日本のほとんどのタワマンがいずれ中国人所有になる…相続税がなく膨張する中国人マネーが“占領”「日本人は一生賃貸」の地獄絵図

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過去最高であったコロナ禍前の2019年を超えた昨年の訪日客数。年々、増加するインバウンドだが、それによりマンションをはじめとする不動産価格も上がり続けている。なぜ外国人のあいだで日本の不動産の関心が高まっているのか、またその問題点はいったい何なのか。
【画像】所有者には中国人投資家も、3割は居住実態が確認できない日本のマンション群
「そう遠くない将来、都心部のタワマンのほとんどは、中国人のものになるかもしれない」
こう語るのは、ある外国人富裕層に詳しい税理士だ。
2024年、東京23区で売り出された新築マンションの平均価格は1億1000万円オーバーだった。2年連続の1億円超えで、「今のところ、好立地では値段が下がる要素は全くない」(不動産関係者)という。
この需要を支えているのが、円安を背景とした旺盛な外国人の投資にあることも間違いない。例えば、東京・中央区にある晴海フラッグの3割は居住実態が確認できず、その多くが中国人投資家の所有と言われる。
中国事情に詳しいジャーナリストの北上行夫氏が言う。
「中国人の不動産所有の6割は在日中国人と言われますが、残りの4割は中国本土や香港の投資家です。彼らはもちろん投資目的もありますが、最大の目的は資産保全です。とにかく海外に安全な資産を置いておきたい。日本は距離的に近く、賃料の利回りも中国本土よりよく、うってつけなのです」
しかし、日本の不動産を外国人が次々と所有していく理由はほかにもある。それが、外国の相続税や贈与税の問題だ。
実は相続税やそれに類する贈与税がない国がある。代表的なところでは、中国やインド、マレーシア、シンガポールやオーストラリアだ。アメリカは相続税があるが、基礎控除が15億円以上と事実上、ないに等しい。
言うまでもなく、相続税のない国の富裕層は世代を超えても資産は減らず、むしろ複利効果で増えていく。
その結果、日本の不動産市場に内外無差別で海外富裕層を受け入れてしまうと、3代で資産がほぼ無くなるほど高い相続税により、資産売却を迫られる日本人では勝負にならず、いずれは資産性の高い不動産は、特に海外資産を持ちたい中国人や相続税のない国に住む華僑を中心勢力とした海外富裕層の手に渡ってしまうというわけだ。
「もっとも、外国籍でも日本居住者であれば相続税は発生しますし、非居住者であっても日本国内にある不動産に相続が発生した場合は、その不動産のみを課税対象として相続税納税の義務があります。
ただ、海外法人名義の所有であった場合は、相続税は事実上、課税できません。個人名義であっても、非居住者の外国人が高齢になった段階で売却すればいい。
当然ですが、海外投資家は亡くなったタイミングで日本の不動産を所有していなければ、日本に相続税の納税義務はありません。相続税納税のため、不動産売却を迫られる日本人とは圧倒的に条件が違うのです。
相続税がない国は贈与税もないので、そのような国に住む海外投資家は、親が高齢になった段階で日本のタワマンを売って、その売却額を譲り受けた子が別の日本のタワマンを買うことができます。
このケースの場合、購入したタワマンが贈与税の課税対象になる可能性がありますが、海外在住の外国人に子のタワマンの購入代金が親のタワマン売却代金を充てた贈与であることの因果関係を国税が立証するのは難しい」(前出の税理士)
しかも、問題は相続税だけではない。
相続税・贈与税がない国では不動産売却で売却益が出た場合の譲渡所得税の回避スキームも存在するという。
この点も一度、相続税がない国の外国人の手に不動産が渡ったら日本側には戻ってこない理由と言えそうだ。
前出の北上氏が解説する。
「例えば、母国で贈与税がかからない在日中国人が不動産を売却しようとするとします。仮に1億円で買ったタワマンが3年で1億5000万円に値上がりした後に売ろうとした場合どうするか。税務署から贈与と判断されないぎりぎりの値段、例えば買った値段の1億円で資産を渡したい相手と売買契約を結びます。
そして差額の5000万円分を中国国内の人民元で“決済”すれば、本来日本で発生するはずの2000万円(5年以内の売却は約40%)の不動産譲渡所得税の納税義務が回避できるのです。
