《観光地で相次ぐ“盗撮”問題》奈良・シカの次は大阪・今宮戎神社 “福娘盗撮トラブル”に苦渋の「敷地内で人物の撮影一切禁止」を決断 神社側は「ご奉仕行為の妨げとなる」

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奈良県・奈良公園に生息する国の天然記念物・奈良のシカと戯れる女性観光客のショート動画と、それらをまとめたTikTokアカウントが物議を醸している。同アカウントが投稿している動画に映っている女性観光客はそれぞれ異なる人物であり、胸元が大きくあいていたり、丈の短いスカートを着用している人が目立つ。なかにはしゃがんだり、足を組み替えるときにスカートの中が見えてしまっている動画まで存在していた(現在、当該のアカウントは削除されている)。
【画像】盗撮に悩まされる福娘たち「関西では“アナウンサーの登竜門”とも呼ばれる」
「奈良公園のシカと戯れる女性観光客を撮影した動画は、SNS上で“流行りコンテンツ”として成立しており、それらをまとめたアカウントが多数存在しています。なかには、月額のサブスクサービスを提供しているアカウントもあり、ビジネスに利用されているようです。
ここで問題となるのは、SNSに投稿された動画に“盗撮”の可能性がある点です。これらの動画が被写体本人の意思とは関係なく、第三者によって撮影・アップロードされたものであるとの指摘がされています」(SNSに詳しいライター)
こうした撮影マナーを巡る問題は、奈良公園に限った話ではないという。
京都・祇園ではかねてから芸舞妓を無断で撮影する“舞妓パパラッチ”などの撮影マナー違反が問題視されている。奈良のシカ同様、無断でSNSに動画が投稿されるケースも多いという。そうした背景もあり、2024年5月には一部私道での「撮影禁止」及び「違反者に対して罰金1万円」の看板が設置された。
また、“人物の撮影一切禁止”に踏み切った場所まである──。
大阪市浪速区・今宮戎(いまみやえびす)神社では、2024年12月に公式サイトで「境内における撮影における注意事項」として「許可のない境内内での撮影は禁止いたします」と表明した。これは、人物に対する無許可撮影を禁止するものだという。
今宮戎神社といえば、1月9~11日の3日間で斎行される祭祀「十日戎」が有名だ。なかでも十日戎にあわせて45名前後が選出される「福娘」は、関西では“アナウンサーの登竜門”とも呼ばれている。毎年100万人にものぼる参拝者のなかには「福娘」を目当てに訪れる人も少なくないというが、なぜ“撮影禁止”に至ったのか。
今宮戎神社の担当者が語る。
「福娘・巫女などの女性奉仕者に対して、迷惑行為ともいえるような撮影が境内で目立ってきたためです。福娘の本来のご奉仕内容は、参拝者が選ばれた御札や吉兆類を笹に結び、神様に代わって福をお授けすることですが、ここ数年はご奉仕行為の妨げとなる形で福娘の撮影を始められるなど、目に余るような行為が境内で増えてきました。
また福娘のなかには、無断で撮影されることや撮影された写真や動画を、ネット上にアップロードされるということに対して健康面や精神面での被害を訴える方もおられるため、皆さまに広く納得していただきたいという形で、今年初めてこういった対策を取らせていただきました」(今宮戎神社担当者)
なかには計画的な行為もあるようだ。
「その年に選ばれた福娘たちは、十日戎が近づくと金烏帽子・千早・お揃いの着物を着装し、各テレビ局や新聞社などの媒体・官公庁・関係各所に新年の挨拶回りに伺うのですが、そういった訪問先に張り付き、取材陣に紛れたり、隠れた場所から狙って撮影をする行為も報告されております。その際に撮影した映像を編集し、YouTubeやSNSなどに無断でアップロードされる事例も目立つようになり、我々も対応を検討しております。
こちらの迷惑行為は“境外”で起きたことではありますが、福娘のプライバシー保護と心身の健康を保護するため、一律で“肖像権の侵害”として対策する方向で進めております」(今宮戎神社担当者)
今年で73代目を迎えた今宮戎神社の福娘。70年以上の伝統と歴史があるなか、スマートフォンやSNSなどの登場によって新たに浮上した問題に神社側も当惑しているという。
「SNSが急遽台頭してきたなかで、我々の認識が追いついていないところもある。“人物への全面撮影禁止”は今年から始まった対策のため、皆さまへ周知が浸透しきっていないとは思いますが、来年の『十日戎』に向けて、少しでも理解を深めてもらえるように対応していきたいと考えております」(今宮戎神社担当者)
観光地の安全が脅かされるような行為の根絶が望まれる。

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