《茅ヶ崎・女児の性被害疑惑》「悪ふざけ」「ハイタッチする感じ」被害女児と“食い違う”加害男児の主張を市教委が文書で発表。「慰謝料を請求」の文字も…被害者側の主張は盛りこまれず

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今年5月、神奈川県茅ヶ崎市にある市立小学校で起きた、小学6年生の男子3人による小学2年生女児への性加害疑惑。25日、集英社オンライン編集部のもとに茅ヶ崎市教育委員会から「関係児童側の情報に係る一部情報開示と、報道に当たってのお願いについて」と書かれたA4用紙7枚にわたる文書が届いた。文書内には、これまで報じられていた加害児童3名と教師たちの“言い分”が7000字にわたり記述されていた。
〈画像〉本当に「悪ふざけ」?茅ヶ崎市より送られてきた7枚の文書
ことの発端は、9月16日に神奈川新聞が報じた記事だった。今年5月31日に、小学2年生の女子児童が休み時間に友人と学校の図書室にいたところ、6年生の男子児童3人が近づいてきて、服の上から下半身を複数回にわたって触ってきたという。同日、保護者が女児の異変に気づき聞き取りをしたところ、トラブルが発覚。後日学校に連絡し、加害男児3人の保護者との話し合いの場が持たれたことが報じられた。
また、被害女児の母親は9月26日に発売された「週刊文春」の取材にも応えており、記事では“事件”について次のように詳報している。〈図書室で(被害女児である)A子さんが友人と本を探していると、後ろにいた6年生の男子3人が2人の前に回り込んだ。立て続けにA子さんの性器に手を伸ばし、服の上から触って逃げ出した。A子さんたちが図書室を出ると、3人は戻ってきて再び彼女の性器を触って走り去った〉(『週刊文春』2024年9月26日発売号)
一方で、茅ヶ崎市教育委員会から送られてきた文書の内容は、これまでの報道とは食い違う点がある。文書内では、「関係児童側の情報に係る一部情報開示と、報道に当たってのお願いについて」という表題のもと、「1 関係児童側の情報開示について」と「2 各報道機関に対し、今後の報道に向けたお願い」と大きく分けて2つの事柄が記載されていた。そのうち「関係児童側の情報開示について」では、小2女児の体の一部に触れたとされる関係児童数名への聞き取りなどが、以下のトピックに分けられたうえでまとめられていた。文書内では被害を受けた女児を「当該児童」、加害した男児たちを「関係児童」と呼んでいる。————————————-(1)関係児童側の言い分(2)謝罪の場のやりとりの内、他のことに関する関係児童の認識について(3)関係児童Bの保護者より、報道機関に情報提供してほしい旨ご要望いただいた内容(4)以上のご質問の他、関係児童側としては回答を控えさせていただきたいこと————————————-
加害者として報じられている3人の関係児童への聞き取りは、“お互いの言い分を伝えない段階”で、それぞれ個別に行なったという。関係児童側の言い分としては、主に以下のような点が挙げられている。————————————-●関係児童3人が話す中で、悪ふざけで、すれ違う児童の体に触れようという話になったこと●関係児童3人が、学校内図書館(いわゆる図書室)内や、その付近の廊下などを練り歩いたこと●関係児童の内2名は、それぞれすれ違う2人の児童のお腹付近(お腹やわき腹、ベルトを着ける部分のあたりのどこか)を(ぶつかるように/邪魔するような感じ/ハイタッチするような感じで)触れた認識であること●関係児童の内1人は、すれ違う2人の児童に触れるふりをしただけで、実際にはその体には触れていないこと●関係児童2人が触れた児童に、共通の児童が含まれるか(1人の児童に2人が触れたか)ははっきりしないこと●関係児童3人が、触れた/触れるふりをした他の児童には、女子児童の他、少なくとも男子児童が1人いたこと————————————-
また、文書内では「関係児童Bの保護者より、報道機関に情報提供してほしい旨ご要望いただいた内容」として、事件後に設けられた謝罪の場およびそれ以降で、次のような出来事があったことが記載されている。これは、見出しの通り、関係児童Bの保護者からの提案により開示されたものだ。————————————-①謝罪の場の中で、関係児童の本人や保護者からの謝罪を反省に向けた言葉を受け、話し合いの終盤に、当該児童の保護者から、関係児童らに対し、「君たち(関係児童ら)にも未来があるんだし」 「何か、人の役に立つことをやる。できるんだったら、学校に来ていい」といった発言があった。②謝罪の場の終わりに、関係児童の家庭に対し、慰謝料を請求するつもりである旨の話があり、また学校に対し慰謝料に向けた話し合いの場を設けるよう要望が出される。
