「これを忘れて23万円も損した…」!年末調整で多くの人が見過ごしている、「戻ってくるお金」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「たとえば、大きな病気を患うなどして手術を受け、本人や家族が治療の一環で心臓に人工弁を取り付けた場合などは、その年の年末調整で障害者控除を受けられる可能性があります」
こう語るのは、税理士の井出進一氏だ。
「自分が障害者手帳を持つことになるとは思わなかったという人は、障害者認定と税の控除規定の双方に詳しくないと、控除対象であることに気が付かず、見過ごしてしまうことが少なくありません」(井出氏)

心臓に人工弁をつけた場合は、身体障害者手帳を取得すること(手帳の取得申請中または申請可能となる医師の診断書でも障害者控除の適用は認められる)で、税法上の所得控除(障害者控除)を受けることができる。さらに障害年金の要件を満たせば、こちらも所得税を非課税で受給できる可能性もある。そもそも年末調整とは、何か。photo by Gettyimages年末調整とは、毎月適当に徴収していた税金を「年末」にまとめて適正額に「調整」するというもの。毎月の給与から払っていた源泉徴収の天引きについて、払い過ぎていれば戻ってくるし、足りなければ多く払うことになる。詳しくは、週刊現代の<「忘れたら5万5200円の大損」…年末調整で多くの人が見逃してしまう「大事な添付書類」>で述べている。簡単に言えば、自ら申告を行わないと税金が安くならないので、生命保険料控除や住宅ローン控除など、毎年書類をそろえて、会社に資料を提出する必要がある。当然、本来戻ってくるお金であっても申告を忘れると戻ってこない。扶養親族の範囲とは会社員は、毎年、その年の最初の給与日前日までに、「扶養控除等申告書」を提出。会社は提出された「扶養控除等申告書」から扶養親族等の数などを確認し、源泉徴収額を決定していく(扶養状況に異動がある場合は年末調整時などに再度その内容について申告を行う)。 そして年末調整における障害者控除は、この「扶養控除等申告書」に本人や同一生計配偶者、扶養親族についての障害者控除の要件を満たす事実を記入することで適用されることとなる(一般的には障害者手帳のコピーを添付することが多いと思われる)。では、本人以外の障害者控除の対象となる扶養親族の範囲とはどのようなものか?税における扶養親族の範囲は、理解させる気があるのか疑うくらいに非常にややこしい定義となっているので注意したい。本人以外の控除の要件としては、本人と同一生計であることを前提として、主に1:親族の範囲、2:年齢、3:所得要件の3つの要素がある(障害者控除については2の年齢要件は無い)。バックオフィス専門メディア「オフィスのミカタ」によれば、扶養親族にあたる人の条件として、次のような記述がある。「何が書いてあるかがよくわからない!」という人は、ここは読み飛ばしてもいい。<扶養控除の対象となる扶養親族(いわゆる控除対象扶養親族)には、次のような条件があります。配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)、市町村長から養護を委託された老人のいずれかであることが、まず条件です。納税者と生計を一にしていることも必要です。また、年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)も条件になります。青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないことも条件です。そして、納税を行う年の12月31日時点で16歳以上であることも必要です>上記の話を年末調整のケースで簡単に言えば、親族が日本に住んでいる前提で、「サラリーマンと生計を一にし、合計所得48万円以下の配偶者以外の親族で全年齢の者」が扶養親族として障害者控除の対象になり、扶養親族のうち「16歳以上の者」については控除対象扶養親族として、障害に関係なく扶養控除の対象となる。先にも述べたが障害者控除については年齢制限が無いので注意しておきたい。「上記の要件をふまえ、たとえば社会人になった子どもが会社を辞めてしまい、実家に戻ってきたケースなどで扶養控除などの申告を忘れているパターンが見受けられます」(井出税理士)障害者手帳がなくても良いケース冒頭の話に戻ろう。