年間1300杯完食!?管理栄養士も驚愕…『直系二郎大好きマン』の健康もラーメンも諦めない人生

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ラーメン二郎を年間1300杯以上–。しかも、500日以上も毎日最低2杯、時には13杯も平らげる男がいる。その名も「直系二郎大好きマン」。X(旧Twitter)で日々、二郎愛あふれる食レポを発信し、ラーメンフリークの間では知らぬ者はいない存在だ。
しかし、彼の食生活は、もはや常識の埒外。平日は1日3~4杯が当たり前、仕事が終わり、スーツ姿で二郎のカウンターに。そして休日ともなれば、6杯の“スペシャルコース”を満喫することもあるという。驚くべきは、その異次元の食生活を送りながらも、彼が健康を維持し続けていることだ。一体どうやって? 取材を申し込むと、その驚きの生活実態が明らかになった。
「ラーメン二郎を最初に食べたのは’12年、親友に連れられて行った新宿小滝橋通り店でした。でも、正直なところ、初トライではそこまでハマったわけじゃなかったんです(笑)。ただ、店の雰囲気や独特の文化には惹かれましたね」(直系二郎大好きマン氏・以下同)
初めて体験したラーメン二郎。直系二郎大好きマン氏にとって、決して“衝撃の美味さ”ではなかったという。確かに、二郎を前にすると誰もがその量に圧倒される。ニンニクの香り、独特のこってりスープ、ゴワゴワした食感の太麺……。しかし、食べ進めるうちにクセになる!
直系二郎大好きマン氏も、リピートするうちに“二郎の魅力”にハマる。決定的だったのは、目黒店との出会いだった。
「目黒店で食べた瞬間、『あれ? こんなに違うの?』って衝撃を受けました。スープの濃厚さ、麺の弾力、豚のうまみ–初体験の新宿小滝橋通り店とはまったく違う個性を持っていたんです。
目黒店はカエシ(醤油ダレ)がガツンと効いていて、豚のアブラの旨みがダイレクトに伝わってくる。そんな“店ごとの個性”を知ったことで、『二郎は一杯じゃ語れない』と確信しました」
淡々と語る彼の姿からは、毎日ラーメンを食べ続けている不摂生さは感じられない。肌艶もよく、無駄な脂肪もない。食べることを研究し、最適なコンディションを維持することまで含めて「ジロリアンとしての矜持」なのだろう。
ここで解説しよう。ラーメン二郎は三田本店が発祥となる。1968年に創業し、本店で修行した従業員が暖簾分けするかたちで全国に広がった。それが『直系店』だ。
近年、“二郎系ラーメン”というジャンルが広がっているが、直系店は三田本店の流れをくむ店舗のみを指し、明確に区別される。現在、直系店は都内に23店。北海道や宮城、新潟、京都などにも店舗があり、全国で44店舗がある。
さて、こうして二郎に魅せられし男–直系二郎大好きマン氏は、大学進学と同時に全国の直系二郎巡りを本格化させていくことになる。
「店ごとにスープの濃さや麺の太さ、豚の柔らかさが違う。その違いを知れば知るほど、もっと食べ比べたくなるんです。そこで、大学進学を機に『全国の直系店、すべて巡る!』と決意。二郎の巡礼が始まりました」
全国の店舗を1年足らずでオールクリア。気づけば、二郎を食べることが日常の一部になっていた。最初は週に数回だったのが、次第に毎日通うようになり、やがてルーティンに。
そして今、彼の二郎ライフは驚異的なレベルに達している。基本は1日3杯。仕事終わりには、まず上野毛店で1杯。スーツ姿のままカウンターに腰かけ、丼を前にするや否や、脇目も振らずに箸を進める。続いて目黒店へ移動。味の違いを確かめるように慎重にスープを啜り、麺の茹で加減を確認する。
最後は歌舞伎町店――深夜2時半まで営業している、夜二郎の聖地だ。『今日の二郎も完璧だった』とつぶやく彼の顔には、一日の締めくくりに相応しい満足感が漂っている。
「日曜は一橋学園で1杯、そのまま藤沢へ移動し、2杯同時食い。関内でさらに2杯、最後は目黒で締める–これで計6杯。これが僕の“典型的な休日”です。
二郎の味は常に変化し、進化している。調理を手がけるスタッフによってもスープの濃さや麺の茹で加減、豚の仕上がりが微妙に変わりますし。だから、1ヵ月も空けると“いまの二郎”を逃してしまう。間を置かずに全店舗を満遍なく巡り、二郎の進化と深化を見届けています」
彼にとってラーメン二郎は、単なる食事ではなく“ライフワーク”だ。全店舗の味の変化を把握し、細かな違いを楽しむ–そこに彼の二郎愛が詰まっている。しかし、これほどまでに二郎を食べ続ける生活で、健康面に問題はないのか?
