元五輪メダリスト議員の事務所で起きた「女性秘書横領疑惑」事件

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主を失った、自民党清和会(安倍派)内の権力闘争の一環なのか。11月初旬、こう書き出された怪文書が出回り、永田町で静かな話題となっている。
〈「国会議員」の事務所で横領事件が発生
700人ちょっとの人数ながら、詐欺、収賄、政治資金法違反等々、次々と犯罪が摘発される永田町。もしかしたら、暴力団組織よりも犯罪率は高いかもしれない。
実は、目下、ある国会議員の事務所で横領事件が発生。警視庁に相談する事態が生じている〉
以下、”事件”の詳細がこう記されている。
〈永田町の議員会館で一人勤務をしていた女性秘書が、地元事務所の会計担当者から振り込まれた活動経費を着服していたのである。その活動経費は本来、パーティ券の購入代、国会議員のタクシー代などに充てられるはずだった。
ところが、議員会館に別の秘書が新たに勤務することになった。すると、女性秘書は着服の発覚を恐れ、突然、議員会館に姿を現さなくなった。
あらためて、議員会館用の通帳を確認すると、その女性秘書に600万円余りが引き出されていたのである〉
さらにこの文書は「女性秘書が先手を打った」と記し、こう続く。
〈パワハラを受けたせいで「適応障害」が発症したため、800万円の慰謝料を支払えという内容証明を送りつけてきたのである。
なんとも手に負えない女性秘書である。
被害者であるはずの国会議員は横領事件を警視庁に相談しつつも、女性秘書に事実無根のパワハラを触れ回られるのではないかと怯える日々だとか〉
この文書の内容は果たして事実なのか。
関係各所に取材をかけると、この”事件”は堀井学衆議院議員の事務所で起きたということが判明した。堀井氏は元スピードスケート選手で、94年のリレハンメル五輪で銅メダルに輝いた。地盤は北海道9区にある。
「9区は、96年に小選挙区制に移ってから鳩山由紀夫元総理の鉄板の地盤だった。そこに当時、北海道議だった堀井氏が自民党公認で乗り込み、事前調査で鳩山氏を圧勝していた。鳩山氏は選挙前に戦わずして引退を表明し『元総理を引退に追い込んだ』と堀井氏の知名度が政界でぐっと上がった。しかし、21年の総選挙では北海道で根強い人気の鈴木宗男参議院議員(日本維新の会)が立憲民主党の山岡達丸氏に票を回し、小選挙区で敗れ、比例復活となった」(全国紙政治部記者)
怪文書で〈なんとも手に負えない女性秘書〉と名指しされたのは同事務所に籍を置いていたM氏と判明した。
M氏は清和会所属で北海道が地元の参議院議員事務所の私設秘書、さらに同じく清和会所属の千葉の衆議院事務所の私設秘書を経て、堀井事務所の私設秘書となったという。
彼女はある市議の男性と結婚しており、第二議員会館の保育園に子どもを預けに行く姿が話題となっていたという。
「小さいお子さんの親御さんは動きやすさを考えた服装であることが多いですが、Mさんはシャネルのバッグにカルティエの時計、ルブタンの靴といった身なりをしていました。『新幹線はグリーン車にしか乗ったことがない』と自分から話すなど、異色な方でした」
清和会の女性秘書はそう語り、こう続ける。
「秘書同士で飲みに行くと、浴びるほどお酒を飲みながらも、会計が近づくと、『議員が呼んでいる』といなくなったり、古典的な手法ですが『財布を忘れた』と言って払わない。新橋のスナックで無銭飲食をしたと過去に週刊誌で報じられたこともありました」
M氏の自宅を訪れると、「妻は不在」として夫の市議がこう話した。
「私はわからないし、私から話すことでもない」
M氏の携帯電話を鳴らすも反応はなかった。
一方の堀井事務所に行くと、堀井氏本人が「あちら側の記者ではないと証明できるのですか。情報がどこから漏れているのかわからない。事務所に盗聴機が仕掛けられたのか、スパイがいるのかと疑った」と大声で応じた。
突然の訪問を詫び、話し出すと冷静になったようで、事件についてこう話した。
「横領に関しては警察と相談している。その他のこともいまこちらの弁護士とあちらの弁護士が話し合っているのでお話できない」
そう言いつつも「堀井事務所の7方針」と記されたペーパーを持ち出して、「パワハラ疑惑」についてこう語った。
「明るく働きやすく、やりがいのある職場づくりを考えてきた。うちの事務所では私も含め序列をつけずにいたし、私は誰に対しても敬語で接してきた。パワハラというが、身に覚えもない。いつか気がついてくれるはず。いつか改善してくれる、と思っていたのですが……」
この「横領疑惑」が事実であれば、捜査が進むにつれて事件の詳細は明らかになっていくだろう。ただ、どうやら清和会の権力闘争とはまるで関係ない話のようだ…。
取材・文:岩崎大輔

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