母に置いていかれた少年は「ご飯が家になくて、力が出ない」「お母さんが家に帰ってこない」と嘆いたことも…。愛人との逢瀬にうつつを抜かす母親に育児放棄された小学3年生の男の子。その後、彼はどうなったのか? そして、母にくだされた罰とは? 2024年に起きた事件の顛末を、前後編に分けてお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/後編を読む)
【閲覧注意】愛人と不倫するために「2週間も育児放棄」していた25歳シングルマザー
写真はイメージ getty
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「ヤバイ、どうしよう…」
秋葉加奈(当時25)は中学を卒業する直前、妊娠に気付いた。すでに高校受験を終え、進学先も決まっていた。どうにもならないまま、高校に進学した。
高1の冬、加奈は男の子を出産した。これがのちに事件の被害者となるカズヤくんだった。
加奈は高校を中退することになり、実家で実母にサポートしてもらいながら、会社員として働くことになった。
シングルマザーとしての生活は困窮を極めた。誰か寄り添ってくれる人が欲しい。それから6年後、夫となるヒロユキと知り合った。
ヒロユキは加奈が抱える事情をすべて理解した上で、プロポーズしてくれた。
加奈が23歳、カズヤくんが小1のとき、ヒロユキと結婚した。2人はそれを機に実家を出て、遠く離れた地域のアパートで暮らし始めた。
加奈も別の会社に転職し、カズヤくんも小2から別の小学校に通うようになった。
この頃の加奈は決してネグレクト(育児放棄)だったわけではない。カズヤくんは学童保育に預けられていたが、加奈は新しくできたパートナーとともに明るい家庭を築こうと努力していた。
ところが、また新たに加奈が転職し、そこで上司の与田慎太郎と出会ったことから、すべての転落が始まった。
最初は上司と部下の関係だったが、いつしか互いに引き寄せられるようになり、ついに事件の半年前であるGWには肉体関係を持ってしまった。
カズヤくんが学童保育に通っていたのは1年間だけで、小3からは下校すると自宅に帰るようになったが、加奈は反比例して帰宅が遅くなった。
かと言って、ヒロユキに育児を押し付けていたわけではないが、与田と男女の仲になってからは、急に家族という形態がうっとうしく感じるようになり、いきなりヒロユキに離婚を切り出した。
「お前、何を言っているんだ!」
「もうあなたに対する愛情が冷めたの」
「オレだって急に出て行くわけにはいかない。それは分かるだろう」
「それなら今後は私のやることに邪魔しないでね」
それから加奈は何度も無断外泊を繰り返すようになった。カズヤくんの面倒も見ないようになった。
カズヤくんは学校を休みがちになり、他の児童が半袖に衣替えをしていく中、夏が近づいても長袖のままだった。
7月にヒロユキと離婚が成立すると、加奈は勤務をフルタイムに切り替え、「これからは家賃7万7000円もママが払っていかなければならない。いい子でお留守番しててね」と言って、与田と逢瀬を繰り返し、週に2日は泊まっていくようになった。
与田は加奈に子どもがいることは知っていたが、「息子は親族らが面倒を見ている」という言葉を信じて、加奈とセックス三昧していた。与田のアパートは2人の愛の巣になっていた。
学校では、カズヤくんが「ご飯が家になくて、力が出ない」「お母さんが家に帰ってこない」と訴え、担任はカズヤくんの髪がベットリしていることから風呂にも入っていないんじゃないかと思い、首の周りに垢がたまって黒ずんでいることから、ネグレクトを疑った。
そこで家庭訪問して事情を聴こうとしたが、母親である加奈には一度も会えなかった。学校側としても何らかの対策を考えなければならないと思っていたが、まもなく夏休みになった。
加奈はカズヤくんを連れて実家に行き、実母にカズヤくんの面倒を見てほしいと頼んだ。その間はまともな食事が与えられたが、夏休みも終盤になると、「帰るのが不安。1人の時間が怖い。ママと話せる時間が少ない。だけど、ママは仕事を頑張っているんだから、何も言えない。僕なんか生まれてこなければよかった」と言って、頭を掻きむしったり、体を引っかいたり、髪の毛を抜いたりするなど、精神的に不安定な様子を見せるようになった。
実母はこのことを加奈にLINEで報告していたが、それでも加奈は態度を改めなかった。カズヤくんの夏休み中はほとんど与田のアパートに入り浸り、そこから会社に出勤していた。
子どもより男。生き甲斐はセックス。そんな母親なのに、カズヤくんは加奈が責められないように、周囲にSOSを出そうとしなかった。食べるものがなくて困ったときには「冷蔵庫にあった古いものを食べて嘔吐した」と偽り、加奈の実家にカップ麺やレトルト食品を送ってもらったりしていた。
発熱してしんどいときは加奈に体温計の写真を添付して〈熱が出て頭が痛い〉というLINEを送っていたが、加奈がまったく動かないのでガマンした。
カズヤくんが体調不良を訴えようと、学校を休むと言おうと、加奈がカズヤくんを病院などに連れて行ったことは皆無だった。
2学期になると、カズヤくんはほとんど登校しなくなった。なぜなら、加奈が週の半分以上、与田のアパートに入り浸り、帰ってこないからだ。
9月の登校は4日だけ。10月に入ると、1日も登校しなくなった。
カズヤくんは1日1回、家にあるカップ麺などを食べて食いつないでいた。健康状態にいつ異常が起きてもおかしくない状況の中、ついに事件が起こったのだ。
〈《懲役は…》「保護された少年はみそ汁もご飯の食べ方もわからなかった」不倫相手と会うために子供を2週間も育児放棄した“25歳の母親の末路”(2024年の事件)〉へ続く
(諸岡 宏樹/Webオリジナル(外部転載))