コメの値段、なぜ高い? 背景に農家の苦境も 「コメを作れない」と廃業続出【サンデーモーニング】

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令和のコメ騒動。そんな言葉が飛び交うほど、コメの価格高騰が続いています。背景には、日本のコメ作りが抱える、深刻な問題がありました。
【写真を見る】「そもそも農政の大失敗」コメ農家の嘆きの声
客「バカ高。手が出ないです。(5kgで)4000円以上だと」
客「新米の時期を越えてもこう(高いまま)だから、消費者としては対策のしようもなくなってきている」
いま、暮らしを直撃するコメ価格の高騰。2024年と比べ、1年でコシヒカリの小売価格(5kgあたり)は、約1.7倍となり、消費者からは悲鳴が。(東京・総務省統計局小売物価統計調査より)
この状況に国も重い腰を上げました。
江藤拓 農水大臣「流通が滞っている、この状況をなんとしても改善したいという強い決意の数字」
2月14日、政府は保管している「備蓄米」の放出を発表。21万トンを集荷業者に売り渡し、価格を下げる狙いです。
今回の価格高騰の背景にあるのは、高値を狙う一部業者が在庫をため込むなど、流通が“目詰まり”したためといわれますが、コメ農家からは嘆きの声が。
コメ農家 伊藤秀雄さん「そもそも農政の大失敗。ギリギリしか作ってないから、ちょっと足らなくなるとこういう現象が起きる。このあり方、55年もやっている…」
日本人の主食、「コメ」。日本の農業は、このコメ作りを中心に動いてきました。
戦後、国策として進められたコメの増産。1960年代には技術革新や生産拡大が進み、各地で“倉庫不足”が発生するほどに。
ところが、この頃から徐々に食の欧米化が進み、コメの需要は急速に減少。「コメ余り」の状況が生まれ、ついには家畜の飼料にまで。
そこで政府は1970年、コメの生産を減らす「減反政策」に踏み切ります。需要に見合った分だけ、農家に生産させることで価格の下落を防ごうとしたのです。
コメ農家(1970年)「コメ作りは、休んでもカネになる。とれなくてもカネになる」
この頃、コメの価格は政府が「米価審議会」に諮って決定されるなど、事実上、国の管理下にありました。
1980年代以降、日米貿易摩擦が激しさを増し、農産物の自由化が求められても、コメだけは例外でした。
自由化反対集会の参加者(1990年)「水田を守らなければならない!」
当時の自由化反対集会には、自民党議員が激励に訪れる場面も。
コメが特別扱いされた背景を専門家は…
東京大大学院(農業経済学)鈴木宣弘 特任教授「農協には大変な組織力があります。選挙では票が必要なわけで、政治としっかり結びつく。それは政権をずっと支えてきた大きな原動力になった」
そうした中、1993年、東北地方を中心に大凶作に見舞われ、全国でコメ不足に。政府はタイや中国などからの緊急輸入に踏み切ります。
この事態を受けて1995年に始まったのが「政府備蓄米」制度でした。
2月12日に公開されたのは、埼玉県内にある2万トンの備蓄米倉庫。これが今回、放出されることとなった政府備蓄米です。
戦後、様々な変遷を遂げてきたコメを巡る制度。90年代以降、貿易自由化を求める外国の圧力に屈する形で、コメ市場を部分的に開放。長年続いた「減反政策」も2018年に撤廃されます。
減反で守ってきた中小の農家を淘汰し、大規模な農家が自由に生産できる体制を整え、コメの国際競争力を高めようとしたといいます。ところが、コメの需要に合わせるように生産量も減少する中、コメ農家は危機的状況に陥ったのです。
東京大大学院(農業経済学)鈴木宣弘 特任教授「自由化の流れの中で、30年間、(農家が取り引きする)米価が下がって、半分以下の値段。結果として農家の所得は下がって、『コメを作れない』と廃業する農家が続出するような状況まで来てしまった。もうあと5年ほったらかしたら日本の稲作は崩壊してくる」
兼業か専業か。あるいは規模の大小はあるものの、肥料や農具、燃料などの高騰でコストがかさみ、コメ作りによる年間平均所得はいまや9万7000円と10万円に満たない状況に。(農林水産省2024年12月公表)
さらに農林水産省の資料によると、農業従事者は約219万人(2004年)から約111万人(2024年)と20年かけて半減。平均年齢は69歳と高齢化も進んでいます。
日本の食卓に欠かせないはずのコメ。そのコメ作りの現場からは今…
コメ農家 伊藤秀雄さん「『コメ作って飯が食えねえ』って言葉知ってる?私自身もおととしまで赤字、去年の決算も赤字。だからその背景に100万戸の農家がやめた。(国が)やめるように仕向けちゃった。国家としての責任」

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