岸田首相、今度は「中小企業いじめ」パートに厚生年金、消費増税で会社負担激増「もう給料アップは難しい」

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写真:UPI/アフロ
11月9日、日本経済新聞が報じた記事が波紋を広げている。「パートの厚生年金加入、企業の規模要件を撤廃 政府検討」という記事だ。
パートの厚生年金への加入は、2022年10月に従業員規模100人超に緩和された。2024年10月には、50人超にまで引き下げることが決まっている。政府は、近く有識者会議を開き、今後さらなる対象拡大を議論していくという。
具体的には、これまで対象外だった飲食(個人事業主)や5人未満の個人事業所、週20時間未満のパートにも適用を検討するようだ。
この記事はSNSで拡散され、悲鳴にも似た声が多くあがった。
《年金制度の改正のペースがどんどん早くなっている印象です。制度維持のためには必要なことなのでしょうが、加入拡大は特に中小事業主の負担に配慮しないと雇用に悪影響しかねません》
《やっていることは中小企業の人件費負担高騰施策でますます給料アップが難しい。これパートさんは将来貰えるか分からない厚生年金に加入するより今の給料増えた方が嬉しいんじゃね?》
《社会保険の適用拡大は、実質的に中小企業に対する増税と同じだと思います》
《パート・アルバイトの比率の高い飲食店は、かなりヤバいよね。時給がそのままでも人件費負担が増えて、労働分配率もあがり、単純に粗利が減る構図になる》
ファイナンシャルプランナーの坂井武氏に話を聞いた。
「短時間労働者はこれまで健康保険・厚生年金に加入しなくてよかったんです。
ところが、今後、パート従業員も加入しなくてはいけなくなると、健康保険・厚生年金は労使折半ですから、企業の負担が大幅に増えてしまう。お金を保険料に回さざるをえなくなり、当然、賃金アップが難しくなる企業も増えてきます。
パート従業員の厚生年金加入義務化でまず直面するのは、サラリーマンの妻(第3号被保険者)からも社会保険料を徴収するということです」
具体的な数字を見てみよう。
【実例】
2022年10月から、従業員100人超の事業所で、以下の要件を満たすと、パート従業員でも社会保険に加入することになった。
・1週間の労働時間が20時間以上・雇用期間が2カ月を超える・賃金の月額が8万8000円以上
仮にパートで毎月10万円稼いだとすると、厚生年金の保険料率は18.3%なので、月に1万8300円払う必要が出る。これを労使折半するので、会社は9150円(パートも9150円)の負担だ。
また、東京都の場合、健康保険の料率は9.81%なので、労使折半して月に4905円(パートも同額)。合計すると、社会保険料を月に1万4000円ほど払うことになる。つまり手取りが8万6000円になるということだ。
「もちろん、政府はそのぶん社会保障が厚くなると説明しているわけですが、受け止め方は個人によって違うでしょう。賃金がほぼ上がらないなかで、物価は上がるし、社会保険料も払わなくちゃいけない。
もちろん、厚生年金に入れてよかったという人も多くいるでしょうが、目先のお金が欲しいときに負担が増えるのは、生活には厳しいですよね」(坂井氏)
問題はこれだけではない。2023年10月からインボイス制度が始まり、売り上げ1000万円以下なら免除されていた消費税を収める必要が出てくるのだ。
「もともと免除されてきたことなので、仕方ないと言えばそうなりますが、年収が少ない個人事業主が、いままで払ってこなかった消費税を新たに払うことになるのは、理屈どうこうではなく、現実的に負担感が大きい。
サービス業なら、売り上げにもよりますが、年間20万~40万円を払うことになる。ギリギリで会社や事業を経営している人にはきつい話です。しかも、消費税そのものを上げる議論まで始まっていますから。
個人事業主も、パート労働者も、どんどんお金を取られていく。さまざまな増税案が出されていますが、全体で見ると、収入の低い人からも徴収に力を入れ始めた傾向です。
いままで守られていた所得の低い層が、その保護を外され始めたわけで、『収入の低い人からみれば弱い者いじめ』という意見も聞きます。
物価が高騰してお金が回らないのに、さらに取られるわけですから、ものすごく痛い。ストレートに打撃を受ける。遊ぶお金がなくなるならまだしも、今後は食べるお金さえなくなってくる。いままでにないきつい時代に入っていると思います」(坂井氏)
2022年度の一般会計税収は、68兆円超で過去最高額となる見通しだがーー岸田首相の増税押し付けはいっこうに止まる気配がない。

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