草津町長への虚偽の性被害告発「責任は看過しがたい」 2審・東京高裁も元町議の女性に賠償命じる

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群馬県草津町の黒岩信忠町長(77)と肉体関係を持ったと虚偽の告発をした元草津町議の新井祥子氏らに対して黒岩町長が損害賠償を求めた裁判の控訴審で、東京高裁(水野有子・裁判長)は11月7日、新井氏に165万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
1審の前橋地裁は275万円の賠償を命じていたが、別に訴えられていたライターがすでに110万円を支払ったため、その分を差し引いた額の賠償とした。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
発端は2019年11月、草津町議会の議員だった新井氏が黒岩町長との性的関係を主張したことだった。
新井氏は2015年1月8日に町長室で黒岩町長と肉体関係を持ったと告白し、その話を聞いたライターが告発本「草津温泉 漆黒の闇5」(すでに販売打ち切り)にまとめて電子書籍として出版した。
これに対して黒岩町長は当初から一貫して否定。2019年12月に虚偽の告発により名誉を毀損したとして新井氏とライター、新井氏を支援していた町議の男性の計3人に損害賠償を求める裁判を起こした。

こうした状況の中で、草津町で初めて女性議員となった新井氏を議会が除名処分にしたことや、住民によるリコール成立で新井氏が解職されたことで、町の外部から「セカンドレイプの町」などと批判する声が集まった。
しかし、前橋地裁は2024年4月、黒岩町長と新井氏の間に性交渉はなかったと認定し、新井氏とライターに計275万円を支払うよう命じる判決を下した。
これに対し、ライターは275万円のうちの110万円とその遅延損害金の計約133万円を黒岩町長側に支払ったが、新井氏は判決を不服として控訴していた。

控訴審で新井氏は、告発本の発行によって黒岩町長の社会的評価を低下させた責任の大半は、反面取材や裏付け取材を行わなかったライターにあるなどと主張。
これに対して、東京高裁の水野裁判長は判決で、告発本が出版された後に新井氏がライターに「今後拝読する旨や出版社への働きかけ等を進めてほしいほしい旨の返信をしていることが認められ、電子書籍の内容で出版することを容認していたことがうかがわれる」などと指摘。
性交渉が虚偽であることを認識しながらライターに情報提供をして告発本によってそれを広く拡散させたとして、「その責任は看過しがたい」と判断した。
黒岩町長はこの日の高裁判決に、「金額の多寡は問題ではなく、高裁も当方の主張を認めてくれたと判断しています。新井祥子氏の主張は地裁、高裁も認めなかったことになります。判決に不服はありません」と話した。

一連の騒動は、民事訴訟とは別に刑事事件にも発展している。
前橋地検は新井氏を虚偽告訴と名誉毀損の罪で、ライターを名誉毀損罪で起訴しており、ライターに対しては前橋地裁が2024年1月に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。新井氏への判決はまだ出ていないとみられる。

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