「みんなに配れ10万円」れいわ山本太郎、首相の商品券配布を揶揄…国民民主と共に30代支持率で自民に勝利「石破おろし開始」

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産経新聞とFNNの調査(2月22、23日実施)では、30代の自民党支持率が11.2%であったのに対し、国民民主は15.9%、れいわ新選組は14.4%だった。
既存政党に対する国民の信頼が低下する中で石破茂首相がいよいよピンチを迎えている。一部野党の協力を得ながら来年度予算案の可決・成立にメドをつける一方で、低調な支持率や目指すべき国家ビジョンを明確に打ち出せない首相の姿勢に自民党内の不満が蓄積。ついに公然と「石破おろし」を唱える議員が現われたのだ。
そんな中で石破茂首相が自民党衆院1期生議員に10万円相当の商品券を配布する問題が明らかになった。これに、勢いにのるれいわ・山本太郎代表は15日に都内で行われたデモ活動で「みんなに配れ」と揶揄し、話題を呼んだ。コメをはじめとする物価高の影響で生活が苦しく練っている国民の声を代弁した。
石破政権はもうもたないか……。経済アナリストの佐藤健太氏は「予算成立が『花道』となり、4月以降に宰相の座から引きずり下ろす動きが加速する可能性はある。ただ、今は誰になっても同じだろう」と見る。近いうちに「首相交代」はあるのかーー。
「参院選は今の体制のままでは全く戦えない。もう一度、自民党総裁選をやって新しいリーダーを選び直さないといけない」。3月12日の自民党参院議員総会で、今夏の参院選京都選挙区に立候補を予定する西田昌司参院議員は高まる党内の不満を代表するように厳しい状況を説明した。
西田氏と言えば、時の権力者に対しても舌鋒鋭く追及することで知られる。石破首相が5度目の挑戦で勝利した昨年の自民党総裁選では、高市早苗元経済安全保障相を応援。「積極財政派で、保守の理念をしっかりと持っている人は高市さん以外にない」との理由から、相反するようなスタンスを続ける石破政権に不満を抱いてきた。その意味では、予算成立のメドがたった段階で“時限爆弾”が起動したとも言える。
西田氏は記者団に「衆院選で大敗し、国民の審判は出ている。党の顔としても責任を果たす資格がない」と語り、参院選前の自民党総裁選実施を要求。次期総裁の有力候補としては「この前の総裁選で党員投票が最も多かった」として高市氏に期待を向けた。自民党の歴史を紐解けば、総裁選の末に宰相として選んだ人物を引きずり下ろす動きは枚挙に暇がない。有名なのは1975年からの三木武夫首相に対する倒閣運動や、2009年に表面化した麻生太郎首相への「麻生おろし」だろう。
もちろん、その時々の背景や建前は様々なのだ。ただ、興味深いのは「麻生おろし」の一端を担ったとされる石破氏が今度は逆の立場に立たされている点にある。当時、麻生内閣の農林水産相だった石破氏は総選挙前に退陣するよう麻生首相に求めたことがある。2021年9月14日のTBS系「new23」に出演した石破氏は、このように事情を明かしている。
「このまま麻生氏でいったら、自民党は(総選挙で議席数が)3分の1になっちゃう、って言われたことがあった」「大臣にひきたててもらって、こんなこと言うのもいけないんだけど、『総理、ここは一度身をお引き下さい』って私、言いに行ったんですよ」。これに対して、麻生氏は「俺が一番つらい時に辞めろとは何だ」と激怒したといい、石破氏は「(相手から見れば)やはり、謀反人みたいに見えるんですよね」と語っている。
