〈ストリートピアノ大炎上・現地ルポ〉本当に下手な演奏者ばかりだったのか?現地利用者の回答は…いっぽう店舗関係者には別の理由でクレームも

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大阪市住之江区の商業施設「ATCシーサイドテラス」に置かれたストリートピアノの管理人とするXアカウントが、ピアノ利用者が「つっかえてばかりの演奏」をしてクレームが入っているので練習をするなとポストし、物議をかもしている。SNSで炎上し、管理人は謝罪しピアノの撤去にも言及しているが騒動はなかなか収まらない。集英社オンラインは“現場”に出向き、スタッフや周囲の店舗に話を聞いてみた。
〈画像〉「練習は家でしてください」…大炎上した管理人のポスト
話題のピアノはフードコートの一角を占めるカフェ店が置いている。ピアノの前の張り紙と店のサイトには、演奏時間は土日祝日の午後2時から6時までに限定することと、演奏する際の注意事項が書かれている。そこには、
〈1回の演奏は『おひとり様10分まで』とさせていただきます。
演奏の際は周囲とピアノに配慮した『優しい演奏』をお願いします。
集客目的でのSNS事前告知や活動告知(チラシ配布など)は禁止です。
周囲に対して配慮のない行為、ピアノへの粗暴行為が確認された際は利用をお断りします。
ピアノが損傷した場合は弁償して頂く場合がございます)
などと書かれている。
騒ぎは、ピアノの管理人とするXアカウント「南港ストリートピアノ」の3月22日のポストで始まった。ポストは、「お願いです 練習は家でしてください」と題して始まり、
〈この南港ストリートピアノはフードコートの中にあります。つっかえてばかりの演奏に多くのクレームが入っており、このままだとこのピアノを撤収せざるを得ない状況です。 練習は家でしてください。練習を重ねてつっかえずに弾けるようになってから、ここで発表して頂けたら幸いです。誰かに届いてこそ「音楽」です。手前よがりな演奏は「苦音」です。〉
と表明。告知での言葉は丁寧だが、これを載せたポストにはさらに、
〈『練習は家でしてください』 こんなこと書かなきゃいけないなんて想定外でした。間違うのはしょーがないんです、、生身だから でも、人の練習聞かされる側はたまったもんじゃないんです〉
と、いら立ちった感情が示された。
このポストが投稿されるや否や、Xでは“祭り”状態になった。
〈商業施設のBGMにしたければ自動演奏機能付きのピアノにすればいいのに。 こういう文章を書く人を後方に置いとくのは人選ミス〉
〈金かけずに上手な演奏を聴かせようって魂胆が見え見え〉
〈ストリートピアノは『客』の存在を前提としない。『客』のために置いたつもりならそれはお金払って奏者を呼べとしか言いようがない。断じてこれはストリートピアノではない〉
などと、ピアノの利用者を技量で制限しようとしたり、商業目的で運営しようとしたりしたという批判が目立った。一方で、
〈自由だから何をやってもいいわけではない、と思う あまりにも聴き手を配慮しない行動があったのでは?〉
と、演奏者のふるまいに問題があった可能性を指摘する投稿もあった。
このカフェの関係者によると、ポストの後、店には抗議電話がかかり、営業にも影響が出る事態になった。カフェは2日後の3月24日、店のXアカウントに、
〈こちらのアカウントは店舗のスタッフアルバイトが運営しておりまして、ピアノのSNS運営とはまた別でございます〉と主張しながら、〈当店としても伝えたいことは沢山ありますが現在精査中でもう暫くお待ちください〉とポスト。
さらに〈当店としましても、数々の臆測や例のピアノの呼称においての言葉の齟齬(運営サイドのストリートピアノに対しての認識不足だと私も考えております)や注意喚起における文章に対していち早く世間の皆様との擦り合わせをしてほしいと願うばかりです〉と書き込んだ。
騒ぎは収まらず、今度は25日午後、「南港ストリートピアノ」アカウントが〈掲示文書について、表現が適切でなかったことを深く反省しております。また、このことで皆さまから多くのご批判をいただいており、不愉快な思いをおかけしましたこと、心からお詫び申し上げます〉と謝罪を表明。
さらに、
〈「ストリートピアノ」という呼称の認識を誤っておりましたことも重ねてお詫び申し上げます。現在、ピアノは撤去の方向性で進めております。〉とも明らかにした。
では、そもそも実際の現場では、管理者が主張した「つっかえてばかり」の下手な人が練習にピアノを使い、「苦音」が響いていたのだろうか? 現場で話を聞くと、そうした情景は浮かんでこない。
フードコートをちょくちょく利用し3月23日の日曜日にも来たという50代の女性は「ピアノの演奏ですか? ここはみんな上手な人ばかりで、下手な演奏は聴いたことがないですね。先週もそうでしたよ」と首を傾げた。
ピアノのすぐそばにある雑貨店の女性店員も「下手な人ですか、まあ時々『あれ?』という演奏はあるかもしれませんけど(笑)、逆にめちゃくちゃ上手いかたもおられて、全体でみれば“騒音”とは全然感じませんよ。みなさん、楽しく弾いておられると感じられますよ」と好印象を持っていることを隠さない。
別の店の女性店員も「上手な人の方がはるかに多くて、土日の午後になると演奏が始まるので、このビルではピアノは名物みたいなものですね。ルールの10分を超えて弾き続ける人がいることもない感じです。みなさん、列を作って弾く順番を待っていますから。え、ピアノがなくなっちゃうの? それは寂しいですね」と話す。
問題の最初のポストはなぜ投稿されたのか。カフェの関係者の一人は、「僕はピアノの管理は全然やっていないんで分からないんです」と断りながらも、「ストリートピアノっていう名前がまずかったかな、という気はしますね」と話してくれた。
「ピアノは2、3年くらい前からあったと思います。プロのピアニストの方が演奏する時もあるんですよ。(弾きに来る人の)演奏が上手とか下手とかは、その人によると思うんで、僕もなんとも言えないという状況ですね。
毎回弾きにくる、常連さんみたいな感じで来られる方もおられました。それで、時々(店の)お客さんに『どうにかしてくれへん』みたいなことを言われる時がありました。でも僕らもそれはどうしようもなくて…。そういう時の演奏は下手というより、音が大きいとか、そんな感じ(のクレーム)だったと思うんですけど。
(今回の騒動は)ネットなんで、まあ、起きた時の言い方(最初のポスト)もアレでしたから…。電話がかかってきたりして仕事への影響もありますし、普通に仕事がしたいですね」
関係者の話からは結局、「つっかえてばかりの演奏」が実際にあったのかどうかははっきり分からなかった。ただ、関係者が言うように、店の客からの要求を気にしなければならない場所に、誰もが弾けるとうたうピアノを置いたことが問題の背景にあるようで、ストリートピアノが置かれる意味を考えさせられる騒動となった。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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