《埼玉スタジアム・退場トラブル》FCクルド監督が独白「記念撮影の許可を得て旗を掲げた」「決して試合を妨害しようとしたわけじゃない」…クルド人サッカーチームの主張を全部聞いてみた

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埼玉スタジアムの客席で、クルド人の集団が無許可で自分たちのチームの「旗」を掲げようとして退場トラブルに――。今月2日に世間を騒がせたのは、埼玉県南部に集住する在日クルド人が多く在籍するサッカーチーム「FCクルド」だ。
同スタジアムで行われた、浦和レッズ対柏レイソルの試合前にトラブルが発生。その後、Xでこの件が拡散されると、たちまち炎上騒ぎとなった。この日、約5万人の観衆が沸いた埼玉スタジアムの一角でなにが起きていたのか。双方の関係者に取材し、トラブルの全貌に迫った。
「僕はFCクルドの子どもたちと、我々クルド人が住む埼玉県の代表チームである浦和レッズを応援するために、埼玉スタジアムに行ったんだ。しかし今回こんなことになってしまって、申し訳なく思っています。浦和レッズのサポーターと喧嘩するつもりもないし、仲良くしたい。そして今後も、浦和レッズを応援したいという思いは変わりません」
そう静かに語るのは、埼玉県内で活動する「FCクルド」を率いるメティン監督(51歳)だ。今月2日、埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ対柏レイソルの観戦に訪れた同チームは、浦和レッズのサポーターが大勢詰めかける座席で「FCクルド」と書かれた旗を掲げようとして退場トラブルに発展した。
浦和レッズの公式サイトに掲載されている「試合観戦ルール」では、ホーム・アウェイを問わず、すべての試合において事前申請が完了していない横断幕や旗などの掲出は禁止されている。浦和レッズ関係者によると、FCクルド側から旗の掲出に関する事前申請はなかったという。
そこでFCクルドがスタジアムに入場した際に、スタッフが旗を掲出できない旨を伝えたところ、同チームは承諾。しかしその後、浦和レッズのサポーターが大勢詰めかける北サイドスタンド周辺で旗をもう一度広げたため、別のスタッフが注意したところトラブルに発展したという。
いったいなぜ、事前申請なく旗を掲げたのか。その理由を尋ねると、同チームを率いるメティン監督は、「ルールを知らなかった。申し訳ありません」と経緯を語りだした。
「僕自身も来日してまだ1年経っておらず、Jリーグを観戦するのは今回が初めてでした。チームの子どもたちも一度もJリーグを観戦したことがなかったため、FCクルドの中に、誰一人としてルールを知っている者がいませんでした。
また僕自身、これまで世界中のスタジアムでトルコにあるサッカーチーム『アメドスポル』の旗を掲げてきましたが、それに対してなにか言われることはなく、拍手を送ってくれました。そうした経験から、対戦チーム以外の旗を掲げることがルール違反だとは知らず、むしろ喜ばれる行為だと思っていました」(メティン監督、以下「」も)
FCクルドは昨年12月に発足したばかり。埼玉県南部に住む在日クルド人の小学生40人、中高生25人が所属し、県内にある公園でほぼ毎日練習を行なっている。
この日は、プロサッカー選手によるレベルの高いプレーを子どもたちに見せてあげて、お手本にしてもらいたいという思いからメティン監督自らがチケットを手配。FCクルドのメンバーのみならず、その家族を含めた総勢58人で埼玉スタジアムを訪れたというが、そもそもなぜ「旗」を掲げようと思ったのか。
「我々クルド人は、長年にわたって迫害や差別を受けています。トルコ国内にも、クルド文化に根ざした『アメドスポル』というサッカーチームがありますが、その活躍は国内でもほとんど報じられず、存在自体が蔑ろにされているのです。
ただ、それはアメドスポルに限らず、世界中のクルド人たちが同じ思いを持っています。だから我々は、FCクルドというチームの存在を少しでも知ってもらうために、そして日本にいるクルド人に、浦和レッズを応援してもらうために埼玉スタジアムで旗を掲げようと思いました」
こうして迎えた当日、メティン監督は自身の軽自動車に「FCクルド」と書かれた横幅およそ2メートルの「旗」を積み込み、埼玉スタジアムに向かった。
先に入場するメンバーに旗を手渡し、電話を繋いで「FCクルドの旗を掲げてみんなに見せてくれ」と頼んだところで、予期せぬ事態が発生。スタジアムのスタッフに「ここで旗を掲げるには、事前に許可を取らないとダメですよ」と注意されたため、指示に従い、その場で丸めて片付けたという。
ところが、諦めきれないFCクルドのメンバーが、スタジアムに入場した際に、スタッフに「旗の掲出」に関して懇願したところ、「記念撮影くらいならいいですよ」と許可を得たという。そこで浦和レッズのサポーターが大勢詰めかける北サイドスタンド周辺に着席後、「FCクルド」と書かれた旗を掲げたところでトラブルが起きた。
「事情を知らないスタッフが4、5人ほど駆け寄ってきて『事前に申請していない旗はダメですよ』と注意してきました。だから僕たちも『これは記念撮影のために掲げただけです』と説明したのですが、周りのサポーターも『こいつら何か悪いことをしにきたんじゃないか』と勘違いしたのでしょう。
浦和レッズのユニフォームを着た3、4人ほどのサポーターが、こちらに向けて『お前らなにやってんだ!』『帰れ帰れ!』と叫んできた。中にはスタッフに『こいつら追い出せよ!』と叫ぶ人もいたので、そうした険悪な雰囲気を恐れたFCクルドの子どもたちも泣き出してしまい、トラブルに発展してしまいました」
後編記事『【浦和レッズ広報の見解を全部聞いてみた】《埼玉スタジアム・クルド人サッカーチーム退場トラブル》「スタジアムの中で旗を広げていたことは事実」「通常の観戦ルールをお願いしただけで…」』では、引き続きFCクルド側の主張に耳を傾けるとともに、浦和レッズの広報担当者にも話を聞いた。
(つづきを読む)【浦和レッズ広報の見解を全部聞いてみた】《埼玉スタジアム・クルド人サッカーチーム退場トラブル》「スタジアムの中で旗を広げていたことは事実」「通常の観戦ルールをお願いしただけで…」

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