元火葬場・葬儀屋職員の下駄華緒さんが、1万人のご遺体を見送ってきた経験を元に原作をつとめた『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』(漫画:蓮古田二郎)が、重版を重ねるヒット作となっている。
10月31日には、最新刊となる『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常(4)』が発売された。その衝撃的な内容が、ネットを中心に話題沸騰中だ。
4巻目では一般人がほとんど知らない火葬場のディープな内容まで紹介されている。その知られざる世界を、下駄さんに案内してもらった。
ある日、下駄さんは電車での通勤途中に、人身事故に出くわした。その事故現場が近いことを知ったベテラン職員・尾知さんは「そのご遺体、うちに来るね」と予測する。
「大抵の地域には火葬場が1つしかないので、その地域で起きた事件事故のご遺体はその1つしかない火葬場で火葬されることが多いのです」(下駄さん)
案の定、数日後にそのご遺体が下駄さんたちの火葬場に運ばれてくることになった。葬儀屋さんの話によると、ご遺体は飛び込み自殺でバラバラになり、そのまま納体袋に入っているという。納体袋とは、水死体や腐乱遺体、検死を受けた遺体など、損傷の激しいご遺体が入れられる袋のことだ。
「火葬場職員は火葬場でお別れ室などがない限り、棺の中を確認したりしません。なぜなら、火葬場に来るまでに、故人様とご遺族様がお別れを済ませてお柩を閉じているからです。僕らが再びそれを開けることはありません」(下駄さん)
下駄さんによると、孤独死などでご遺体がほとんど原型をとどめていない状態でも、火葬は必ず行うという。
「たとえば白骨遺体で発見された場合でも、必ず火葬は行います。ご遺体を小さなお骨にするのが目的なんです。骨は非常に硬いので、焼かないとお骨上げができる状態になりません。人間の身体は何もしなければどんどん腐敗していきますから、火葬してお骨にすることによって公衆衛生を保ち、無菌化することができる――“安定化”させるという考え方ですね。凄惨な事件でご遺体がほとんど残っていないケースもありますが、その際も火葬はします」(下駄さん)
火葬開始後に柩が燃え落ち、納体袋が焼失したとき、職員たちは初めてその中のご遺体を目にすることになる。
驚いたことにそこには、バラバラになったご遺体と一緒に、線路の石とおぼしき小石が無数に散らばっていたのだ。一体なぜ、このような事態が起きたのか――?
後編記事『「ご遺体をすべて手作業で拾う」火葬場職員も思わず涙…「人身事故」で亡くなった遺体の衝撃火葬体験』につづく
「ご遺体をすべて手作業で拾う」火葬場職員も思わず涙…「人身事故」で亡くなった遺体の衝撃火葬体験