家族が人工弁をつけたケース、扶養していた夫の老親が要介護状態になったケースなどで、税制上の障害者控除を受けられる可能性があるという。 納税者本人のほか、扶養親族や同一生計配偶者が「税法上の障害者」にあてはまる場合は、一定額の障害者控除が適用される(同一生計配偶者とは、生計を一にする配偶者で合計所得金額が48万円以下の者をいう)。photo by Gettyimagesそして障害者控除の金額は、1人あたり一般の障害者で27万円、特別障害者で40万円、同居特別障害者に該当すれば75万円となる。日本経済新聞(4月3日)「老親の介護、税を軽減 扶養・障害者控除で24万円減も」によると、下記のケースで、年末調整でお金が返ってくるようだ。<障害者控除の対象としてよく知られるのは、障害者手帳を交付されている人。しかし税法では別途「65歳以上の人で、その障害の程度が障害者手帳の交付などに準ずるものとして市町村長などが認めたもの」との規定がある><自治体では例えば「要介護3~5で、かつ日常生活や認知機能などの面で自立度が一定ランク」などを税法上の「特別障害者に準ずるもの」と認定するといった具合で、この場合は特別障害者控除の申告が可能になる>つまり、障害者手帳を持っていなくても、自治体の障害者認定を受けることができれば控除が受けられる可能性があるということだ(自治体により要件は異なる。また介護保険法の要介護認定だけでは控除対象とならないので注意)。23万円以上の損失前ページのようなケースにおいて、どの程度の節税効果になるかを井出税理士に算出してもらった。 「まず、給与年収600万円の納税者が、要件を満たす障害者の父(70歳以上)のみを有する場合の節税効果ですが、同居老親等としての扶養控除だけで、所得税住民税合わせて11万円強の節税に。さらに同居特別障害者の場合は節税が12万円強(一般障害者なら5万円強)上積みされ、計35万円以上の税金が減る見込みとなります。所得税は累進税率のため、所得控除額と節税額は比例せず、年収がもっと高い場合は所得税率も高くなっていくため、さらなる節税効果が見込まれます」photo by Gettyimagesこのように、扶養控除等申告書へ障害者控除の記入を忘れただけで「35万円の損失」という事態になりかねない。「このほか、障害者手帳や自治体の障害者認定が無くても、引き続き6ヵ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態であり、複雑な介護(排便など)を必要とする扶養親族については、特別障害者として障害者控除の対象となりますので忘れずに申告したいところです」(井出税理士)年末調整は給与所得者にとって申告や納税の手間が省ける便利な制度だ。しかし、手続きをしないだけで、多額の損失を知らない間に被っていることになる。井出税理士は、「制度を知らずに申告していなかった場合でも、過去5年分は遡って申告が可能ですので、思い当たる部分があれば手続きを行ったほうがよい」とアドバイスする。例えば障害者手帳を持つ人は、障害等級に応じて公共交通機関で割引の適用を受けたり、医療費の助成などを受けたりすることもできる。交通事故によるケガで手足に不自由が残る場合や、疾患による障害が出た場合、老親の介護度が進んだ場合には、年末調整以外にも、自分たちに何ができるかをきちんと調べたほうが良いだろう。
「自分が障害者手帳を持つことになるとは思わなかったという人は、障害者認定と税の控除規定の双方に詳しくないと、控除対象であることに気が付かず、見過ごしてしまうことが少なくありません」(井出氏)
心臓に人工弁をつけた場合は、身体障害者手帳を取得すること(手帳の取得申請中または申請可能となる医師の診断書でも障害者控除の適用は認められる)で、税法上の所得控除(障害者控除)を受けることができる。さらに障害年金の要件を満たせば、こちらも所得税を非課税で受給できる可能性もある。
そもそも年末調整とは、何か。
photo by Gettyimages
年末調整とは、毎月適当に徴収していた税金を「年末」にまとめて適正額に「調整」するというもの。毎月の給与から払っていた源泉徴収の天引きについて、払い過ぎていれば戻ってくるし、足りなければ多く払うことになる。詳しくは、週刊現代の<「忘れたら5万5200円の大損」…年末調整で多くの人が見逃してしまう「大事な添付書類」>で述べている。
