八ヶ岳の湧水から「カイミジンコ」の新種発見、大学院生らが5年がかりで分析・発表

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八ヶ岳南麓高原湧水群の一つ、女取(めとり)湧水(山梨県北杜市)でカイミジンコの新種が発見された。
甲斐市出身で北海道大の大学院生、宗像みずほさん(27)らの研究グループが昨年末、動物学の国際総合誌「Zoological Studies」に発表した。初めて見つけてから5年をかけて研究を続け、発表に至ったという。(米山裕之)
カイミジンコは左右に2枚の殻を持った甲殻類で、川や海など多くの水域に生息する。国内で約120種が報告されているが、湧水に生息する種は、これまでに18種しか報告されていない。
宗像さんは甲府西高を卒業後、同大理学部に進学。学部生時代に、葛西臨海水族園(東京)の研究者・田中隼人さんの授業を受けたことでカイミジンコに興味を持ち、その後、田中さんらと研究を続けている。
宗像さんが新種を初めて見つけたのは学部生時代の2019年3月。帰省した際に北杜市の女取湧水で採集調査を実施。湧水の底の砂や泥をバケツに入れてかき混ぜ、上澄みからカイミジンコを採取した。
その一つを観察したところ、殻の内側に溝や凹凸がなく、脚にあたる「尾肢骨(びしこつ)」も発達しており、これまで報告されたどの種とも異なる特徴があったという。
宗像さんのグループはその後、24年6月までに全国130か所の湧水で調査を実施。その結果、青森市と北海道の計7か所で採取したカイミジンコにも、山梨県で採取したものと同じ特徴があった。研究を続けると、新種は単一種で、山梨から東日本の広範囲にかけて分布していることがわかったという。
初めて発見してから5年以上かけて分析し、昨年12月31日に論文を発表。新種は和名で「シミズ ヒラ マルワ カイミジンコ」とした。清らかな湧き水に生息することから「シミズ」、凹凸のない殻の特徴から「ヒラ」を入れた。
新種は、湧水から少しでも下ると採取されなかったため、湧水に生息する固有種とみられる。一方、水底で生息しているにもかかわらず、山梨から北海道までの広範囲にどのように分布したのかは謎だという。
宗像さんは「乾燥して長時間生きられる卵を作るカイミジンコもあり、同様の卵を作れれば風に飛ばされて広がった可能性もある」と推測する。今後も新種を飼育して行動を観察するなどしていくといい、「湧水にすむ生物の豊かさに目を向けるきっかけになってもらえれば」と話した。

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