日本でただ1人「AVライターだけで生計を立てている男」…ナイツ、エレキコミックら人気芸人からも絶大な支持を得る「異才」の奇妙な半生

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世の中に職業は星の数ほどあれど、AVライターを生業にしている人物はそう多くない。そんな希少なAVライターの中でも異彩を放っている人物、東風克智(45歳)をご存じだろうか。
作品のレビューを月に約30本、女優へのインタビューを約5本、この仕事量を10年以上キープしており、「AVライターだけで生計を立てている“最後の人間”だ」と本人は語る。
アダルトコンテンツそれぞれのコメント欄は、素人の集合知で成立しているが、その時代に作品紹介のプロとして生き残る彼は、エロDVDによって救われたと言っても過言ではない、奇妙な来歴の持ち主だった。
東風氏とAVの切っても切れない絆とは? 本人を直撃した。
AVライターになる前の東風氏は、大学を卒業してから一旦は就職。その後、唐揚げ店を開くのだが、不運に襲われることになる。
「2007年頃に唐揚げ店を出したのですが、失敗しました。入居した物件にアスベストが使われていてすぐに追い出されてしまい、150万円の借金だけが残ったんですよ」
一念発起して始めた唐揚げ事業だったが、借金だけが残ってしまったのだ。路頭に迷いかけた東風氏を救ったのが、10代の頃から大量に買い集めていたAVだったという。
「借金返済のために、若い頃からのコレクションを泣く泣くヤフオクで売ったのです。すると、500円くらいで買ったモノが、いきなり1本2万円で売れました。他にも、1本50円くらいで買った『ギルガメッシュNight』のVHS5巻セットが20万円で買い取られた。
それは、番組が終了した後に、TSUTAYAだけでレンタルしていた希少なタイトルだから買いましたし、高く売れたタイトルはもともと『価値がある』と思って購入したものばかりだったのです。この時に『自分にはAVの目利きができる』と確信しましたね」
そんな東風氏だが、元々は「AVライターを仕事にするつもりはなかった」と話す。何が彼の運命を変えたのか? 現在に至るきっかけとなったのは、何組かのお笑い芸人だったという。
「大学でお笑いサークルをやっていて、当時の仲間にナイツやエレキコミックがいます。僕は当時からAVが大好きで大量に持っていた。彼らが僕の家に遊びに来た時に、それを見てかなり驚いていたのです」
数年後、かつての仲間であるエレキコミックがキング・オブ・コント2010の決勝メンバーたちで全国ツアーをすることになり、愛媛県の松山市に訪れた。当時、松山に住んでいた東風氏は、公演後の打ち上げに参加した。
「エレキコミックが『愛媛にはAVに詳しい面白いヤツがいる』と打ち上げに呼んでくれて、AVトークを3時間しました。キング・オブ・コント2010を優勝したばかりのキングオブコメディさんもその場にいて、そこから芸人さんの中で『愛媛にすごいヤツがいる』と噂になったみたいです。それを聞いたスポニチの人から、AVの連載オファーが来たのがきっかけでした」
ここから東風氏のAVライターとしての人生が始まった。
AVライターとしての道を歩き出して10年以上が経った東風氏、実は昨年まで愛媛で執筆を続けていたそうだ。いったいなぜ、チャンスが多そうな東京を拠点に選ばなかったのだろうか?
「僕は当時、DVDだけでも3500~4000枚のAVを所有していて、他にもVHSや本などもたくさんあり、置き場所が必要だった。なので、家賃の高い東京には出て来ず、愛媛で3LDKのマンションに一人暮らしして、そのうち2部屋を倉庫として使っていたんですよ(笑)。インタビュー仕事が入るとそのたびに出張していましたが、女優さんの体調不良でドタキャンされたりと、何かと苦労していました」
驚異的な本数のソフトを所持していたばかりに上京の機会を阻まれていたわけだが、エロの神は彼を放っておかなかった。この4000枚以上のコレクションのおかげで、人生の歯車がうまく回り出したのだ。
東風氏は現在、東京に引っ越しをして活動しているが、そのきっかけは愛媛在住時代に起きた“ある事件”だった。
「自宅でVRのAVを見ていたら、顔に水がかかってきて『今のVRってここまでスゲーのか!』と思ったんです。でも、ゴーグルを外してみると天井から水が滴り落ちてきていた。なんと、上の階の水道管が破裂していたのです」
倉庫となっている部屋を見に行くと、水浸しになっていくコレクションの数々。絶望的な光景だったのは想像に難くないが、事が落ち着くとマンション側が入っていた保険で補償してくれるという話になったという。
「後日、保険会社の人が来て『パッケージの損傷で1枚500円の保険がおります』って言われたのです。中古で買ったものも多いことは伝えましたが、それでも額は変わらないみたいで、なんと総額350万円もらえることになりました」
DVDによって人生を変えられたと言ってもいい“奇跡的な出来事”といえるだろう。
「しかも、そのマンションの他の部屋に空きがなかったので、引っ越し代金も出るということになりました。そこで、ずっと住みたかった東京に引っ越してきたわけです(笑)」
念願の東京進出が叶ったのは喜ばしい限りだが、やはり気になるのは、被害状況を確認するために大量のエロDVDをチェックしていた保険会社の人の反応だ。
「無表情ではあったのですが、リアクションしないでおこうという“強い意志”を感じさせる雰囲気でした(笑)」
まさにAVに人生を動かされている東風氏。じつは現在、一部の界隈から「AVライター界の大谷翔平」と呼ばれているという。はたしてその理由とは――。
つづく後編記事『なんと1日に12時間も動画を視聴…「AVライター界の大谷翔平」の異名をとる男が明かす、AVライターの「ハードすぎる1日」』では、いったい彼の何が大谷翔平なのか? そして、多くの人に馴染みの薄いAVライターの仕事のリアルについて、紹介します。
<取材・文/Mr.tsubaking>
なんと1日に12時間も動画を視聴…「AVライター界の大谷翔平」の異名をとる男が明かす、AVライターの「ハードすぎる1日」

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