米大統領候補「カマラ・ハリス氏」のお財布事情 公文書で分かった「資産残高」と意外な“投資スタイル”とは

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7月21日、ジョー・バイデン米大統領が選挙戦からの撤退を表明し、後継としてカマラ・ハリス副大統領(59)を指名した。これにより、11月の大統領選はトランプvsハリスになることがほぼ決まった。そこで今、注目されているのがハリス氏の保有する金融資産なのだという。マネックス証券の岡元兵八郎氏によるレポートをお届けする。
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【写真を見る】日本も見習って欲しい ハリス副大統領がもらった「コンサートチケット」の代金まで記録されている「米国公務員倫理室」の公文書
世界中が注目する米国の大統領選挙は、バイデン大統領が選挙を辞退し、8月の民主党全国大会では、カマラ・ハリス副大統領が正式な民主党の大統領選挙候補となりそうです。そこで、公文書を元にハリスさんの持つ金融資産について調べてみました。
現在のハリスさんの副大統領としての給与は23万5100ドル(現在のレートで約3600万円)です。ハリスさんは、2014年にカリフォルニア州の検事総長時代に、弁護士のダグ・エムホフさんと結婚しました。
エムホフさんはエンターテイメント業界に特化した弁護士として、当時の年収は100万ドル(約1.5億円)を超えていたそうです。ただ、ハリスさんが2021年に副大統領に就任した際、利害関係を避けるためでしょう、弁護士の仕事は辞め大学教授へと転職されたのです。
現在、エムホフさんはワシントンDCにあるジョージタウン大学法律センターで、教授として教鞭を取っており、その給料は17万4994ドル(約2700万円)と言われています。
ハリスさんの持つ金融資産は、米国公務員倫理室が公開している、2023年5月13日付けのハリスさんの「行政府個人公開財務開示報告書」を調べることで、より詳しく知ることができました。
ただ、公開されている数字は正確な金額ではなく、レンジ(幅)での公開となっている点に注意が必要です。この報告書によると、ハリス夫妻は合計で360万~736万ドル(約5.5~11.3億円)の金融資産を保有しています。そのうち179万~440万ドル(約2.8~6.8億円)、つまり半分くらいは「個人退職口座」で保有されています。
このほかハリスさんとご主人お二人の銀行預金口座は全部で4つあり、合計で85万~170万ドル(約1.3億~2.6億円)の残高があります。そのうちの一つは共同口座(米国では共同名義で口座が開ける)となっており、残高は5万~10万ドル(約770~1540万円)となっています。
ちなみに、日本と違い金利の高いアメリカにおいては、昨年1年間のご夫妻の金利収入は3万1200~10万3500ドル(約480~1600万円)にのぼります。
次に、ハリスさんがどのような投資を行っているか、ご夫妻の投資ポートフォリオを見てみましょう。
投資ポートフォリオの金額は全体で275万~566万ドル(約4.2億~8.7億円)です。そのうち127万~319万ドル(約2億~4.9億円)がご主人のもので、52万5000~125万ドル(約8000万~1.9億円)がハリスさんの持ち分となっています。
では、そのポートフォリオの中身はどうなっているかというと、その全てが投資信託とETFという、非常に保守的な運用となっていました。ご主人はこれまで個別銘柄にも投資をしていたようですが、ハリスさんが政治の道を進むにあたって、利害関係を生むかもしれない個別銘柄は売却してしまったのです。
現在お二人は30以上の投資信託やETFに投資をしています。資産は債券と株式に分散されており、私が確認できる限りその全てがパッシブ、つまりインデックスファンドとなっています。
お二人が保有している株式ポートフォリオをみると、米国株では大中小型株、グロース株やバリュー株、加えて外国株に新興国株と非常に分散されており、複数の運用会社の投資信託とETFで運用されていることが分かります。
債券ファンドについても、米国短中長期債、投資適格債券、高利回債、ドル建て、現地通貨建て新興国債券などと非常によく分散されています。ただ、正直な感想としては、ポートフォリオが分散されているのは良いのですが、似たようなファンドが数多く見られるので、一度整理をした方が良いような気もします。
