6年間で登録者数を49万人に増やすも突然「収益停止処分」…元ヤクザYouTuberが明かす「一芸だけで食っていける時代は終わりました」

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YouTuberは夢のある職業なのか。登録者数49万人。元ヤクザの無職から人気 YouTuberへと華麗に転身を遂げるも、昨年10月運営から「収益停止処分」を受けた懲役太郎氏は「一時はいい思いをさせてもらいましたが、もうこれだけで食っていくのはムリです」と語る。(前後編の前編)
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【写真】意外とイケメン? 最近、講演などで「顔出し」を始めた懲役太郎氏
懲役氏は18歳から40歳まで幾つかの組織を渡り歩き、その間、2年、4年、4年と3回も懲役にも行った元ヤクザ。最後は2次団体の若頭の舎弟に収まり、独立一歩手前まで行ったが活動資金に行き詰まり足抜けした。
ほぼ無一文になり働き口がないままふらふらしていた2018年頃、親友の甥っ子から声をかけられて始めたのがYouTubeだった。
「声をかけてきたのは大学を出たばかりの売れない漫画家。彼は自分の描いた絵でVTuberを作りたがっていたけれど、どんなキャラクターにすればいいのか悩んでいた。そんな彼に思いつきで『元ヤクザのVTuberはまだどこにもいないだろう』と持ちかけ一緒に始めたのがスタートです」(懲役氏、以下同)
今でこそアウトロー系YouTuberは山のようにいるが、当時はまだ僅か。しかもVTuberというアニメーションを使ったコンテンツは唯一無二だった。
それから自分を模した元ヤクザの「懲役太郎」というキャラクターを2人で生み出し、毎回、「前科3犯、893番、懲役太郎です」のフレーズで配信を始めた。懲役氏がただ自分の過去を喋るだけのシンプルなコンテンツだったが、これが当たったのだ。
「語る内容は自分がヤクザ業界で見聞きしてきた経験です。逮捕され、裁判にかけられ、収監されるまでにどんな手続きがあるか。2次団体と3次団体の違いや上納金のシステム。拳銃を預けさせられた経験、凄惨なリンチ現場……。業界の裏側をひたすら喋り続けました」
収益化するために必要な条件、1000人登録、配信時間4000時間は1、2カ月くらいで達成。
「最初の入金は5000~6000円くらいだったような。登録者も5000人くらいまでは半年くらいで行きましたが、そこからはなかなか伸びなかった」
だが手応えは十分だった。“行ける”と踏んだ懲役氏は週3回程度の配信から毎日の配信に切り替えた。ネタが尽きてきたら、日々のニュースを絡ませ喋り続けた。
3年が経った頃には登録者数は10万人を突破。いつしかYouTube一本で食べていけるほどの収入を得るようになった。
「無職だったので時間は無限にあった。また喋るだけでロケにも行かないし、ゲストも呼ばない。コストもかかりませんでした」
成功したのは、口達者という特技があったからだと振り返る。
「それが無一文に落ちぶれていた元ヤクザ者に残っていた唯一の『芸』だったのです」
だが、順風満帆だった懲役氏の暮らしは昨年10月に一変する。
「ある朝、いつものように喋った内容を登録しようと思った時、異変に気づきました。登録画面から『収益』に関する項目がそっくり抜け落ちていたのです」
知らぬ間に運営側から「収益停止処分」を受けていたのだった。チャンネル自体はバンされておらずこれまで通りに配信はできたが、このままでは収入は一切入ってこない。ビジネスとしては無に帰した瞬間だった。
しかも理由が分からなかった。焦った懲役氏はサポートに理由や再開への道筋について問い合わせたが、
「『当社規定のコミュニティガイドラインに違反したから』としか返ってこない。どの動画が違反したとも教えてくれないのです」
結局、泣き寝入りするしかなく、6年間かけてコツコツと登録者数を49万人まで増やしてきたコンテンツは一夜にしてパーに。だが、幸いにも懲役氏はこのような不測の事態に備え「策」を打っていた。それがサブチャンネルである。
「こっちは生き残っていた。実はどちらかというとサブチャンネルの方が好き放題喋っていたので生き残った理由がいまだ不明なんです。ともあれ、本チャンネルでやっていた内容をサブに移行して今はなんとか凌いでいます。収益が停止した本チャンネルで『サブチャンネルに移行してください』と呼びかけ、2カ月間で2万人を移行させることができました」
処分の理由は今もわからずじまいなので、サブチャンネルもいつ何時同様の処分を受けるか不安は尽きないと話す。
「ヤクザコンテンツを扱うチャンネルは通報を受けることも多く、自分では気をつけているつもりでもどこかで規約違反している可能性があります。実はヤクザの儀式についての動画をチャンネルにアップロードしていたことがあって、それが〈テロ組織や犯罪組織、過激主義組織によって作成されたコンテンツを未加工、未修正で再アップロードしたコンテンツ〉という規約違反にひっかかったのかもしれない」
今後は「ヤクザ」を扱っているだけでもアウト認定される可能性もあると話す。実際、アウトロー系では突然バンされるチャンネルが増えつつあるという。
「私自身は自分の経験をエンタメとして伝えつつも、『ヤクザ者になんてなるもんじゃない』という啓蒙も合わせてやってきたつもりです。ただ最近のアウトロー系は無法地帯と化している。元不良、元ヤクザがシノギになると次々と参入し、刺青を隠さずにタバコをふかしながらひたすら『俺は強い』と昔の自慢話を続けたり、YouTuber同士で『どっちが強いか決着つけよう』などと凸し合ったり……。2年前には現役のヤクザだと公言してチャンネルを立ち上げた男まで出現。結局バンされた挙句、覚醒剤密造の容疑で逮捕されたこともありました」
目立とうとして過激化するコンテンツが多いというのだ。
「性的なコンテンツも同様です。先日も下着をつけずに街を散策する女性YouTuberのチャンネルがバンされました。昨年、流行した『搾乳機の使い方』動画も出てきてはバンされるのイタチごっこが続いています。世界企業であるグーグルとしては一件一件を丁寧に審査し、言い訳を聞いているわけにもいかないのでしょうが、一発で言い訳も聞いてくれずにアウト認定されてしまう側になるとつらすぎます」
確かにビジネスとして考えるとこんな不安定な職業はないだろう。
「ヒカキンさんのようにこの世界でスターに上り詰められたのは、先行者利益を得られた一部の人たちだけです。思いつきで一般人が『明日からYouTuberをやってみよう』で夢を叶えられる時代は終わったと思う。全盛期に比べれば広告単価も下がり、収益はほぼ半減しています。自分もこの先、YouTubeだけで食っていくのは限界と考え、漫画の原作を作ったり、ファンミーティングのような催しを行うなどビジネスを多角化しています」
ただ、夢のある世界ではあることには違いないと続ける。
「これからはもともと手に職を持っていた人たちが『副業』として活用するコンテンツになるのではないでしょうか」
だが、すでに実世界で成功を収めた人にとってもYouTubeは茨の道なようだ。
後編【元テレビ朝日法務部長“東大卒エリート弁護士”のYouTuber奮闘記「毎朝4時半起きで3時間かけて準備」「再生数が気になって土日も休めない」】では、昨年4月に YouTuberデビューした元テレビ朝日法務部長で弁護士の西脇亨輔氏の悪戦苦闘ぶりを伝えている。
デイリー新潮編集部

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