“夕食難民”大量発生で「予約していないとご飯が食べられない」 越後湯沢でいま起きている異常事態 「インバウンドの影響も大きい」

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新潟県、JR越後湯沢駅に近い住宅街。小雪が舞う中、玄関前の雪かきをしていた民宿の主は、ふと手を止めて屋根に分厚く降り積もった雪を見上げた。
「いつもの雪は降ってやんで、降ってやんでの繰り返しだけど、今年は降って、降って、降って……やまないから手に負えないよ。まあ、少ないよりはマシで、おかげで宿の予約もずっと満室でありがたいんだけどね」
記録的な大雪となった3連休、その中日の2月23日は書き入れ時で、スノーリゾートの街は客であふれ返っていた。が、ここ越後湯沢に限って言えば、そのあふれ方が尋常ならざることになっているようで……。
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【実際の写真】“スノーリゾートらしからぬ店”に大行列が… 観光客がごった返す「越後湯沢」の今
23日は大雪で新幹線以外の在来線は終日運休だった。そのためもあって越後湯沢駅の構内は朝からごった返していたが、駅周辺の飲食店が軒を連ねる一角は、まだ多くがシャッターを下ろしたまま。
と、ある居酒屋の店先には、午前中だというのに、こんな貼り紙がしてあった。
〈本日はご予約で満席〉
人気店だろうか――いや、ここだけではない。そこかしこの店先で同様の文言を見ることができるのだ。いくら雪が続いた3連休であったとしても、ちょっと異常ではないか。
だが、辺りが暗くなり始めた頃、その異常さは現実の光景として立ち現れた。
例えばラーメン店。夜の営業が始まる5時前から行列ができると閉店の9時半近くなっても途切れる様子を見せない。聞くと、「1時間くらい並んでいる」という人も。
また、焼肉屋の行列に並ぶ若者はこんなことを言う。
「1カ月前から予約でいっぱい。当日席を求めて並んでいるんです」
いったい何が起こっているのか。
「越後湯沢には、50軒ほどの宿泊施設がありますが、約半数が素泊まりです。この辺の民宿経営者の多くは高齢者で、最近は負担軽減のため食事の提供をやめる傾向にあります」(湯沢町観光まちづくり機構)
つまりは宿で食事が出ないため、予約可能な飲食店は早くから埋まり、そうでないところは長蛇の列。人々はこれを「夕食難民」と呼ぶ。が、理由は高齢問題だけではない。
「インバウンドの影響も大きいですね。とくに週末は日本人の予約でいっぱいのところに来るのですから、どうしても民泊やゲストハウスになってしまう。もちろん食事はありません。さらに食事が出せる宿でも、彼らは4泊も5泊もするので、毎日メニューを変えるのは難しく、結果として外での食事かコンビニなどのお弁当になってしまうのです」(地元住民)
実際、駅前商店街にあるスーパーをのぞいてみると、あっという間におにぎりが売れていく。
「今日は100個以上売れましたね」(スーパーの店員)
すっかり日が暮れ、雪がますます強くなる中、足早に駅の方に向かう台湾人の母子が。
「駅のおそば屋さん、7時までなんです。急いでいるんです」
行列も混雑も日本らしい光景ではあるものの、これが地元住民の望む状況かは不明である。
撮影・西村 純
「週刊新潮」2025年3月6日号 掲載

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