川崎市在住の岡彩咲陽(おかざき・あさひ)さん(20)が昨年末から行方不明になり、家族から行方不明届が出ていた事件で、元交際相手の自宅から一部白骨化した遺体が発見された。被害女性は、神奈川県警に複数回にわたりストーカー被害を訴えていたという。
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彩咲陽さんは、遺体が発見された自宅に住む男性と2024年4月ごろから交際を始めたとされる。ところが程なくして2人の関係性が悪化し、彩咲陽さんは周囲にDVやストーカーの被害を訴えていたという。
昨年6月には、彩咲陽さんが男性に連れ去られたうえ、暴力を振るわれたとして警察に被害届が提出されていたことも明らかになっている。
身の危険を感じた彩咲陽さんは、一時期は地方の親族宅に身を寄せ、昨年末からは川崎市にある祖母の家で暮らしていた。彩咲陽さんが失踪したのは、その祖母の自宅だった。
12月20日朝に彩咲陽さんが祖母宅から姿を消し、家族が県警に通報したのが22日のこと。その際、祖母宅の窓ガラスが割られ、鍵が開けられていたことが明らかになる。
こうした経緯を見ると、彩咲陽さんの失踪に交際相手の男性が何らかの関与をしている可能性はかなり高そうに思えるが、なぜ元交際相手の自宅に踏み込むまで時間を要したのだろうか。
「数回にわたり警察に相談を寄せていたにも関わらず女性が失踪し、関与が疑われる男性の自宅から遺体が発見された。大前提として、この事態は、神奈川県警として重く受け止めるべきです。神奈川県警だけに限らず、今回のようなストーカーが引き起こした凶悪事件において、警察の動きが後手後手に回ることは珍しくありません」
そう解説するのは、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏である。
「そもそも、ストーカー規制法は、他の法律と比べてかなり踏み込んだ法律だと言えます。例えば男性が女性にストーカー行為をしているという状況で、男性側の強圧的な言動が動画やLINEのやり取りに残されていると被害者が訴えれば、警察が口頭注意をすることができるのです。ストーカー事案以外で警察がこうした対応を講じることは難しいと思います」
捜査関係者によれば、男性は彩咲陽さんに対するストーカー行為を理由に、「ストーカー規制法」に基づく警告を受けていたという。
「“警告”は“口頭注意”のもうワンランク上の対応です。つまり、県警はストーカー規制法に基づき、既に対応を取っていたわけです。さらに、警察は女性の失踪について男性に任意での事情聴取を行い、男性の自宅も確認していたようです」(小川氏)
ただ、最後の一歩である「家宅捜索」に及ぶのに時間を要してしまった。
「ガサ状(捜索差押令状)を取得するには、警察が裁判所に申請し、裁判所が許可を出す必要があります。今回のケースでは、令状を取得するための根拠が不足していたため、家の中に踏み込むことができなかったのでしょう。結果として、約4ヶ月が経過してから遺体が発見される事態になってしまったのです」(同)
昨年12月、家族が心配して彩咲陽さんに連絡を取ったところ、当日のうちに「友達の家にいる」という返事があったことも分かっている。何者かが彩咲陽さんのスマホを操作した可能性もぬぐえないが、こうした状況も警察の捜査が及ばなかった理由なのかもしれない。
小川氏は、神奈川県警が取るべきだった行動として、次のように語る。
「被害者の女性は12月9日から12月20日までの間に、警察に対して9回も相談の電話をしていたそうです。そして、20日を境に突然女性が消息を絶ってしまった。このような状況で、真っ先に疑われるべきはストーカー行為をしていた男性でしょう。であれば、事情聴取の際にもっと厳しく追及したり、内偵や行動確認をもっと徹底的に行ったりするべきだったのではないか。事件が起きている可能性が高いという前提に立って、警察側がより踏み込んで動いていれば、展開が違っていた可能性は否定できません」(小川氏)
結果的に家宅捜索の決定打になったのは、交際相手の男性の“海外逃亡”だった可能性が高い。
「男性が今年4月、海外に高飛びしてしまったことで、事態が複雑化しました。男性を引き続き任意で事情聴取することができなくなり、県警が家宅捜索令状を取得し捜索したところ、遺体が発見されたのです」(同)
男性の逃亡先について、具体的な居場所は明らかになっていない。県警は死体遺棄事件として捜査を開始、遺体の身元確認と元交際相手の所在確認を急いでいるが、国際手配をかけるのか、どのような形で犯人を追跡するのか、捜査の難航も予想されている。
デイリー新潮編集部