「ラーメン二郎=高カロリー・高脂質」のイメージは強いが、実際の栄養価はどうなのか? ここでは、管理栄養士の浅野まみこさんに、ラーメン二郎のカロリーと栄養バランスを分析してもらった。
「一般的なラーメンは550キロカロリー程度、こってり系の豚骨ラーメンでも800キロカロリー前後です。しかし、ラーメン二郎の場合、300gの麺、豚(二郎用語でチャーシュー)、モヤシ、背脂80gだけですでに1400キロカロリー以上と試算できます。
ここにスープやラードが加わると、1杯で2000キロカロリーを超えることも考えられます。これは成人男性の1日分の摂取カロリー(30代男性(30~49歳)推定エネルギー必要量2350~3150kcal/日*)に匹敵するほどのボリュームです」*日本人の食事摂取基準2025(厚生労働省)
カロリー満タンのラーメンの全貌が見えてきた。二郎は炭水化物と脂質の割合が非常に高い。ただ、ラーメン二郎といえば、大量のモヤシとキャベツを追加する「ヤサイダブル」もオーダーできる。これによって、栄養バランスを改善できるのだろうか?
「確かに、モヤシやキャベツにはカリウムや食物繊維が含まれています。しかし、これらは『淡色野菜』なので、生活習慣病予防に必須の緑黄色野菜が含まれません」と浅野さんは指摘する。
「緑黄色野菜(ニンジンホウレンソウなど)に豊富な抗酸化ビタミン、いわゆるビタミンA(ベータカロテン)・C・Eはほぼ含まれず、体内の酸化を修復するための栄養素が不足しやすい、と言えます。また、糖質や脂質の代謝に必要なビタミンB群、塩分を排泄しむくみを予防するためのカリウム、味覚調整に必要な亜鉛も意識したいところです」
ヤサイを増やしても、栄養バランスの偏りは解消されにくい。圧倒的なカロリーと塩分を含む一方で、ビタミンやミネラルは不足しやすいのだ。では、直系二郎大好きマン氏はどのように健康を維持しているのだろうか?
驚異的なペースでラーメン二郎を食べ続ける直系二郎大好きマン氏。高カロリー・高塩分の食生活にもかかわらず、彼は己のルールを徹底することで体調管理を行っている。まず、「体重がレッドゾーンに入ったら、一旦リセットする」–これが彼の基本ルールだ。
「こまめに体重を測り『この体重で二郎を食べるのは危険だ』と感じたら、昼や夕方まで食事を控えます。このシンプルなルールが、食べすぎによる健康リスクを防ぐ鍵になっています」(直系二郎大好きマン氏)
彼は、ラーメン二郎を食べた翌朝、体重が一定の基準を超えていた場合、10~16時間のプチ断食を実施する。ラーメン二郎を食べた夜から、翌日の夕方まで何も食べずに過ごすのだ。浅野さんに、直系二郎大好きマン氏のメソッドを栄養士の観点から分析していただいた。
「体重をこまめにチェックする習慣は、自制心を高める点で非常に良い方法です。日々の意識が食べる量の調整につながり、無意識のうちに体重増加を防ぐ効果も期待できます。
10~16時間の食事間隔を空ける方法は、『オートファジーダイエット(8時間ダイエット)』という方法論と通ずるものがあります。食事は1日のうち8時間の中に収め、それ以外の時間は断食することで、エネルギー消費を促すという考え方です」(浅野さん)
オートファジーダイエットは単発では逆に血糖値の急上昇を招くが、数日間以上の持続で効果が期待できるという。直系二郎大好きマン氏のアプローチは習慣化に成功している点で評価できるのだ。万人に適した方法とは言えないが、彼はこのルールを徹底し、体重を正常範囲内にキープ。毎年の健康診断でも「異常なし」の所見を得ているという。
「また、いきなり二郎を食べると、すべての栄養を吸収してしまいそうな気がするので……事前に軽い食事を取るのもルールのひとつです」(直系二郎大好きマン氏)
二郎の前には豆乳やチキンを摂取し、体を整えてから挑む。浅野さんも、この方法には理論的根拠があると指摘する。
「豆乳に含まれる大豆タンパク質は血糖値の上昇を緩やかにする作用があり、食事前に摂取することで糖質の吸収を抑えることが期待されます。これは『セカンドミール効果』と呼ばれ、脂肪の蓄積を防ぐ食事法です」(浅野さん)
さらに、氏の二郎食べ歩きライフには、しっかりと運動習慣も組み込まれている。
「普段から歩くのが好きで、1日2万歩以上は歩くのですが、食べ歩きで遠出すると3万歩を超えることもありますね。特に短時間で効率よくカロリーを消費するため、階段を活用しています。