簡単に言えば、自ら申告を行わないと税金が安くならないので、生命保険料控除や住宅ローン控除など、毎年書類をそろえて、会社に資料を提出する必要がある。当然、本来戻ってくるお金であっても申告を忘れると戻ってこない。
会社員は、毎年、その年の最初の給与日前日までに、「扶養控除等申告書」を提出。会社は提出された「扶養控除等申告書」から扶養親族等の数などを確認し、源泉徴収額を決定していく(扶養状況に異動がある場合は年末調整時などに再度その内容について申告を行う)。
そして年末調整における障害者控除は、この「扶養控除等申告書」に本人や同一生計配偶者、扶養親族についての障害者控除の要件を満たす事実を記入することで適用されることとなる(一般的には障害者手帳のコピーを添付することが多いと思われる)。では、本人以外の障害者控除の対象となる扶養親族の範囲とはどのようなものか?税における扶養親族の範囲は、理解させる気があるのか疑うくらいに非常にややこしい定義となっているので注意したい。本人以外の控除の要件としては、本人と同一生計であることを前提として、主に1:親族の範囲、2:年齢、3:所得要件の3つの要素がある(障害者控除については2の年齢要件は無い)。バックオフィス専門メディア「オフィスのミカタ」によれば、扶養親族にあたる人の条件として、次のような記述がある。「何が書いてあるかがよくわからない!」という人は、ここは読み飛ばしてもいい。<扶養控除の対象となる扶養親族(いわゆる控除対象扶養親族)には、次のような条件があります。配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)、市町村長から養護を委託された老人のいずれかであることが、まず条件です。納税者と生計を一にしていることも必要です。また、年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)も条件になります。青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないことも条件です。そして、納税を行う年の12月31日時点で16歳以上であることも必要です>上記の話を年末調整のケースで簡単に言えば、親族が日本に住んでいる前提で、「サラリーマンと生計を一にし、合計所得48万円以下の配偶者以外の親族で全年齢の者」が扶養親族として障害者控除の対象になり、扶養親族のうち「16歳以上の者」については控除対象扶養親族として、障害に関係なく扶養控除の対象となる。先にも述べたが障害者控除については年齢制限が無いので注意しておきたい。「上記の要件をふまえ、たとえば社会人になった子どもが会社を辞めてしまい、実家に戻ってきたケースなどで扶養控除などの申告を忘れているパターンが見受けられます」(井出税理士)障害者手帳がなくても良いケース冒頭の話に戻ろう。家族が人工弁をつけたケース、扶養していた夫の老親が要介護状態になったケースなどで、税制上の障害者控除を受けられる可能性があるという。 納税者本人のほか、扶養親族や同一生計配偶者が「税法上の障害者」にあてはまる場合は、一定額の障害者控除が適用される(同一生計配偶者とは、生計を一にする配偶者で合計所得金額が48万円以下の者をいう)。photo by Gettyimagesそして障害者控除の金額は、1人あたり一般の障害者で27万円、特別障害者で40万円、同居特別障害者に該当すれば75万円となる。日本経済新聞(4月3日)「老親の介護、税を軽減 扶養・障害者控除で24万円減も」によると、下記のケースで、年末調整でお金が返ってくるようだ。<障害者控除の対象としてよく知られるのは、障害者手帳を交付されている人。しかし税法では別途「65歳以上の人で、その障害の程度が障害者手帳の交付などに準ずるものとして市町村長などが認めたもの」との規定がある><自治体では例えば「要介護3~5で、かつ日常生活や認知機能などの面で自立度が一定ランク」などを税法上の「特別障害者に準ずるもの」と認定するといった具合で、この場合は特別障害者控除の申告が可能になる>つまり、障害者手帳を持っていなくても、自治体の障害者認定を受けることができれば控除が受けられる可能性があるということだ(自治体により要件は異なる。