称を変えた、党首の立花孝志氏(57)。そんな立花氏に、新たな疑惑が浮上した。
立花氏の追及を続けているTBS系『報道特集』は選挙にまつわるおカネの動きを取材し、疑惑をあぶり出している。5月10日放送の番組タイトルは『選挙ポスターで金儲け “選挙ハック”公費水増し請求の実態』だった。
立花氏は“なぜ立候補したのか?”という質問に対し、たびたびこのように答えている。
「金儲けです。選挙は儲かるんです」
一般的には“おカネがかかる”とされる選挙で、なぜ儲けることができるのか。『報道特集』はそのカラクリに迫った。
儲かる仕組みは、選挙ポスター製作費の水増し請求にあるという。
どういうことかというと、大多数の候補者は選挙ポスターの作製を印刷会社などの業者に依頼している。製作費は当然、候補者が支払うことになるのだが、候補者が一定の得票率を超えた場合は、印刷会社が直接自治体に印刷代を請求することができ、公費で負担される仕組みがある。
その際に支払われる印刷代は選挙ごとに上限額が決まっている。だが理解に苦しむのは、上限額が実際にかかる費用より、かなり高く設定されていて、業者は上限額まで請求することができるという。実際にかかった費用より高い金額を請求、すなわち“水増し請求”してもなんの問題もないというのだ。
『報道特集』は、ポスター印刷代を水増し請求して、利益を上げた業者を取材しており、その業者は実際にかかった費用に90万円ほど上乗せして請求、支払われたという。
立花氏もこのシステムを“活用”し、利益を得ているというのだが……。
立花氏は、’19年7月にポスターの印刷や広告業を行う会社『ネット選挙株式会社』を作らせた。N党関連の選挙ポスターは同社が制作に携わっており、立花氏が昨年12月に大阪府泉大津市長選に立候補した際も、ポスターを制作している。この選挙で、立花氏は当選することはなかったが得票率は10%を超え、ポスター代は公費負担となった。
『報道特集』が取材したところによると、請求された金額は泉大津市が設定している上限額の39万2140円だった。ポスターは140枚作られているから1枚当たりの単価は2801円となる。
これが果たして水増し請求なのかどうかはわからないが、大手印刷会社の社員によれば、
「写真集でも、1冊当たりの印刷代は1000円から1500円くらいです。べらぼうな値段ですね。ロット(枚数)にもよりますが、ペラ1枚のポスターなので、だいたい100円からでしょう。選挙ポスターですから防水加工してもせいぜい500円くらいでしょう」
明らかにぼったくりだという。
これが、立花氏の言う“儲かる”仕組みだということは、氏がかつて上げた動画の中でも認めている。だが、実際にかかった費用より水増しして請求することに問題はないのだろうか。
実はこの制度を悪用した政治家がおり、事件となったことがある。
’04年に行われた岐阜県山県市議選で、印刷業者と共謀しポスター代合計約150万円水増し請求したとして、候補者7人が詐欺の疑いで書類送検されている。
’10年にも福岡県福津市議選に立候補した4人(当選3名・落選1名)が、選挙ポスター代として市が負担できる上限の35万3000円を請求し、実際にかかった費用9万4500円から16万2750円の差額で後援会ハガキや名刺などを作成、さらには現金を3万円から7万円受け取っており、「詐欺だ」という非難の声が上がった。
立花氏に関してはどうなのだろうか。
自身のYouTubeチャンネルでこの問題を取り上げていた、西脇亨輔弁護士に聞いてみた。
「難しいところなんですが、過去に事件化された例があり、この制度を悪用した市議会議員が検挙されました。そのときは候補者と印刷業者が共謀して、業者に水増し請求させてその差額分を他の印刷代に回したり、おカネをキックバックさせていました。わかりやすかったのですが、立花氏の場合は実に巧妙なんです。自分の傘下にある会社が直接自治体に請求するわけで、水増しではなく初めから製作費が“これくらいかかった”と請求することができるわけです。
本当は1万円しかかからなかった製作費を2万円かかったと言っているわけではなくて、最初から2万円だと請求できるわけです。相場から考えたら高い価格となっても、“会社なんだから利益を上げるのは当たり前のことだ”と立花氏が言っていることは正当性があると思います。とはいっても実態があるかどうかが問題となります」
『報道特集』でN党の元関係者は、『ネット選挙株式会社』は自社に印刷機がなく、ポスター制作は他の印刷会社に丸投げしていると証言している。
「その証言が事実なら、『ネット社』は中抜きしているだけの会社となります。立花氏が弁明するとしたら、確かに印刷は印刷会社に依頼したが、自分の所ではデザインやプロデュースをしている、中抜きしたおカネはその対価として得ているのだと。そういう理屈を立てるために『ネット社』を作らせたのだと思います。ここで2つの問題が生じます。
形態はそうであっても、実際は中抜きしているだけの場合は、この制度の趣旨から外れていて、自治体からおカネをだまし取っているのではないかという『詐欺』の疑惑が出てきます。逆に実態が伴っていて、印刷はしてないがアイデアを出したりプロデュースをしているとなると、選挙に関して、主体的裁量的に頭を使って行う業務というのはおカネが一銭でも発生したら買収になるという、公職選挙法に抵触する買収疑惑が生じます。兵庫県知事選で指摘された『メルチュ』の件と同じことになります」(西脇弁護士)
浮かび上がった疑惑に果たして警察は動くのだろうか。
「過去の例では、岐阜県山県市議選も書類送検されたものの、起訴猶予になっているくらいですからね。それに立花氏のことですから抜け道を用意していると思います」(同・西脇弁護士)
警察の動きは期待できず、この制度の悪用が横行することを懸念するという。
立花氏のみが悪いわけではなく、悪用されやすいけしからん制度があること自体が問題なのだが、選挙ポスター掲示板、二馬力選挙、そして今回の選挙ポスター水増し請求疑惑……。選挙に絡む問題点を次々と浮かび上がらせてくれる立花氏は、反面教師として最適だーー。
取材・文:佐々木 博之(芸能ジャーナリスト)

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