“保育革命家”イケメン理事長が運営する保育園で補助金不正受給1億2900万円、過去にはロックバンドでメジャーデビュー 「メディア受けすることへの嗅覚がある」との指摘も

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「見て下さい、これ。あんな不祥事を起こした保育園のものとは思えなくないですか」──那覇市に住む主婦のAさん(42)は呆れまじりの苦笑を浮かべ、手元のスマートフォンを示した。
【写真】「お電話まってます(ハートマーク)」保育士離職でインスタ投稿された求人
スマホの画面に映し出されていたのは、Instagram(インスタグラム)へのある投稿。そこには「#保育士募集中」のハッシュタグとともに派手な雰囲気の写真の数々が載せられていた。
「お電話まってます(ハートマーク)」のメッセージに添えられた、油性マジックで眉毛とほくろを強調するような“メイク”を施した女性2人の写真、チラシを切り抜いたかぶり物とサングラスで仮装した女性がおどける写真。「不審者訓練も本気で不審者やってます」のテキスト付きの写真では、「不審者」の仮装だろうか、サングラスにマスク、毛布をかぶって妖怪漫画「ゲゲゲの鬼太郎」に登場するネズミ男を思わせる出で立ちの人物が被写体になっている。
これらはいずれも、補助金の不正受給を巡る疑惑に揺れる「ライオンの子保育園」の公式アカウントに掲載されたものだ。「募集要項」が添えられており、保育士の採用を募るためのポストとみられるが、同園はいま、楽しげな投稿とは裏腹の深刻な事態に直面している。地元メディアの記者が解説する。
「2月28日、特別監査の発表により、ライオンの子保育園グループの不正が大きく報じられました。グループは県南部の那覇市や浦添市、中部の宜野湾市など県内で認可、認可外の保育園7園を展開ししています。
実はこれらの保育園を運営するホールディングスと社会福祉法人が、長期間にわたって補助金などの公金の不正受給に手を染めていたことが発覚したのです。勤務実態のない職員を虚偽申請する手口で、職員数に応じて配分される市からの補助金を不正に受け取っていました。
県や宜野湾市、浦添市、那覇市がそれぞれ調査を実施。これまでに系列7園のうち5園での不正が発覚し、2019年から2023年の間での不正受給の総額は約1億2900万円に上ることが明らかになっています。保育の現場での不正受給としては、かなり大規模です」
組織ぐるみの不正事案に「すでに水面下で県警が立件に向けた捜査に乗り出している」(前出・地元メディア記者)との情報もある。
園では、公金の不正受給問題を受けて保育士ら職員の離脱が相次いでおり、前出の求人を募るインスタ投稿は、失った人材を補充するためのものだったとみられる。ただ、幼子を抱える保護者の怒りを誘った要因は他にもあるようだ。
「実は、ライオンの子保育園の創業者である末広尚希氏は、県内では“幼児教育や保育のスペシャリスト”としてマスコミにも取り上げられる有名人でもあったのです。幼児教育・保育の分野で活躍する若手経営者として、国や県の会議などに招聘されたこともありました。
一連の不正は末広氏が法人の理事長在任時に行われ、不正行為に関与があったことも自身で認めています。これまでの言動も踏まえ、『立派なことを言いながら、裏でこんな不正をやっていたのか』と怒りを覚える人も少なくなかったようです」(前出・地元メディア記者)
公金不正受給問題を受けて、昨年11月に法人理事長とホールディングス代表の職を退いた末広氏。過去には県内メディアのインタビューにたびたび登場し、保育への熱い思いを語ってもいる。
一連の問題が発覚する直前の2024年1月、地元紙「沖縄タイムス」の「新春トップインタビュー」に登場し、前年に創業12年目を迎えたことについて、〈ライオンの子保育園の創業理念、「一隅をも照らせ ライオンの子」その実践と理論がさらに深められて充実した1年となりました〉と振り返っている。同園は、地域の課題や弱い立場の人を照らす「一灯照隅(いっとうしょうぐう)」という理念を掲げており、保育を通じて家庭や社会の問題へもアプローチする姿勢を見せてきた。
「末広氏が常々口にしていたフレーズが『保育革命』。自ら『幼児教育研究家』を自称する通り、新しい取り組みには積極的でした。『見える保育室』を掲げてSNSを活用した情報発信に取り組んだり、沖縄の伝統舞踊『組踊』を園児が参加する催しに取り入れたりもしていた。園児による創作組踊はメディアにも取り上げられて話題になっていましたね」(地元関係者)
人々の耳目を集める仕掛けを次々と打ち出すプロデュース力には目を見張るものがある。経営者として注目を集める前には、舞台上で自身がスポットライトを浴びる立場にいたこともあるという。
「宮古島出身の末広氏は高校卒業を機に島を離れて上京するのですが、その時組んでいたロックバンド『gulff』のボーカルとしてメジャーデビューを果たしているのです。作詞作曲も担当し、テレビ番組の主題歌に抜擢されたこともあります。県出身のタレント、ガレッジセールのゴリが主演した映画への出演や、声優としての活動もしています。こうした芸能界での経験からもメディア受けすることへの嗅覚が磨かれていったのかもしれません」(同前)
渦中の末広氏は3月、県などが一連の不正での被害額を公表を受け、保護者向けの説明会で「多くの不信感、ご迷惑を掛け、深くおわびを申し上げる」などと謝罪した。ただ、「問題の責任を取るため」として一度退任したホールディングス代表の座に、すでに再任していたことも明らかにしている。
個性的なインスタ投稿に「本当に反省しているのか」と憤りを隠せずにいる保護者の反応を見る限り、批判の声はまだまだ止みそうにない。

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