また介護保険法の要介護認定だけでは控除対象とならないので注意)。23万円以上の損失前ページのようなケースにおいて、どの程度の節税効果になるかを井出税理士に算出してもらった。 「まず、給与年収600万円の納税者が、要件を満たす障害者の父(70歳以上)のみを有する場合の節税効果ですが、同居老親等としての扶養控除だけで、所得税住民税合わせて11万円強の節税に。さらに同居特別障害者の場合は節税が12万円強(一般障害者なら5万円強)上積みされ、計35万円以上の税金が減る見込みとなります。所得税は累進税率のため、所得控除額と節税額は比例せず、年収がもっと高い場合は所得税率も高くなっていくため、さらなる節税効果が見込まれます」photo by Gettyimagesこのように、扶養控除等申告書へ障害者控除の記入を忘れただけで「35万円の損失」という事態になりかねない。「このほか、障害者手帳や自治体の障害者認定が無くても、引き続き6ヵ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態であり、複雑な介護(排便など)を必要とする扶養親族については、特別障害者として障害者控除の対象となりますので忘れずに申告したいところです」(井出税理士)年末調整は給与所得者にとって申告や納税の手間が省ける便利な制度だ。しかし、手続きをしないだけで、多額の損失を知らない間に被っていることになる。井出税理士は、「制度を知らずに申告していなかった場合でも、過去5年分は遡って申告が可能ですので、思い当たる部分があれば手続きを行ったほうがよい」とアドバイスする。例えば障害者手帳を持つ人は、障害等級に応じて公共交通機関で割引の適用を受けたり、医療費の助成などを受けたりすることもできる。交通事故によるケガで手足に不自由が残る場合や、疾患による障害が出た場合、老親の介護度が進んだ場合には、年末調整以外にも、自分たちに何ができるかをきちんと調べたほうが良いだろう。
そして年末調整における障害者控除は、この「扶養控除等申告書」に本人や同一生計配偶者、扶養親族についての障害者控除の要件を満たす事実を記入することで適用されることとなる(一般的には障害者手帳のコピーを添付することが多いと思われる)。
では、本人以外の障害者控除の対象となる扶養親族の範囲とはどのようなものか?
税における扶養親族の範囲は、理解させる気があるのか疑うくらいに非常にややこしい定義となっているので注意したい。
本人以外の控除の要件としては、本人と同一生計であることを前提として、主に1:親族の範囲、2:年齢、3:所得要件の3つの要素がある(障害者控除については2の年齢要件は無い)。
バックオフィス専門メディア「オフィスのミカタ」によれば、扶養親族にあたる人の条件として、次のような記述がある。「何が書いてあるかがよくわからない!」という人は、ここは読み飛ばしてもいい。
<扶養控除の対象となる扶養親族(いわゆる控除対象扶養親族)には、次のような条件があります。
配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)、市町村長から養護を委託された老人のいずれかであることが、まず条件です。納税者と生計を一にしていることも必要です。
また、年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)も条件になります。
青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないことも条件です。そして、納税を行う年の12月31日時点で16歳以上であることも必要です>
上記の話を年末調整のケースで簡単に言えば、親族が日本に住んでいる前提で、「サラリーマンと生計を一にし、合計所得48万円以下の配偶者以外の親族で全年齢の者」が扶養親族として障害者控除の対象になり、扶養親族のうち「16歳以上の者」については控除対象扶養親族として、障害に関係なく扶養控除の対象となる。先にも述べたが障害者控除については年齢制限が無いので注意しておきたい。
