【藤井 聡】このままでは参院選で自民大敗は必至、歳入庁創出も…!「財務省前デモ」で高まる「ラスボス」への大不満

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「財務省」を批判するデモ、所謂「財務省前デモ」が連日繰り返され、ネット上での「#財務省解体」というハッシュタグの勢いに後押しされる格好で少しずつ拡大し、遂に地上波TVニュースも無視できなくなってきたようです。(テレビ東京、2月22日「財務省前で1000人規模デモ」、フジテレビ、2月24日「財務省の前で消費税廃止や“解体”求めるデモ」)
youtubu画面より
こうした広がりを受け、普段は政治的な発言をしないネット上の「インフルエンサー」と呼ばれるヒカルさんや青汁王子さんらが、このデモを取り上げ、さらに世間的な関心が拡大してきています。
もちろん、「ひろゆき」や「ホリエモン」達などの、所謂「オールドインフルエンサー」の中には、この財務省前デモに対して冷淡な姿勢をとっている方もおられるようではありますが、インターネットだけでなく、一般のテレビや新聞でも取り上げられるようになった今、財務省の問題について特に何の興味関心も知識も無かった多くの国民の間に、
「えっ?財務省って何か問題あるの!?」
という問題意識が急速に広まりつつあるようです。
これは大変興味深い現象です。
そもそもこの「アンチ財務省」の世論は、今年になって急に現れた、一部の人達だけによる一過性のものでは断じてありません。
例えば昨年9月の自民党総裁選では、最も「積極的な財政出動」を主張した高市早苗氏が一次投票で一位となりました。
それに続いて行われた昨年11月の総選挙でも、最も積極財政を主張した国民民主党が大躍進した一方、財務省の見解をそのまま繰り返す石破政権率いる自民党は、大幅に議席を失いました。
というよりそもそも比例票の動向を見れば、積極財政を主張した「国民民主」「れいわ新選組」「参政党」「日本保守党」の四つの「積極財政政党」は、800万票も伸ばした一方、財務省と同様に「緊縮財政」を主張する「自民党」「公明党」「日本維新の会」「共産党」「立憲民主党」は合計で1000万票も失っているのです。
つまり、積極財政か緊縮財政かによって、トータル5000万票強の比例票のうち、1800万票も動いたわけです!
このことは、昨年から既に、財務省に対する根強い「アンチ」の世論が大きく拡大してきていたことを示しています。
そうした流れがようやくここ最近、具体的な「財務省前デモ」の形になったという次第です。
こういう世論の動きの背景には、1997年の消費増税に端を発する「失われた20年」とも言われる超長期の経済停滞(デフレ不況)が続く中、2020年からのコロナ禍、そして2022年のウクライナ戦争以降の賃上げを伴わないインフレによって、日本国民の貧困化が激しく進行しているという経済状況があります。
そしてそんな経済状況があるにも関わらず、政府は「増税メガネ」と呼ばれた岸田政権やその政策を引き継ぐ石破政権によって、増税&予算カットという激しい緊縮財政を続けてきた事に対して、国民は激しく不満を募らせるに至ったわけです。
そして特筆すべきは、こうした緊縮財政の背後に、どうやら「財務省」という特定省庁がいるのだという<真実>を国民が理解し始めたという点です。こうした議論は永田町や霞ヶ関の実情をよく知る言論人や関係者達は皆、常識として理解していましたが、一般の国民がそれを認識することはなかったのですが、ついに一般の国民にも、その「永田町の常識」「霞ヶ関の常識」が広まってきたわけです。
こうした世論の進展はやはり、元財務官僚の経済学者である高橋洋一氏や「ザイム真理教」と言う言葉で徹底批判された故森永卓郎氏等らの長年にわたる財務省批判の言論があったことは間違いありません。
自民党税制調査会、左から3人目が宮沢会長 自民党HPより
そして今、そうした「アンチ財務省」世論の象徴的存在として俄に注目を集めているのが、自民党の税制調査会(いわゆる自民税調)の会長である宮沢洋一氏です。
自民税調は、日本の税制を決定する強大な権限を持っている存在で、かつ、税制は日本の政治経済行政に巨大な影響を及ぼすものですから、そのリーダーである宮沢会長(彼は元財務官僚です)は、必然的に強大な実質的権力を握っているのですが、そんな実情は、一般の国民は、ほとんど誰も知りませんでした。
それが今、「ラスボス」という俗称で呼ばれる程に、一般の国民の間にもその存在が知られ始めたのです。
そして、多くの国民は、自分たちが今苦しいのはどうやら、政府が増税を繰り返し、必要な政府支出を行わない「ケチ」(つまり緊縮財政)な態度をとり続けているからであり、そういう態度をとり続けているのは、どうやら「財務省」が今の日本の政治を実質的に牛耳り、自民党の幹部達が皆財務省になびいているからだ-――となんとなく気付き始め、その財務省の緊縮派の代表選手として「ラスボス・宮沢」を捉えているわけです。
そしてこの度、国民民主党が主張する年収の壁の178万円のへの引き上げが、事実上、自民党、税調インナー、ラスボスらによって「潰される」こととなりました。
誠に遺憾としかいいようがない結果ですが、この結果を受け、財務省に対する不満はさらに拡大することは必至です。
しかもここで重要なのは、こうした財務省に対する不満が緩和していくことはない、という点です。
ここまで反財務省の空気が広まった以上、実際に彼らが積極財政に転じ、日本の貧困が緩和し、所得が上昇していく局面を実際につくることができるまでは、反財務省の空気が緩和していくとは考えられません。
財務省の関係者や「ラスボス・宮沢」や「増税メガネ・岸田」を中心とした自民の緊縮財政派の人々らは、今のアンチ財務省の現在の状況は一過性のものだとタカをくくって舐めていると、彼らは必ず「痛い目」にあうことになるでしょう。
このまま石破・自民党が財務省の意向に従う政治を続けている限り、自民党の今年の参院選での大敗は避けられないでしょう。
そして財務省本体も、このままの態度を改めなければ、「#財務省解体」の声はますます拡大していくことになるでしょう。そして、最終的に財務省の強大な権力を削ぐための「歳入庁の創設改革」(財務省が持つ権限の内、歳入についての権限を分離する改革)が、実行されることとなる未来も十分あり得ます。
自民党も財務省もそういう未来を避けたいと思うのなら、「国民のための財政」とは一体何かを「長期的な視点」に立って、真面目に考えなければならないでしょう。
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【さらに詳しく】「178万円玉木案」を否定…“何としてでも減税額をゼロに近づけたい”財政緊縮派の「ラスボス」宮沢洋一・自民党税調会長の正体

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