警察庁が発表している最新情報「令和5年中における行方不明者の状況」によると、2023年(令和5年)に警察に行方不明者届が出された人数は9万人超。中でも特に10代~20代で行方不明者が多く、全体のおよそ4割を占めています。
これらの行方不明者の中には、家出人も含まれます。そして若者が自由や救いを求めて家を飛び出した結果、搾取や犯罪の標的にされたり、犯罪に加担させられたりするケースも後を絶ちません。この深刻な社会問題について、「友人と家出をしたことで、悪い大人に利用されてしまった」という家出経験者の女性・日野美玲さん(仮名)にお話を聞きました。
◆両親と合わず、女友達と家出することに
「私は年齢に見合わない門限やルールを押し付けてくる両親と反りが合わず、友人と家出をした過去があります。家出のキッカケは、同じような境遇に悩む智花(仮名)と初の居酒屋へ出かけたことでした」
親の愚痴などで盛り上がっていると、2人の隣で飲んでいた30代くらいの男性2人組が、「家を出たいの?」などと声をかけてきたのです。最初は戸惑った美玲さんですが、2人はノリがよくてやさしく、面倒見のよい印象だったそうです。美玲さんと智花さんの話にも親身に耳を傾けてくれました。
◆初対面の男の紹介で、家と職を見つける
「私たちが食べた分も支払ってくれて、『困ったらいつでも連絡して』と紳士的だったことも好印象でした。何度か遊ぶうち、佐藤(仮名)と名乗るその男性から『家出するなら、ちょうどいい物件がある』と持ちかけられました」
築年数は古いけれど、広くて日当たりもいい1LDKの物件。さらに佐藤は、オーナーが知り合いだというキャバクラも紹介してくれたため、美玲さんと智花さんはそこで働くことに決めます。そして、家出を決行しました。
「ところがしばらくすると、美玲さんが用事で出かけている間に尋ねてきた佐藤が、智花と肉体関係を結んでいたことが発覚したんです」
◆「保険証レンタルは1回500円」転落していく友人
「一度目はたまたま私が留守のときだったようですが、その後は私が家を空けるたび、智花に連絡を強制していたようでゾッとしました」
それを知ったのは、智花さんから「そうしないと、ここから出ていかないといけないと思った」と泣きながら告白されたから。さらに風邪をこじらせたときには複数回にわたり、美玲さんが知らないうちに佐藤から健康保険証を借りていたことも判明します。
「保険証は知らない女性の名前だったようで、レンタル料金はそのときによって違っていて1回500~1000円を支払っていたようです。そのうち智花とは連絡が取れなくなり、戻ってもこなくなりました。そして代わりに、見知らぬ男性が尋ねてくるようになったんです」
怖くなった美玲さんはそっと実家へ戻り、両親に心から謝罪。家出期間があったことで、お互いに少しずつ歩み寄ることができたといいます。
その後、智花さんを心配した美玲さんは、智花さんの両親に事情を説明しに行きますが、取りつく島もありませんでした。
◆数年後、彼女はすっかり別人になっていて……
「それで智花のことはそれっきりになってしまっていましたが、数年後にバッタリと再会したんです。自転車を押しながらうつむき加減で歩いている智花には、以前のような明るさや元気がなく、一瞬誰だか気づかずに通り過ぎそうになりました」
相手が智花さんだということに気づいて声をかけると、顔を上げて気まずそうな様子。心配していたことや、自分は実家に帰ったことを話したところ、「美玲は自宅に戻ったんだね。よかった」とつぶやき、「私はいま、風俗で働いてる」と智花さん。
「ずっと『風俗では働きたくない』と言っていたので、一体どうしたのかと尋ねると『佐藤に紹介されたホストクラブにハマって借金を重ねちゃって、稼げる店があると紹介された店が風俗だった。ホストのことは好きだし、どうしようもない』と涙目で説明してくれました」