もちろんグレーですが、これは日本の税務当局は追えないでしょう。実際、在日中国人は売却益が出そうな場合に日本人に売ってしまうと納税義務が発生するので、中国国内にある程度の資産を持つ中国人の買い手を見つけて売ろうとするそうです。
日本人に売って税金を払うことを考えれば、中国人なら多少安く売っても、売り手、買い手ともにウィンウィンですから」
このように、今後、日本の好立地や投資用の不動産は中国人をはじめとした、外国人の手に渡ってしまい、日本人はそこに賃貸で住むことになるかもしれない。となれば、その家賃も海外に渡り、資本流出となってしまう。これではインバウンドで景気回復どころではない。
元財務官僚で元国会議員の桜内文城氏が言う。
「そもそも、非居住者の外国人に日本の不動産が日本人と同価格で買われている時点で、政治の怠慢だと思います。
例えばシンガポールでは、永住権のない外国人が住宅を購入する際の加算印紙税(ABSD)税率30%から60%への引き上げを23年に実施しています。課税逃れを防ぐため、法人や信託を利用する場合の税率も35%から65%にしています。
また、外国人の不動産取得に国際法上の相互主義を適用することも重要でしょう。中国のように、外国人による土地や建物の入手が禁止されている国の人に、日本の土地や建物を自由に購入することを認めるべきではありません。
すでに購入されてしまった不動産は、現金ではなく、国が交付国債で買い上げることで、適切に徴税していくという考えもあります。
日本では不動産取得にあたって外国人に追加で税金をかけることはありませんが、国益に直結する土地や不動産の管理は徹底するべきです。
また、居住目的のタワマンには法人登記を許さないというルールを開発認可時に設けてもよいでしょう。いずれにせよ、日本国民が不利益を被るような現状が放置されるべきではありません」
政府が無策のせいで、すでに日本人は自国にもかかわらず立地のいい不動産を買えなくなっている。拍車をかけているのは、もちろんインバウンド政策だ。
不動産関係者が言う。
「都心部でのマンション価格高騰の背景には、候補用地の高騰も大きな要因のうちの一つです。マンションに適したそれなりの広さの駅前好立地は、ホテル用地の需要と大きくかぶります。
もちろんホテルにしたほうが収益率が高いので、マンション事業者は買い負けて供給が減少し、結果、価格が高騰してしまいます。
また、都市部の賃貸マンションも、外国人が一棟買い上げて民泊にしようとするため、賃料を大幅に引き上げて住民を追い出すような事例も報じられています。国民の住宅環境がインバウンド政策に脅かされているとも言えます」
この一番の問題としては、前出の桜内氏が指摘するように政治や行政がこうしたインバウンド政策の負の面を問題視するどころか、むしろお構いなしに推進しているところだろう。
この背景の一つに挙げられるのが、政治・行政と業界との強い結びつきだ。
旅行業界で言えば、「GoToトラベルキャンペーン」事業を含む補正予算が閣議決定された2020年には、観光関連14団体から自民党元幹事長だった二階俊博氏はじめ、自民党議員37名に約4200万円献金されたことが「週刊文春」で報じられている。
安倍政権時代からインバウンド政策を主導した菅義偉氏も、首相時代、二階氏を幹事長に起用するなど近しい。
その二階氏が会長を務める「全国旅行業協会」の専務理事は国交省OBで、同会規定によると、月額報酬は92万円で期末特別手当も付く。もう一つの大手業界団体である「日本旅行業協会」理事長も国交省OBで、こちらの月額報酬は115万円。同様に期末手当もある。
これらの団体の運営は加盟する旅行会社からの多額の会費収入で賄われており、業界が国交省OBや政治家を通じて政策に影響を与えられると言われても仕方のない構図だ。
日本人がどんどん貧しい思いをしても、政治は企業の味方なのか。そんな日本の政治の姿勢が利用され、日本の不動産はどんどん外国人のものになっていくことになる。
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取材・文/九戸山昌信

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