加えて、石破氏は史上最長の長期政権を築いた安倍晋三元首相との確執もみられた。2007年の第1次安倍政権時代に自民党は参院選で大敗したが、安倍氏が続投表明した時の言動が発端だ。石破氏は「選挙に負けたのに続投するのは理屈が通らない」と選挙結果の責任を追及し、早期退陣を求めた。まもなく第1次政権は幕を閉じている。石破氏は、NHKが2022年 8月15日に配信した記事で「安倍さんにとっては、最も言われたくないことだったと思うな。だからその時から、感情的には『こいつは許せない』っていうのが、ずっとあったと思うんだよね」と振り返っている。
その石破氏が安倍元首相と直接対決したのが2012年9月の自民党総裁選だ。民主党政権の迷走によって次期総選挙では自民党の政権奪還が確実視され、事実上の宰相選びとなった。5人が争った総裁選は1回目の投票で石破氏は国会議員票34票、地方票166票の計199票を獲得し、地方での人気を背にトップに立った。2位は計141票(議員票54票、地方票 87票)の安倍氏。ただ、どちらも過半数に満たなかったため2人による決選投票(議員票のみ)が実施され、石破氏は最後の最後で逆転負けを喫している。
「1回目の投票はトップだったのに」「地方票は圧倒的に獲得していたのに」という悔しい思いが当時の石破氏には充満していたに違いない。だが、歴史は不思議な形で繰り返す。石破氏が勝利した昨年9月の総裁選は、1回目の投票で高市氏は1位の181票(国会議員票72票、党員・党友票109票)を獲得し、2位の石破氏の154票(議員票46票、党員・党友票10 8票)と差をつけた。
高市氏は地方で人気が高いとされる石破氏を上回り、「女性初の宰相」誕生は間近と思われた。だが、上位2人による決選投票で石破氏は215票(議員票1 89票、都道府県連票26票)を獲得。高市氏は194票(議員票173票、都道府県連票21票)にとどまり、まさかの逆転負けとなった。先に触れた西田氏の発言には、この時の悔しさを感じる。
逆転負けを喫した人物が、今度は逆転勝ちで宰相になる。首相に退陣を迫っていた人物が、今度は早期退陣を迫られる。これは因果応報とでも言うのだろうか。西田氏はタイミングを見ながら「石破おろし」の号砲を鳴らした以上、簡単に振り上げた拳をおろすつもりはないだろう。他の議員たちも次々に政権批判を展開する可能性はある。
実際、昨年の総裁選に出馬した小林鷹之元経済安保相は3月9日の党大会後、記者団に「政策の意思決定が二転三転している」と批判。さらに「どういう国づくりを目指していくのか、どういう骨太の政策を打ち出していくのかが重要だが、(石破首相から)参院選へのメッセージがあったかというとあまり感じられなかった」と苦言を呈した。
また、西田氏が次期総裁の有力候補として名をあげる高市氏も3月11日の「X」(旧Twitter)で、党大会の石破氏による演説に関し「石破総理が目指しておられるという『楽しい日本』への道筋やパンチの効いた政策メッセージは打ち出されませんでした」と投稿している。小林、高市両氏は次期総裁選にも立候補するとみられ、再選を目指す石破氏にとっては強力なライバルたちだ。
ただ、石破氏の周辺は「石破おろしの広がりはない」と平静を装う。その理由は来年度予算の成立後から夏の参院選までに改めて総裁選びをするにはあまりに時間が短く、森山裕幹事長ら執行部に連動する動きが見えない点にある。選挙での公認権という強力な権限が“盾”となり、「引きずり下ろそうにも、下ろしきるほどのエネルギーは今の自民党内にない」(自民党閣僚経験者)というわけだ。
高市氏や西田氏は安倍元首相に近く、石破政権に対する不満の背景には保守的な政策スタンスと距離を置いていることがある。各種選挙での弱体化は保守層の自民離れが影響しているとの見方が旧安倍派議員たちに広がる。ただ、実際に「石破おろし」を成功させるのは容易ではないだろう。