③学校が教育委員会に確認した上で、学校は教育活動の場であり、慰謝料の話し合いを行うような場ではないことから、そのような話し合いの場の設定はできない旨を回答する。④学校に対し、当該児童の保護者から、関係児童の連絡先や住所を教えて欲しいという要望が出される。⑤学校が教育委員会に確認したうえで、個人情報保護の関係から、関係児童側の許諾なく学校外の情報は開示できないこと、関係児童側に確認したところ、現時点では開示できないと言われているところだが、許諾をもらうために、関係児童に伝えたいことがあれば教えてほしい旨回答する。
⑥当該児童の保護者から、警察に対し、関係児童の家庭の住所や連絡先を欲しい旨要望があったとして、警察から関係児童の家庭に連絡が入る。(関係児童側の情報提供)これに対し、関係児童の家庭は、開示について承諾をしていない。⑦教育委員会に対し、本件に係る報道機関からの取材が始まる。(原文ママ)————————————-同文書では、こうした関係児童側の事実確認や情報開示はされているものの、被害者側の視点はまったくと言っていいほど盛り込まれていない。また、これまでは「下半身に触れた」「性器に触れた」と報道されていたのに対して、茅ヶ崎市教育委員会による聞き取りおよび文書内では、具体的な言及はほとんどない。
さらに、神奈川新聞の記事では、1人でトイレに行くことができなくなった被害児童に対し、担任の男性教諭が「トイレまで(加害者が)来るわけないだろ」と発言したと報じられているが、これに対しては「当該学級担任は、トイレに付き添う場面(女性職員に引き渡すまでのやりとり)で、記事にあるような発言をしたことはないと述べており、また、別に確認した付き添いをしている女性職員もそのような発言を聞いたことはないと述べております」としている。なぜ、このような食い違いが起こるのか。また、なぜ関係児童側の言い分のみをまとめた情報を開示したのか。改めて、茅ヶ崎市教育委員会の担当者に電話取材した。
――被害児童と関係児童(加害側)で、触れ方や触れられた箇所にかなりの差異があります。この違いについて、どう認識されていますか?被害児童と関係児童で認識が違うことは、当初からお互いにわかっている状況ではあります。今回は、どちらが正しいのではなく、お互いの言い分というところで(書面を)出しています。――この文書は、当然ながら被害児童の保護者も目にしていると思いますが。この文書自体は見せていませんが、関係児童の聞き取りをまとめた同じ内容の文書は見ています。その際、「こちらの認識とは違う」というお言葉もいただいておりますが、児童の保護者の了承を得たうえで、情報開示しています。
――文書内では、関係児童への聞き取り結果のみが記載されていますが、被害児童側への聞き取りは行なっていないのですか?(被害児童への聞き取りは)行なっていません。児童を連れて病院の診断を受けた保護者より「被害に遭った状況を想起させないことが大事」と言われているので、学校としてもそれを避けるために、被害児童に対しては聞き取りを行なっていません。ですので、(被害)児童から直接的に話を聞いているのは、親御さんのみになります。
――被害児童は現在、通常どおり登校できているのでしょうか?夏休み明け初日は休んだものの、2日目から登校していました。しかし、神奈川新聞の記事が出た翌日の9月17日から登校できていない状況です。――今後、被害児童への聞き取りやケアなどはどうされていくのでしょうか?学校から保護者に連絡を入れたり、学習の内容を届けたりしている状況です。児童が登校できるようになるまで、毎朝、教頭が校門で児童を待って教室まで送り届けるだけでなく、 教室に「ふれあい補助員」を1人配置し、担任以外も児童を見守れるような状況にしています。また、児童がトイレに行く際に付き添えるように女性教諭を用意したり、女性の教育相談コーディネーターを配置し、何か困ったことがあるときにいつでも相談できたりするような環境をつくっています。
被害児童側と関係児童側、どちらの発言が正しいかは、現時点では判明しない。しかしながら、被害を訴えている人間がいる以上、現時点で関係児童の言い分だけを情報開示するのは、あまりにも中立性に欠けると言えるのではないか。茅ヶ崎市教育委員会には、被害を受けたとされる児童に対する十分なケアを含めて、しっかりとした調査を願いたいものだ。
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取材・文/河合桃子集英社オンライン編集部ニュース班

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