年末年始こそ危険「強盗が敬遠する家」10の防犯策

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帰省や旅行の前に、今すぐチェックしたい「10の防犯対策」をお伝えします(撮影:今井康一)
今回は9連休になる人も多いという年末年始休み。帰省したり、旅行に出かけたりという人も多いだろう。世の中はすっかり休暇モードだが、犯罪者たちがそうかといえば、当たり前のことではあるが彼らに冬休みがあるわけではない。
むしろ年末年始こそ、近年世間を騒がせている強盗や空き巣、詐欺などの犯罪が起きやすくなる。
犯罪発生数が増える理由には、いくつかの要因が挙げられる。
まず、年末年始はクリスマスや正月の準備に関連して出費が増える時期であり、経済的に苦しい人が金銭的な問題から犯罪に走ることがあるからだ。そして経済が回る時期ということは、忘年会や買い物など、人々の活動機会が多くなるため、それを狙った窃盗や詐欺などの犯罪が多くなる。
人々が帰省や旅行などで家を留守にし、通常と異なる生活を送っていることから、注意が散漫になりやすい時期だ。これは、空き巣や車上荒らしなどの犯罪が増加する原因といわれている。
また、忘年会や新年会などで飲酒の機会が増えるため、酔った人による暴力事件や痴漢などの破廉恥罪も増加する傾向にある。飲酒運転による交通事故も増える。
年末年始は家族や友人との時間を過ごす人たちがいる一方で、孤独感やストレスを感じる人もおり、これら人々の中には衝動的な犯罪行為に走る者もいる。これが昨今の破れかぶれにも見える「闇バイト」や凶悪犯罪の動機にもつながっていると考える。
警察庁や自治体の犯罪統計にもその傾向が示されている。具体的には、窃盗犯罪(特に車上荒らしや万引き)は12月に増加する傾向があり、暴力犯罪(傷害や暴行)は飲酒が関与するケースが多いため年末年始に増加する。そして詐欺事件(オレオレ詐欺や振り込め詐欺)は、ボーナスや年末の特別収入を狙って活発化する。
これらの傾向を踏まえ、被害に遭わないための対策を講じてほしい。中でも、命の危険もある強盗への備えは必須といえるだろう。
以前、筆者が指摘した、強盗に狙われやすい「危険な家」の特徴は以下の通りだ。
【強盗に狙われやすい「危険な家」の特徴】
1. 家が目立たない位置にあり、周囲が雑然としている
2. 周囲に高い塀やフェンス、木が多く、隠れやすい場所がある
3. 門やフェンスの施錠がされていない
4. 照明が少なく、夜間は真っ暗
5. 家の構造が入りやすい作りである(ドアや窓が多い)
6. 玄関の鍵が古い・ドアの立て付けが悪いなどで、防犯性が低い印象がある
7. 高級車がつねに駐車されている
8. 家族構成がわかりやすいものが目につきやすい場所にある(洗濯物など)
9. 住人が高齢者や一人暮らしだと周囲に知られている
10. 近隣との交流が少ない
進入経路や死角が多くなる戸建ての危険性がよく指摘されているが、マンションのような集合住宅であっても安全とはいえない時代になった。
一般には集合住宅では1階が危険といわれているが、上の階であっても、バルコニーや屋上から侵入することが可能だ。実際に、2021年に大阪府大東市のマンションで、3階に住む女子大学生が直下の2階に住んでいた男に刺殺される事件も起こっている。男ははしごを使って2階から侵入したとみられる。
自宅はもちろんのこと、久しぶりに帰省した実家についても、上記の観点でいま一度よく点検してみてほしい(詳細は、以前の記事を参照)。
防犯のための強化が必要であれば、家族が集まるこの時期は、防犯リフォームや防犯ツールの購入などを相談する絶好の機会だ。
では実際に、実家や自宅のどの部分をチェックすればいいだろうか。
筆者の考える、以下の「10の防犯チェックリスト」を参考にしていただきたい。
【年末年始に確認したい「10の防犯チェックリスト」】
1. 普段から窓や玄関を施錠しているか
2. 防犯カメラやセンサーライトを設置しているか。している場合はその作動状態
3. 植栽の状態は良好か