かつての自民党のような派閥の実力者が相次いで退陣を迫れば実現したかもしれないが、もはや派閥は麻生派しか存在しない。その麻生氏は石破首相とは距離を置くものの党最高顧問に就いており、過去に石破氏から早期退陣を迫られた経験があるとはいえ党総裁に反旗を翻すかといえば現実的ではない。3月10日夜には岸田文雄前首相、茂木敏充前幹事長と3人で会食しているが、ひそかに「クーデター画策」ということでもないだろう。
筆者は、西田氏の「筋論」を理解する。たしかに政権選択選挙である昨年の衆院選で石破自民党は大敗し、「国民の審判」は終わった。これは2007年に石破首相自身が「選挙に負けたのに続投するのは理屈が通らない」と指摘したのと同様だ。本来ならば、石破氏は昨年の総選挙後すみやかに辞任すべきだっただろう。だが、「真摯に受けとめなければならない」「謙虚に耳を傾けなければいけない」などと評論家のように語るだけで、組織のトップとして責任を全く取らなかった。そして、年末の予算案編成や税制改正などをズルズルとこなしてきてしまったのだ。
ただ、これは石破氏というよりも、自民党議員たちの責任が大きいだろう。「引きずり下ろす」ならば、昨年の総選挙後すぐに動かなければならなかったからだ。それを今になって今夏の参院選に不利だからと退陣を求めるのは不可解と言える。もちろん、与党議員であっても政権や首相の政策・主張に異論は唱えていくべきだ。しかし、選挙に有利・不利という判断でトップを簡単に代えてしまえば一体、議院内閣制とは何なのかわからなくなる。
率直に言えば、石破首相に早期退陣を求めるならば「その後」の道筋についても語ってもらわなければならない。なぜならば、政権与党は衆院で少数であり、誰が次の総理・党総裁になろうが状況は変わらない。そして、夏の参院選で仮に自民党が大勝したとしても少数与党である現実に変化はないからだ。
石破首相が退陣し、自民党総裁選が実施されたとしよう。有力候補である高市氏あるいは小林氏が勝利し、次の宰相に就いたとする。夏の参院選は「ハネムーン期間」ということもあって人気を得るかもしれない。だが、衆院は相変わらず自民党と公明党の与党だけでは法案を成立することができない。高市氏ならば一変できる、小林氏でなければダメな理由はまだまだ弱いと言える。
もちろん、来年度予算が成立した4月以降に自民党総裁選を実施し、選ばれた新総裁・新首相が衆院解散・総選挙を断行する手はある。夏の参院選とのダブル選も選択肢に入るだろう。ただ、それは「勝てば天国、負ければ地獄」という下野を賭けたイチかバチかの選挙となる。それだけの覚悟を自民党の議員たちは本当に持っているのだろうか。
結論を言えば、次の党総裁に誰が就いても状況に変わりがなく、衆参ダブル選以外に活路を見いだす方法はないと見える。だが、ダブル選うんぬんの前に衆院で多数となっている野党がひとまず誰か統一候補を選び、首班指名選挙に臨んだ場合はどうだろうか。その時点で政権を失い、参院選を迎える可能性もゼロではない。
通常国会の会期中に野党が内閣不信任決議案を提出し、可決されることがあれば石破内閣は総辞職か、解散・総選挙を断行するかを迫られる。今夏の参院選前に野党は攻勢を強めることが予想されており、自民党という「コップ」の中で争っている場合ではなくなるだろう。もはや、石破首相の次に「高市氏」か「小林氏」がなるというよりは、立憲民主党の野田佳彦代表や国民民主党の玉木雄一郎代表の方がオッズは低いのではないか。
原因があって、結果が生じるということを考えれば、自民党の窮状は国民とのディスコミュニケーションの積み重ねが招いた結果だ。歯に衣着せぬ言動から「与党内野党」といわれ、国民的人気が高いとされてきた石破氏だったが、内閣支持率の低調さを見ると人々はすでに離れているように映る。はたして、政権与党に起死回生の策は残っているのだろうか。

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