「本予算が成立したら辞めてもらう」 石破首相退陣までのシナリオ… 現役議員に聞くと

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【前後編の後編/前編を読む】「暗い顔でため息ばかり」 外交を巡って批判続出の石破首相の現状…「相談できる相手がいない」
決選投票の末に首相に指名され、第2次石破内閣を発足させた石破茂首相(67)。側近不足でため息ばかりの首相は今後、衆院予算委員長などの重要ポストを野党に握られる中、厳しい政権運営を迫られる。その上、来年の参院選までの退陣は不可避とみられていて――。
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前編【「暗い顔でため息ばかり」 外交を巡って批判続出の石破首相の現状…「相談できる相手がいない」】では、側近不足でため息ばかりの石破首相を取り巻く状況について解説した。
難問が山積する中でも特に石破首相にとって頭が痛いのは、重要な常任委員長ポストが野党の手に渡ってしまったことだろう。
「当初、自民党側は衆院選前と同程度の委員長ポストを取る案を示しましたが、これに野党側が“本会議での選挙で決める”などと反発。選挙になると全ての委員長ポストが野党側に渡ってしまう可能性があるため、自民党側は譲歩せざるを得なくなった。結局、計17の常任委員長ポストは衆院選前『与党15・野党2』だったのが、『与党10・野党7』になりました」(政治部デスク)
波紋を呼んだのは、予算委員会の委員長ポストが野党に奪取されたことである。
「野党側からは、予算委員会、議院運営委員会の委員長と衆議院議長のどれかを差し出してほしい、という話をしていました」
舞台裏を明かすのは、日本維新の会・国会対策委員長の遠藤敬氏。
「議長と議運委員長はセットなので、差し出すとしたら予算委員長ではないか、という話を森山(裕・幹事長)さんにしました。その後、自民党の坂本(哲志)さんと立民の笠(浩史)さんの両国対委員長が会談し、“自民党が予算委員長を差し出してきた”と笠さんから電話がありました」
政治部記者が言う。
「予算委員長だけではなく法務委員長など他の多くのポストまで野党に差し出すことになり、自民党内には森山幹事長の手腕を不安視する声が広がっています。“森山神話の崩壊”と言う人もいます」
しかし、衆院事務局職員を経て参院議員になった平野貞夫氏は別の見方をする。
「予算委員長のポストを立民に渡すことについて、自民党はもっと抵抗するかと思っていましたが、すんなり譲った。これは、森山さんの知恵だと思いますね。早めに野党に譲歩して、心理的な貸しを作ったということでしょう」
予算委員長には立憲民主党の安住淳氏が就くことになった。森山幹事長と安住氏は同じ時期に国対委員長を務めていたことがあり、気脈を通ずる間柄だ。
「もしかしたら裏で“安住さんが就くなら予算委員長を譲る”といった話があったかもしれない」(同)
森山幹事長の狙いはどこにあるのか。
「どっちみち石破政権というのは長くはないわけですから、森山さんのペースで上手に石破さんを退陣させるために、安住さんを使おうと思えば使えるわけです。格好をつけて引退させてあげるにはどのような形がいいのか。森山さんがシナリオを書いているのです」(同)
では、石破退陣までの“シナリオ”はいかなるものになるのか。
「臨時国会の補正予算までは石破さんでやると思います。能登の復興もありますし、自民党が野党側の要求を受け入れれば、補正予算は成立するでしょう」
政治アナリストの伊藤惇夫氏はそう語る。
「問題は本予算です。本予算の年度内成立が難しくなった場合、『総理のクビを差し出す代わりに予算を成立させてくれ』という話になるかもしれません」
政治ジャーナリストの青山和弘氏は、
「本予算は国民民主党などと協力して成立させ、来年6月末の通常国会終わりで内閣不信任案が可決されて解散を選択するパターンも考えられます」
しかしこの時期までもつれ込むと、
「石破首相のまま衆参ダブル選挙を戦う可能性が出てきてしまう。それでは選挙が厳しいのは必至なので、自民党内では石破さんに本予算の成立までは任せて、その後、どこかの段階で退陣してもらいたいと考える議員が少なくありません」
衆参ダブル選挙について、元自民党事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃氏はこう語る。
「以前、ダブル選挙を仕掛けた時は投票率を上げるためにやりました。しかし今のご時世、投票率が上がると非自民に票が回ってしまうので、ダブル選挙を仕掛けることはないでしょう」
いずれにせよ、来年3月末までに成立させなければならない本予算が一つの節目になりそうだ。
石破首相の責任を追及してきた自民党参議院議員の西田昌司氏はこう息巻く。
「本予算成立後の政治日程としては参議院選挙ということになっていますので、当然、党の体制を刷新していただかないと戦えない」
一方、石破首相の“兄貴分”、笹川堯(たかし)元科学技術政策担当相は首相が置かれた現状をどう見ているのか。
「心配し過ぎているよ。でも、本人は一生懸命やろうと思っているんだから、応援してやんなくちゃ。自公で過半数を取れなかった責任は確かにあるけど、次、誰が総理をやるんだ? 次もいないのに責任をうんぬんするのはどうなのか」
少数与党が政権運営に困らなかった例はかつて一度もない。“次”が誰であれ、自民党の苦境は続く。
前編【「暗い顔でため息ばかり」 外交を巡って批判続出の石破首相の現状…「相談できる相手がいない」】では、側近不足でため息ばかりの石破首相を取り巻く状況について解説している。
「週刊新潮」2024年11月21日号 掲載

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