現在のオフィスは高層ビルにあるため、昼休みには『階段を上ってはエレベーターで降り、また階段を上る』という独自の運動も実践しています。
毎日ラーメンを食べるからこそ、運動するし、体重管理も意識するようになりました。むしろ、健康に対する意識は高まったかもしれません」(直系二郎大好きマン氏)
彼の健康管理法は、「好きなものを楽しむために、ルールを決めて実践する」というシンプルなもの。しかし、徹底することで驚異のラーメンライフを継続している。
直系二郎大好きマン氏の食べ歩き生活を深掘りすると、単にラーメンを食べ続けるだけでなく、体調管理や運動習慣を取り入れた、持続可能な“ジロリアン”ライフが見える。ここには、二郎好きならずとも、普通のラーメン好きでも取り入れられるヒントがあるのではないだろうか。
ただし、そもそも、ラーメンは炭水化物・脂質・塩分の比率が高い食事だ。このため、1日の食事全体で栄養バランスを調整することが重要だ。では、ラーメン二郎の場合、どのように栄養バランスを考えればよいのか? そのポイントを浅野さんに聞いた。
「ラーメン二郎のトッピングには、キャベツやモヤシといったカリウムを含む野菜が多く用いられているため、塩分の排出を助ける働きは期待できます。
ただし、脂質や糖質の過剰摂取などで起こる体の酸化や糖化などを修復する抗酸化ビタミンであるA、E、Cや鉄などのミネラルが豊富な緑黄色野菜が不足しがち。そのため、夜にラーメンを食べるなら、朝食や昼食でほうれん草やニンジン、ブロッコリーなどを意識的に摂ることで、栄養の偏りを防ぐことができるでしょう。
ニンニクの活用も有効です。二郎だと、ニンニクを増やす“ニンニクダブル”というオーダーですね。ニンニクはアリシンを多く含んでおり、豚肉に多く含まれるビタミンB1の吸収を助ける働きがあります。また、疲労回復効果、免疫機能調整、血行促進なども期待できるため、追加しても良いと思います」
しかし、栄養バランスと並んで見逃せないのは、ラーメンが持つ「リピート誘発力」だ。
「二郎などのラーメンのもう一つの特徴は、一度食べるとクセになる魅力があることです。大量の麺は血糖値の乱高下を起こし、長蛇の列に並んで食べるスペシャル感などもあり、食べるたびに『また食べたい』『次はもっと!』という気持ちが芽生えやすい。
管理栄養士としては、二郎を『日常の習慣』ではなく、自分へのごぼうびに『特別なごはん』として楽しめるか? いかに自分を律することができるか、という視点で考えたいですね」(浅野さん)
「ラーメンが好きだからこそ、健康を意識するようになりました。長く食べ続けていきたいんです。直系のラーメン二郎を!」と、直系二郎大好きマン氏の言葉には力がこもる。
「今からなら、2軒行けますね……もちろん二郎です」。そう言い残し、彼はビジネスバッグを下げて雑踏へと消えていく。仕事と二郎を両立させる生活は、彼にとって当たり前のこと。年間1300杯の二郎を支えるのは、ワークライフバランスならぬ、“ワークジロリアンバランス”なのだ。
好きなものを長く楽しみ続けるために、健康を意識しながら付き合っていくことは、決して矛盾しない。ラーメン二郎を楽しみながら、体調管理にも気を配り、自制心を養っていく。そのバランスを見つけることこそが、「持続可能なジロリアンライフ」、そして「ラーメンライフ」の秘訣なのかもしれない。
▼直系二郎大好きマン ラーメンフリークの間では知らぬ者はいない存在。毎日が二郎――’24年には1301杯を食破し、’25年も2月中旬で166杯を突破。直系二郎の44店舗すべてを33回以上巡り、585日連続で丼を前にする。1日最高13杯、週37杯、月124杯――誰よりも二郎を愛する男。「直系二郎大好きマン」という名の通り、一杯の二郎にすべてを懸ける。
▼浅野まみこ 管理栄養士。株式会社エビータ・代表取締役。総合病院、女性クリニック、企業カウンセリングにて糖尿病の行動変容理論をベースに1万8千人以上の栄養相談を実施。その経験を生かし、食育活動やレシピ開発、食のコンサルティングをはじめ講演、イベントなど多方面で活躍中。
取材・文:佐々木正孝

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