【長村 洋一】健康食品「ウコン」が肝障害を引き起こす…!? 忘年会前に気を付けたい、一緒に飲んではいけない医薬品

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「お茶で血圧が下がるなら薬を飲む前に試してみようか」「健康食品でダイエットできるならそれがいちばん楽でしょう」「食生活が不規則だからビタミンやミネラルで補うしかない」などと、健康食品はすっかりわれわれの生活に浸透している。
しかし実は、健康食品では機能性や安全性について何の保証もない健康食品が多く販売され、健康被害の大半はこれらの製品で発生している。ならばどんな健康食品を使えばいいか、使いたければ自身で見分ける目が必要である。そのため健康食品で被害に遭わないための基礎知識をさまざまな事例を通してわかりやすく解説した著書『健康食品で死んではいけない』より、健康食品の素材がなぜ毒に変わるのか連載形式で紹介する。
前編<二日酔いに“効果的”とされる「ウコン」にも実は落とし穴が…! 健常な38歳の男性はなぜ死亡したのか>
一方で、ウコンの主成分クルクミンを含有し、肝機能または認知機能が改善することを標榜した機能性表示食品は、2024年5月24日現在、管轄する消費者庁に30件の届け出があり、すでにいくつかは販売が始まっている。
肝障害を発症する可能性のあるものを、どうして「効果がある」として販売できるのか奇妙に感ずる人もいるだろう。ここが注意しなければならない点である。機能性表示食品は基本的に、病院で何らかの治療を受けている人向けに開発されたものではない。逆に言えば病気の人が使用する前提は考えられていないものなのである。
したがって、クルクミン含有の機能性表示食品の注意喚起事項として「肝・胆道系疾患の治療のために医薬品を服用している方、肝臓で代謝されやすい医薬品を服用している方は医師、薬剤師にご相談ください」と表示されている。
しかし実際、クルクミンは肝臓に負担をかけるので、肝臓病でなくてもすでに何らかの薬を服用している人は、クルクミンを含む機能性表示食品の摂取により肝臓の負担がさらに大きくなる。摂取を控えないと大変な事態を招く恐れがあるのだ。ここが、あらゆるケースを想定し詳細な研究を重ねて作られる医薬品と、健康食品の大きな違いである。
またウコンには鉄が含まれているケースが報告されている。鉄は栄養素の一つだが、肝障害がある場合には肝機能を悪化させてしまうので、摂取は必要最小限にすべきだ。そんな観点からも、肝障害を抱える人にとってウコンはよくない健康食品と言える。つけ加えれば、鉄はウコン以外にも多くの健康食品に含まれている。だから、基本的に病院で肝疾患の治療を受けているような人は、うかつに健康食品に手を出さないのが安全である。
さらに日本医師会は、ウコンと薬の相互作用に関しても専門家のコメントとともに注意を呼びかけている。
「ウコンは血液凝固を抑制することがありますから、血液凝固抑制薬(アスピリン、ワルファリン、ヘパリン、ジクロフェナク、イブプロフェンなど)を服用しているときにウコンを摂取すると、紫斑(しはん)や出血が生じる可能性が高くなると考えられます」として、健康被害の症例もあげている。
私も以前ウコンは肝臓によい、と考えていたが、必ずしもそうではないことがこうして明らかになってきた。
確かにウコンは、インドや中国の伝統医学で古くから用いられ、効果も証明されている。近代医学でも研究で、化学物質のクルクミンが肝臓によいことが明らかになった。そして簡単な動物実験やヒト臨床試験で肝機能改善効果が確認されると、食品だから安全という多くの人の意識もあり、健康食品として世に出てきた。
いったん健康食品としての市場価値を得ると「肝臓によい」という言葉が独り歩きし、やがては「肝臓病にもよい」となった。そこで肝臓に問題のある人までが摂取し、事故が発生してしまう。そもそもウコンをはじめ健康食品は医薬品と異なり、その効果のメカニズムや、どれくらいの量をどのタイミングでどんな人が摂取したら効果があるのか、また副作用はないのか、ということが系統的に調べられていない。多くの人が摂取して初めて問題点が出てくることになる。常識的に大丈夫だと考えられている健康食品は、こうした問題を内在している可能性があるから注意を要するわけである。
肝臓の専門医の名取宏氏も、以下のように安易な気持ちで健康食品に飛びつくことに警告を発している。
「健康食品はへたに研究を行って『効果がない』という結果が出れば、製品として成り立たなくなってしまいます。市場競争下では、サプリメントの製造・販売業者はサプリメントの効果を検証する努力をするのではなく、消費者に効果があるかのように誤認させる宣伝方法を洗練する動機が働きます。効果がないだけならまだしも、サプリメントが害を及ぼす事例もあります。私は肝臓を専門にしているため、原因がよくわからない肝障害の患者さんについて他の医師から相談を受けるのですが、患者さんによくよくお話を聞いてみると摂取していたサプリメントが原因であることもあります」
私もまったくそのとおり、と考えている。
二日酔いに“効果的”とされる「ウコン」にも実は落とし穴が…! 健常な38歳の男性はなぜ死亡したのか

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