強い寒気が日本列島に流れ込んだ2024年12月28日。六代目山口組が愛知県内にある傘下組織の事務所にて恒例の餅つきを行なった。
【餅つきの一部始終】高級ブルゾンにサングラスの司組長 餅つきで満足そうな笑顔を見せる ヴィトン、モンクレール、ジバンシー…直参組長たちの貴重なハイブラ私服姿
朝7時。肌を刺すような寒さにもかかわらず、組の関係者が出入りするガレージ前には、愛知県警をはじめとした全国の警察、メディアが約50名集まり、鋭い視線を向けていた。六代目山口組の組員が乗車しているとみられる車両も、会場周辺を常に周回しており、いまだ分裂抗争下にあることを感じさせる。
「ご苦労さんです!」──取材班が現場に到着してすぐに山健組・中田浩司組長が姿を現す。赤いダウンにスウェット、スニーカーとスポーティな格好だ。警察、メディアが一斉にシャッターを浴びせるが、中田組長は意に介する様子もなく会場入りした。
「中田組長は2019年、神戸山口組に所属していた際(2021年に六代目に移籍)に六代目山口組系組員を銃撃したとして殺人未遂の罪で逮捕されましたが、2024年10月に神戸地裁で無罪判決が下され釈放されたばかり。分裂前は直参組長ではなかったので、餅つきの参加は初。12月13日に行なわれた組の恒例行事『事始め式』でも注目度は高かった」(実話誌記者)
その後も新井錠士(章友会会長)、薄葉政嘉(平井一家総裁)、吉村俊平(吉川組組長)ら直参組長が続々と会場入りする。今回も手にはPCR検査の結果証明書と思わしき紙を手にしている。
「『事始め』ではPCRで陽性反応が出た直参組長が急遽、帰宅させられたという話を聞いている。六代目山口組からすれば見えない敵への脅威は変わらないようだ」(同前)
2023年はガレージのシャッターが下半分開放されていたが、今回はシャッターこそ降りていないものの、事務局長の篠原重則(若林組組長)の指示のもと、隙間なくブルーシートが張りめぐらされている。
「警察対策でしょう。2023年の餅つきで、警察はプロパンガスの運搬方法が国の技術基準に反していたとして篠原組長を逮捕しています。警察も直参組長から情報を得るために餅つきを監視して逮捕する機会を伺っているので、六代目山口組としても神経をとがらせている」(同前)
8時42分ごろ、突如事務所が慌ただしくなる。鉄の板が入っていると見られる“防弾カバン”を持った組員が出てきて、弘道会の野内正博若頭も外に。野内若頭は2023年も餅つきの現場指揮を担っている。分裂抗争のなかで功績を上げ、弘道会若頭に昇格している。
「2024年10月までに野中若頭は“指詰め”をし、国民健康保険が適用外にもかかわらず適用を受け、支払いを免れたとして詐欺容疑で逮捕されました。結局、不起訴になりましたが、それだけ警察も中心人物と見ている。気が早いが山口組“八代目”候補なんて声も出ている」(同前)
慌ただしくなったのは山口組のNo.2・高山清司若頭の到着が間近に迫ったからだった。
青いブルーシートを張ったまま高山若頭を出迎えるのは失礼と考えたのか、野内若頭が外そうとするが手が足りず。すると、野内若頭が若い衆に向けて「来いって言ってんだろ、アホんだら!」と声を荒らげると現場には一気に緊張感が走った。野内若頭は2023年の餅つきではメディアに冗談を飛ばしていただけに、驚きの顔をみせる関係者も見受けられた。
無事にブルーシートが外されると、若頭補佐を筆頭に直参組長がガレージ前にずらり。だが、ここでも一際注目を集めるであろう人物の姿が見えない。司組長、高山若頭の出身母体である弘道会の竹内照明会長だ。
「竹内会長は高山若頭と同じく七代目の有力候補として見られている。こうした行事には必ず参加していて今回も参加予定だったと聞いているが、前日、六代目山口組の友好団体に危急の話があったようで急遽、関東に向かったようだ」(警察関係者)
アルファードがガレージ前に到着。若頭補佐、幹部を筆頭とした直参組長の出迎えのもと、高山若頭が姿を現す。
「『事始め』では司忍組長の出迎えに姿を見せなかったことから、警察からは体調不良を疑う声が出ていましたが、この日はしっかりとした足どりに見受けられた」(前出・実話誌記者)
高山若頭の到着後、餅つきが始まる。現場には「ヨイショ」の掛け声とともに餅をつく音がひっきりなしに響く。
雑煮にでも使うのだろうか──随時、組員らがネギ、ハイブランドの紙袋、「お茶セット」と書かれたケースなどを運び込む。
そのたびにガレージが昇降し、警察とメディアがカメラを向けるが、現場指揮の野内若頭は先ほどとは打って変わって「撮らせへんで」「各社2枚だけやで」「撮られても問題ないから見せたる」などと余裕ある対応を見せていた。
その空気が再び一変したのが10時15分。15分後にベンツに乗った司組長が到着するという情報が流れてからだ。高山若頭を筆頭に、若頭補佐、幹部、直参組長がガレージ前にずらり。ほかの組員も餅つきの手も止め直立不動。高山若頭の到着同様に“防弾カバン”を持った組員も外に出てきて、さらに近隣道路に組員が車を止め、ほかの車が通行しにくい状況まで作り上げていた。
「見えました!」「入られます」
その声とともに直参組長が腰を折る。まもなく護衛のマジェスタを連れた黒いベンツがガレージ前に流れ込み、司組長が姿を表す。ブラウンのブルゾン、ネイビーのニット、黒いパンツ、そしてトレードマークでもあるサングラスをかけた司組長が現れたのだった
(後編に続く)