「上記の要件をふまえ、たとえば社会人になった子どもが会社を辞めてしまい、実家に戻ってきたケースなどで扶養控除などの申告を忘れているパターンが見受けられます」(井出税理士)
冒頭の話に戻ろう。家族が人工弁をつけたケース、扶養していた夫の老親が要介護状態になったケースなどで、税制上の障害者控除を受けられる可能性があるという。
納税者本人のほか、扶養親族や同一生計配偶者が「税法上の障害者」にあてはまる場合は、一定額の障害者控除が適用される(同一生計配偶者とは、生計を一にする配偶者で合計所得金額が48万円以下の者をいう)。photo by Gettyimagesそして障害者控除の金額は、1人あたり一般の障害者で27万円、特別障害者で40万円、同居特別障害者に該当すれば75万円となる。日本経済新聞(4月3日)「老親の介護、税を軽減 扶養・障害者控除で24万円減も」によると、下記のケースで、年末調整でお金が返ってくるようだ。<障害者控除の対象としてよく知られるのは、障害者手帳を交付されている人。しかし税法では別途「65歳以上の人で、その障害の程度が障害者手帳の交付などに準ずるものとして市町村長などが認めたもの」との規定がある><自治体では例えば「要介護3~5で、かつ日常生活や認知機能などの面で自立度が一定ランク」などを税法上の「特別障害者に準ずるもの」と認定するといった具合で、この場合は特別障害者控除の申告が可能になる>つまり、障害者手帳を持っていなくても、自治体の障害者認定を受けることができれば控除が受けられる可能性があるということだ(自治体により要件は異なる。また介護保険法の要介護認定だけでは控除対象とならないので注意)。23万円以上の損失前ページのようなケースにおいて、どの程度の節税効果になるかを井出税理士に算出してもらった。 「まず、給与年収600万円の納税者が、要件を満たす障害者の父(70歳以上)のみを有する場合の節税効果ですが、同居老親等としての扶養控除だけで、所得税住民税合わせて11万円強の節税に。さらに同居特別障害者の場合は節税が12万円強(一般障害者なら5万円強)上積みされ、計35万円以上の税金が減る見込みとなります。所得税は累進税率のため、所得控除額と節税額は比例せず、年収がもっと高い場合は所得税率も高くなっていくため、さらなる節税効果が見込まれます」photo by Gettyimagesこのように、扶養控除等申告書へ障害者控除の記入を忘れただけで「35万円の損失」という事態になりかねない。「このほか、障害者手帳や自治体の障害者認定が無くても、引き続き6ヵ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態であり、複雑な介護(排便など)を必要とする扶養親族については、特別障害者として障害者控除の対象となりますので忘れずに申告したいところです」(井出税理士)年末調整は給与所得者にとって申告や納税の手間が省ける便利な制度だ。しかし、手続きをしないだけで、多額の損失を知らない間に被っていることになる。井出税理士は、「制度を知らずに申告していなかった場合でも、過去5年分は遡って申告が可能ですので、思い当たる部分があれば手続きを行ったほうがよい」とアドバイスする。例えば障害者手帳を持つ人は、障害等級に応じて公共交通機関で割引の適用を受けたり、医療費の助成などを受けたりすることもできる。交通事故によるケガで手足に不自由が残る場合や、疾患による障害が出た場合、老親の介護度が進んだ場合には、年末調整以外にも、自分たちに何ができるかをきちんと調べたほうが良いだろう。
納税者本人のほか、扶養親族や同一生計配偶者が「税法上の障害者」にあてはまる場合は、一定額の障害者控除が適用される(同一生計配偶者とは、生計を一にする配偶者で合計所得金額が48万円以下の者をいう)。
photo by Gettyimages
そして障害者控除の金額は、1人あたり一般の障害者で27万円、特別障害者で40万円、同居特別障害者に該当すれば75万円となる。
日本経済新聞(4月3日)「老親の介護、税を軽減 扶養・障害者控除で24万円減も」によると、下記のケースで、年末調整でお金が返ってくるようだ。
<障害者控除の対象としてよく知られるのは、障害者手帳を交付されている人。しかし税法では別途「65歳以上の人で、その障害の程度が障害者手帳の交付などに準ずるものとして市町村長などが認めたもの」との規定がある>
