結婚披露宴が台無し!無断で「伊勢海老」から「ロブスター」にメニュー変更された…式場は「全額返金」すべきじゃないの?

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結婚披露宴で出るはずだった「伊勢海老」が「アメリカ産ロブスター」に勝手に変わっていたのが許せない──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
晴れて結婚式を挙げることになった相談者は、披露宴で「美味しい料理を食べていただきたい」と考えて、伊勢海老が含まれる一番高いランクのメニューにしました。
しかし式当日、披露宴で提供されたのは伊勢海老ではなくアメリカ産ロブスターでした。会場側から説明や連絡がなかったため問い合わせたところ、「メニュー表記の見直しで紹介した際の表記と異なったが、内容としては決めていただいた通り提供した」との回答があり、伝達のミスは認めていますが、返金の話は「のらりくらりとかわされた」そうです。
「伊勢海老と説明を受けて実際に提供されたのがロブスターなら、自分たちが決めた内容で提供されていないのでは」と納得いかない相談者。すでに食事代を含む式費用は全額支払い済みですが、「伊勢海老にお金を払ったのに、違うものが勝手に出てきて同額はおかしい」と返金要求や慰謝料請求も辞さない構えです。
どちらも広く親しまれている美味しい食材ではありますが、一般的に、伊勢海老はロブスターの2倍以上の価格となることもあるようです。相談者の要求は認められるのでしょうか。大橋賢也弁護士に聞きました。
──提供予定だった高級な食材ではなく、別の安価な食材だった場合、返金を求めることはできますか。
披露宴の申込者が、伊勢海老が含まれる一番高いランクのメニューを注文し代金を支払った場合、会場側は注文された内容の料理を提供する債務を負担します。
当然のことですが、伊勢海老とアメリカ産ロブスターは別の食材ですので、アメリカ産ロブスターを調理して提供しても、会場側は債務を履行したことにはなりません。
もし、会場側が伊勢海老を提供することができず、債務の内容を変更したいのであれば、事前に申込者に事情を説明し、その了解を得なければなりませんでした。会場側は、伝達ミスを認めているようなので、上記のような説明をしていなかったと思われます。
このように、当事者が契約内容を変更することに合意していないにもかかわらず、会場側が伊勢海老ではなくアメリカ産ロブスターを提供すれば、「引き渡された目的物が種類、品質に関して契約の内容に適合しないものであるとき」(民法562条1項本文)に該当します。
このような場合、申込者は、会場側に対して「代替物(伊勢海老)の引渡し」を求めることができます。
──すでに披露宴が終わっており、後から伊勢海老を渡されても取り返しがつきません。
会場側は、今回、披露宴でアメリカ産ロブスターを提供し、すでに披露宴が終わっているという状況では、伊勢海老の提供という「履行の追完」は「不能」といえます。このような場合、申込者は直ちに代金の減額を請求することができます(民法563条2項1号)。
つまり、申込者は、伊勢海老が含まれるメニューの代金とアメリカ産ロブスターが含まれるメニューの「代金の差額」を請求することができます。
この点、会場側が、それ以外のメニューを予定どおり提供しているのであれば、申込者が「代金全額の返還」を要求することはできません。
また、会場側は、「メニュー表記の見直しで紹介した際の表記と異なったが、内容としては決めて頂いた通り提供した」と主張しているようですが、これは会場側の独自の主張であり、法的には無理のある主張と考えます。
──返金要求が認められるとして、差額分以外の慰謝料などを請求することは可能ですか。
申込者が、会場側に対して、慰謝料請求することができるためには、披露宴において注文したとおりの料理が提供されることに対する期待権が、「権利又は法律上保護される利益」(民法709条)に含まれる必要があります。
上記の期待権が民法709条の権利等に含まれる場合、申込者の慰謝料請求は認められますが、損害の算定が容易ではなく、また代金の一部返金請求が認められる以上、仮に慰謝料の請求が認められたとしても、その額は高額にはなりにくいと思います。
【取材協力弁護士】大橋 賢也(おおはし・けんや)弁護士神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン。事務所名:川崎エスト法律事務所事務所URL:http://kawasakiest.com/

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