「悪意を持つ人間」は笑顔で近づく…ボディーガードが教える、“プロの犯罪者” 7つのスキル

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護身術で防げるのは、日常に潜む危険の“ほんの一部”です。普通の人は、暴力犯よりも、詐欺のように笑顔で近づく犯罪の方が、はるかに遭う確率が高いのです。今回は、ボディーガードである筆者が、巧妙に懐に入り込む人間の特徴を解説します。
当然ですが、犯罪者がそれと分かる外見をすることはありません。防犯ポスターに描かれているような、つり上がったサングラスをかけた不審者はいないのです。多くの人は、「人を疑うこと」に罪悪感を持ちます。しかし、外見から他人を見抜けない以上、疑うのは当然でしょう。むしろ疑念の解消は、疑われた側の責任です。
とはいえ、“偽警官”なら制服を、“偽職員”なら名刺を用意しています。相手に、疑っていることを伝えるのは気が引けて当然です。しかし、逆の立場で考えてください。初対面の人に「念のため、在籍を確認させてください」と言われても、多くの人は理解を示すでしょう。大事なのは伝え方と、わずかな一手間です。それだけで、たいていの被害は避けられます。
人は第一印象の6割を、視覚から得ているそうです。もしも、紺のスーツを着た真面目そうな人に優しく接されたら、多くの人が「いい人」と思うでしょうし、たいていは本当にいい人です。しかし、誠実さは誰でも装うことができます。もちろん、誠実のアピール自体は悪いことではありませんが、人を欺く人間は、第一印象の力を最大限に利用します。つまり、「真面目」は、人間性の証明にはなりません。
外見と同じように、第一印象を大きくアップさせる要素が「親切」です。もちろん親切な人も、ほとんどが本当にいい人です。しかし「親切」も、善人でなくてもできることです。素直な人ほど、人の恩に報いようとしますし、恩人の頼みであれば、少々無理なお願いも聞いてしまうのではないでしょうか。
中には、「わずかな親切で恩など感じないよ」という人もいるでしょう。しかし、小さな恩(貸し)を積み重ね、相手をコントロールする者が存在し、実際にコントロールされる人がいます。彼らが親切と引き換えにする要求は、あり得ないほど法外です。
また、人の弱みにつけ込む者は「押しに弱い人」を見抜き、コントロールしにくい相手は除外します。恩に着せる人間に、善人はいません。明確な「NO」があなたを守ることもあります。
多くの人は、一度信用した相手を疑うことを苦痛に感じます。そのため、信じた相手の言葉は、多少の矛盾があってもスルーしやすくなります。「さっきの話と違うけど、たぶん言い間違いね」などと、相手に都合のいい解釈をしがちな人は要注意。犯罪者の思うつぼです。
では、プロの犯罪者が意図的に使っているのはどんなスキルなのでしょうか。次の7つを紹介します。
【(1)領空侵犯】
物理的に距離感が近かったり、心理的にぐいぐい踏み込んできたり…。たいていは単に性格ですが、仲間意識を持たせて、自分の要望を断りにくい空気をつくる者がいます。人は、自分に好意をもつ相手の頼みを断りにくいもの。他人のコントロールに長(た)けた人間は、「NO」と言いにくい雰囲気をつくります。
【(2)魅力的】
「魅力」を武器に使う犯罪者がいます(一部のサイコパスは、強い魅力とカリスマ性を持つそうです)。相手が「悪意を持って“魅了”しているのかどうか」は簡単に判断できません。しかし、意図的に誘惑する場合、そこには目的があります。最も単純な魅力のアピールは「満面のスマイル」。笑顔は人の魅力を増しますが、善意の象徴ではありません。
【(3)おしゃべり】
犯罪者にとって、信用を得るための時間は長くありません。行動で信頼を得られない以上、言葉で信用させる必要があります。
詐欺やうそ話は、巧妙に見えて穴があるもの。それをごまかすために、大量の情報で相手の理解が追いつかなくするのも常とう手段です。当たり前ですが、本当の話であれば、つじつまが合わないことはありません。
【(4)親近感の押し付け】
「ミラーリング」という心理効果があります。鏡に映したように共通点を見せると、好意を得やすくなるのです。分かりやすいのが、「私も昔、◯◯市に住んでいたんですよ!」といった、わずかな共通点の大げさなアピール(しかも、たいていはうそ)。もしも疑わしい場合、やや突っ込んだ質問をしてみてください。
また、終電を乗り過ごした人同士など、同じ災難の共有は仲間意識を芽生えさせます。目の前の他人が、信用に足る人間なのか――。冷静に考えましょう。
【(5)信頼をアピールする】
多くの人間は、人の期待に応えたいもの。この心理を巧みに利用する者もいます。「あなたは私をガッカリさせませんよね?」という目で見られると、相手の提案が断りにくくなります。その心理を利用され、言われるがままにサインしてしまうと相手の思うつぼ。そもそも、見当違いなおべんちゃらを言う人間には、どう見られてもよいのではないでしょうか。
【(6)約束を強調する】
知らない相手との口約束に、何の保証もありません。「約束します!」という言葉は、手っ取り早く相手を丸め込みたい下心の裏返しといえます。犯罪者との約束に保証はありませんが、相手はあなたに約束の履行を求めます。
【(7)タイムリミット】
相手の話が信用できるかどうかを判断するには、考える時間が必要です。とはいえ、時間がない場合も少なくありません。しかし、タイムリミットはたいていの場合、相手が決めたものです。犯罪ではありませんが、よくあるのが契約の期日に来る「今、申し込めば30%オフ!」といったオファー。こうした文言に心当たりはありませんか。
人を操ろうとする人間も同じように、即断を迫ります。よく考えるとあり得ない話なのですが、時間を与えて誰かに相談させたくないからです。正しい決断には時間が必要です。それを与えようとしないのは何らかの理由があります。
これら7つのスキルは、プロの犯罪者だけが使えるような、特別なものではありません。中には、円滑な人間関係の構築に役立つものさえあります。必要なのは、そうした行動や言動によって、「相手は何を得るのか」「自分は何かを失うのか」を考えること。悪意のある者が、あなたに最もしてほしくないのは、「冷静に考えること」と「誰かに相談すること」です。この2つのことを行えば、被害の9割は防げると思います。

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