【平野 国美】看取り医が驚愕…「あなたの出身大学はどちら?」入院患者の”モンクレ長女”が深夜に放った「衝撃的な一言」

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茨城県つくば市で訪問診察を続ける『ホームオン・クリニック』院長・平野国美氏は、この地で20年間、「人生の最期は自宅で迎えたい」という様々な末期患者の終末医療を行ってきた。患者の願いに寄り添ったその姿は、大竹しのぶ主演でドラマ化もされている。
6000人以上の患者とその家族に出会い、2700人以上の最期に立ち会った“看取りの医者”が、人生の最期を迎える人たちを取り巻く、令和のリアルをリポートする――。
金曜日の23時すぎ。風呂に入り、歯も磨き終わったところで“上司”からの電話が鳴った。
「平野ちゃん、お願いがあるんだけど、これから一人、訪問診療を開始して貰えんだろうか?」
「それは『今から』ということですか? ご自宅に伺うにしても準備してからとなると到着は0時を越えてしまいますが…」
電話の主は、頼み事をされれば、私が断れない相手。かつての上司であり、開業医になった私を何かと気にかけてくれる先輩医師である。
とはいえ、この時間帯からの急な依頼は“ワケあり”の匂いしかしない。少し身構えた。
「センセイ、何か、理由ありですか? 一度、病院に伺ったほうがいいですかね?」
「いや…。患者の病状に特に問題はないのだけど、ちょっと家族の性格がね…。何と言っていいか、エキセントリックなんだよ」
先輩医師の説明によると、90歳を迎えるその男性患者は、意識障害があり肺炎による低酸素血症ではではないかと言う触れ込みで入院を希望してきたという。ところが、画像も血液データも炎症を示唆するものはない。
そこで入院の必要はないと、家に帰そうとしたところ、連れ添ってきた長女が「父に何かあったら命の責任は取れるのか。検査入院をさせろ」と食い下がってきたという。
先輩医師は断ることもできたというが、長女があまりにもしつこく、ベッドも“運悪く”空いていたため入院させたそうだ。うんざりする内容だったが、話はそれだけでは終わらない。
「それで女性の研修医を主治医にして病室に行ってもらったんだけどさ、患者に挨拶したとたん、長女が口を挟んできて『あなたの出身大学はどちら?』と聞いてきたんだよ。で、彼女が『○○医科大学です』って答えたら、長女の顔つきが変わって『私の父に私大程度の医者をつけるとは何事なの? 私の父を何だと思っているのよ!』とナースステーションに怒鳴り込んできた」
「ちょっと待ってください。その私立大学って、僕も先輩も、受験して落ちた大学じゃないですか(笑)」
「そうなんだよ。でも長女は知らないんだろうな。私大ってだけでレベルが低いとラベリングされちゃった。で、仕方ないので別の国立大卒の医者を送り込んだんだけど、今度は『東大卒でなければイヤだ』と言い出した。それでこの大学病院には長女様のお眼鏡にかなう医者はおりませんということで、退院して頂くことになったんだけどさ、長女様は不服で『明日の朝までに何か起きたら訴える』って言ってるんだよ。それでお前に頼もうと」
父親は一体何者なのか。政治家か実業家か。あるいは反社の人間か。調べてみると中小企業の創業者で、会長だった。
「ヒラノ、ほんとごめん! 今から患者を家に戻すから、必ず行ってくれ」
ここまで言われて断るわけにはいかない。午前1時、男性宅に伺うと、自宅駐車場には高級外車が3台並んでいた。門に設置されたインタフォーンを押すと、玄関から長女が出てきて、想像通りの出迎え方をしてくれた。
「先生は、どちらの大学ご出身かしら?」
ブランド大学出身の医者や病院は、その肩書によって心強いと感じるかも知れないが、必ずしも患者の幸福を担保してくれるものではない。つづく後編記事『「完璧な医療体制」「食事は有名シェフが監修」のはずが…夫を高級老人ホームに入れた妻が「大後悔した」意外なワケ』では、モンクレ長女の暴走を止められなかった家族に起きた、悲愴な顛末をリポートする。
「完璧な医療体制」「食事は有名シェフが監修」のはずが…夫を高級老人ホームに入れた妻が「大後悔した」意外なワケ

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