4. 郵便物や新聞が溜まっていないか
5. 換気扇や通気口に防犯対策をしているか
6. 外から見える場所に貴重品を置いていないか
7. 家の周りを整理整頓しているか
8. 家の周りに「防犯カメラ作動中」のシールなどを貼っているか
9. 災害時の防犯対策は万全か
10. 普段から近隣住民とあいさつを交わしているか
まずは、これは大前提ではあるが、すべての窓や玄関の鍵が確実に施錠されているかを確認したい。実家に帰省した際には、親に普段の施錠状況を確認し、意識が低いようなら徹底させるべきだろう。
窓ガラスを割って侵入してきた強盗のニュースをよく目にするが、統計上は「無締まり」の窓や扉からの侵入が一番多い。また、古い鍵は防犯性能が低いため交換を検討したほうがいい。
次に、家の外周や玄関に防犯カメラやセンサーライトを設置しても安心はできない。それらが正常に作動しているかを確認しよう。高騰する電気料金の節約のため、電源を切ってしまっているという家庭も見かける。それでは意味がなくなってしまう。
庭の木や植え込みが過剰に茂っている家も危険だ。不審者が潜みやすくなるので綺麗に整え、隠れやすい場所を減らすようにしたい。
また、郵便物の状態にも注意だ。溜まっていると「不在」を知らせることになるので危険なのは言わずもがなだが、長期間家を空ける場合はどうしたらいいのか。その場合は、郵便物や新聞購読などを一時的に止めるという方法がある。
盲点なのは、窓や勝手口だけではなく、換気扇や通気口も侵入経路になりうるということ。特に人がギリギリでも通れそうなサイズのものには、防犯ネットやカバーを取り付けよう。明かり取りのために中二階などに設置された窓も同様だ。
また、窓など外から見える位置に高価なものや現金などを置かないように気をつけたい。お年玉などをちょっとテーブルに置くだけでも危険だ。それらのものを扱う場合は、カーテンを閉めるなど外から見えないようにしたほうがいい。
そして、外からの侵入を手助けするようなものを撤去することも必要になる。家の周りを整理整頓することだ。ベンチやはしごなど足場になりうるものを片付けたり、鍵のかかる場所に収納したりすることで、管理が行き届いている家だと防犯意識の高さを示すことになる。
よく話題になる、犯罪者同士の連絡用に使われる玄関や門などの印も、つけられていないか確認したほうがいい。また見つけ次第、取り除くことはもちろん、「#9110」(急がない110番)または管轄警察署の代表番号にその状況を伝えてほしい。警察官からアドバイスをもらえるはずだ。
古典的だが意外と効果的なのが、「防犯カメラ作動中」や「犬に注意」などの貼り紙を玄関や門に貼ること。心理的に犯罪者が嫌がる効果を発揮する。
また、今年の年始には能登半島地震が発生した。突然の災害にも慌てないよう、長時間停電や災害時の防犯対策を実家の親の分も点検したい。
貴重品や重要書類の保管状況を確認し、避難時に持ち出すものを用意しておくこと。災害時には通常の鍵が使用できなくなることもあるため、家の防犯性を高めるためにも、いくつかの種類の鍵や補助錠、ドアストッパーなどを用意することを勧めている。
そしてこれは災害時にも役立つし、そもそもの大前提になるが、普段から近所の人と関係性を作っておくのが安心だ。
地域によって人間関係の濃淡はあるかもしれないが、近隣で見かける人にも簡単なあいさつをするようにする。強盗の実行犯がその場限りのメンバーだったとしても、指示役に近い人間など、侵入をたくらむ者は必ず下見をするので、顔を見られたり声をかけられたりすることを嫌う。
普段からあいさつし合う関係性を地域で築いていくことが、犯罪者たちがその場所での犯行を諦めるきっかけになるだろう。
何より、独居する高齢者が親族にいる場合、見守りの目をいくつも作っておくことが、防犯だけでなく安心材料となる。
今回の年末年始休みを、防犯の意識を高めるきっかけとしてみてはいかがだろうか。
(松丸 俊彦 : セキュリティコンサルタント)

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