また、この報告書にはファンドの売買の記録も掲載されています。
昨年、夫妻は103のファンドの売買取引を行っていますが、そのうち99件とほとんどがご主人のエムホフさんによるものでした。その履歴からは彼の投資家としての相場感が窺えます。
例えば、昨年は小型株のパフォーマンスが芳しくないなか、小型株指数であるラッセル2000に連動するETFを買い増していました。今年7月に入ってから利下げへの期待感で米国の小型株が急上昇したので、エムホフさんはご自分のポートフォリオを眺めて喜んでいるのではないかと想像します。
もちろん、自分の奥さんが大統領選挙に出馬することになったのでそれどころではないかもしれませんが。
ハリスさんの昨年の取引は6月末にご自身の退職口座で行った4件のファンドの売買のみです。ただ、その取引内容は興味深いものでした。彼女が売買したのは「ターゲット・デート・ファンド(TDF)」です。
ターゲットファンドとは、株式と債券を組み合わせて運用するバランス型の投資信託の一種で、最初は積極的運用から始めてターゲット・イヤー(運用の最終目標時)に向けて徐々にリスク資産の比率を引き下げていきます。最後にターゲット・イヤーに達すると安定運用となるような資産配分変更を自動的に行ってくれる投資信託で、ターゲット・イヤーは自身の退職する年に設定するのが一般的です。
ハリスさんは、これまで2035年と2025年のTDFを保有してきました。その二つのTDFを売却し、その資金をもとに、今度は運用の最終目標の年が2030年になるTDFを購入しているのです。
ハリスさんは現在59歳ですから、6年後の2030年に彼女は65歳となっています。あくまでターゲット・イヤーからの推察ですが、ハリスさんは65歳になったら第一線から退き、お二人でゆっくりとした老後生活をしたいと思い描いているのかな、と想像しました。
もちろん、もしも大統領になれば、そんなゆっくりはしていられない人生となってしまうかも知れませんね。
参考までに、彼女が昨年投資をした2030年TDFの上位5つの投資先を見ると、1位はS&P500連動のインデックスファンドで34.55%、次いで中期債券のファンドに17.91%、債券ETFに11.97%、FTSE先進国ETFに8.51%、海外株ファンドに6.97%にとなっています。
ご夫妻のポートフォリオについて総じて言えることは、ハリスさんが選挙戦でトランプ大統領に対し攻撃的な発言をされているのと比べ、ご自分の投資スタイルは、あまりリスクは取らない非常に保守的なポートフォリオをお持ちであるということです。
また、この報告書を読むと、昨年はハリスさんが過去に出版した2冊の本の印税収入を8488ドル(約130万円)得たことも分かります。
また、彼らはアメリカ人らしく寄付も行っています。昨年は総額2万3026ドル(約350万円)を寄付しており、寄付先の多くは自身の母校であるワシントンDCのハワード大学と、カリフォルニアの二つの大学、そして非利益団体や宗教団体となっています。
ハリスさんを民主党の大統領候補として、いち早く支持すると明かした人物に歌手のビヨンセさんがいますが、実はハリスさんはビヨンセファンとして知られています。
昨年、夫妻への贈り物として記録されている項目に、ビヨンセのコンサートチケット代が1655.92ドル(約25万円)と記されています。もしかすると、このチケットはビヨンセさん本人からのプレゼントだったのかもしれません。
岡元兵八郎マネックス証券の専門役員。専門である外国株のチーフ・外国株コンサルタントのほか、マネックス・ユニバーシティ投資教育機関のシニアフェローも務める。元Citigroup/米ソロモンブラザーズ証券のマネージング・ディレクター。外国株に30年以上携わるプロフェッショナルで、関わった海外の株式市場は世界54カ国を数える。海外訪問国は80カ国を超える。米国株はもちろんのこと、新興国の株式事情にも精通している。ニックネームは「ハッチ」。Xアカウント名 @heihachiro888
デイリー新潮編集部

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