36人が犠牲になった2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などで死刑判決を受けた青葉真司被告(46)が、控訴を取り下げていたことが判明した。
1年前の1審判決直後には、京アニや裁判への不満を口にしていた青葉被告。取り下げの理由は明らかになっておらず、関係者は複雑な思いで受け止めている。
「全てのことを妄想にされた」。1審・京都地裁で判決が言い渡された直後の昨年1月29~30日、勾留先の大阪拘置所で遺族と面会した青葉被告は裁判をそう振り返り、控訴審について「色々発信したい」と意欲を示していた。
青葉被告は公判で「こんなにたくさんの人が亡くなると思っておらず、やり過ぎたと思っています」と後悔を口にしたが、京アニへの恨みは一貫していた。京アニに応募して落選した自身の小説が盗用されたと主張し、「裏切られた」「京アニが私にしたことは不問か」などと語っていた。
大阪高裁によると、今月27日付で青葉被告本人が控訴を取り下げる書面を提出したが、理由は明らかになっていない。
京アニで作品の色遣いを決める「色彩設計」を担当した石田奈央美さん(当時49歳)の母親(83)は「どんな心境の変化があったのかはわからないが、死刑は揺るがないと信じていた。今頃取り下げたと聞いても何も思わない」と話し、「娘の仏壇にご飯を供える時に報告したい」と語った。
事件で重いやけどを負った青葉被告を治療した鳥取大病院高度救命救急センター長の上田敬博教授(53)は控訴取り下げについて「罪と向き合う気持ちや後悔があったのではないか。亡くなった人や遺族に対するおわびの気持ちを一日たりとも忘れずに持ち続けていてほしい」と話した。
京アニの代理人を務める桶田大介弁護士は「被告の弁護人が取り下げに対して異議を申し立てることもあり得る。現時点でのコメントは控えたい」と話した。