<自治体では例えば「要介護3~5で、かつ日常生活や認知機能などの面で自立度が一定ランク」などを税法上の「特別障害者に準ずるもの」と認定するといった具合で、この場合は特別障害者控除の申告が可能になる>
つまり、障害者手帳を持っていなくても、自治体の障害者認定を受けることができれば控除が受けられる可能性があるということだ(自治体により要件は異なる。また介護保険法の要介護認定だけでは控除対象とならないので注意)。
前ページのようなケースにおいて、どの程度の節税効果になるかを井出税理士に算出してもらった。
「まず、給与年収600万円の納税者が、要件を満たす障害者の父(70歳以上)のみを有する場合の節税効果ですが、同居老親等としての扶養控除だけで、所得税住民税合わせて11万円強の節税に。さらに同居特別障害者の場合は節税が12万円強(一般障害者なら5万円強)上積みされ、計35万円以上の税金が減る見込みとなります。所得税は累進税率のため、所得控除額と節税額は比例せず、年収がもっと高い場合は所得税率も高くなっていくため、さらなる節税効果が見込まれます」photo by Gettyimagesこのように、扶養控除等申告書へ障害者控除の記入を忘れただけで「35万円の損失」という事態になりかねない。「このほか、障害者手帳や自治体の障害者認定が無くても、引き続き6ヵ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態であり、複雑な介護(排便など)を必要とする扶養親族については、特別障害者として障害者控除の対象となりますので忘れずに申告したいところです」(井出税理士)年末調整は給与所得者にとって申告や納税の手間が省ける便利な制度だ。しかし、手続きをしないだけで、多額の損失を知らない間に被っていることになる。井出税理士は、「制度を知らずに申告していなかった場合でも、過去5年分は遡って申告が可能ですので、思い当たる部分があれば手続きを行ったほうがよい」とアドバイスする。例えば障害者手帳を持つ人は、障害等級に応じて公共交通機関で割引の適用を受けたり、医療費の助成などを受けたりすることもできる。交通事故によるケガで手足に不自由が残る場合や、疾患による障害が出た場合、老親の介護度が進んだ場合には、年末調整以外にも、自分たちに何ができるかをきちんと調べたほうが良いだろう。
「まず、給与年収600万円の納税者が、要件を満たす障害者の父(70歳以上)のみを有する場合の節税効果ですが、同居老親等としての扶養控除だけで、所得税住民税合わせて11万円強の節税に。さらに同居特別障害者の場合は節税が12万円強(一般障害者なら5万円強)上積みされ、計35万円以上の税金が減る見込みとなります。所得税は累進税率のため、所得控除額と節税額は比例せず、年収がもっと高い場合は所得税率も高くなっていくため、さらなる節税効果が見込まれます」
photo by Gettyimages
このように、扶養控除等申告書へ障害者控除の記入を忘れただけで「35万円の損失」という事態になりかねない。
「このほか、障害者手帳や自治体の障害者認定が無くても、引き続き6ヵ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態であり、複雑な介護(排便など)を必要とする扶養親族については、特別障害者として障害者控除の対象となりますので忘れずに申告したいところです」(井出税理士)
年末調整は給与所得者にとって申告や納税の手間が省ける便利な制度だ。しかし、手続きをしないだけで、多額の損失を知らない間に被っていることになる。
井出税理士は、「制度を知らずに申告していなかった場合でも、過去5年分は遡って申告が可能ですので、思い当たる部分があれば手続きを行ったほうがよい」とアドバイスする。
例えば障害者手帳を持つ人は、障害等級に応じて公共交通機関で割引の適用を受けたり、医療費の助成などを受けたりすることもできる。
交通事故によるケガで手足に不自由が残る場合や、疾患による障害が出た場合、老親の介護度が進んだ場合には、年末調整以外にも、自分たちに何ができるかをきちんと調べたほうが良いだろう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。