残念ながら、せっかく子どもを身ごもったのに出産をあきらめる女性がいます。
多くの人は、10代後半から20代前半にかけての若い女性にこのようなことが起きていると想像することでしょう。些細なことから彼氏と喧嘩になって別れてしまったり、まだ収入が少なく、貯金もなく、子どもを育てるのが経済的に厳しかったり、子の父親が既婚者で出産を反対されたり…。そうした例もたしかにあるでしょう。
しかし、妊娠中絶をするのは若い女性だけではありません。
実は、40~44歳の中絶件数は約13万件(2020年。厚生労働省調べ)に達しています。彼女たちの年齢を考えると再度、妊娠できる保証はありません。
昨今、男女の出会いは婚活サービスが増えています。リクルートブライダル総研の婚活実態調査(2023年9月)によると婚活サービスを通じて結婚した人の割合は15%に達しています。
一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「マッチングアプリの利用状況に関するアンケート」(2021年12月)によると、マッチングアプリでトラブルにあった人のうち、10%は「(相手が)婚活ではなく性行為を目的としていた」と答えています。
アプリで出会う相手は、赤の他人。妊娠してもそのまま別れてしまうひどい男に出会う可能性もあり、決して他人事とは言えません。
筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして男女の悩み相談にのっています。今回は、妊娠した40歳の娘さんのことを案ずる広岡紘一さん(仮名・66歳)のケースを見ていきましょう。
「いろいろ考えましたが…やっぱり許せない気持ちが強いです。娘は今でも後遺症に悩まされているからです」
広岡さんは苦しい胸のうちを吐露します。娘の美乃梨さん(仮名・40歳)が、付き合っている彼(32歳)の子を身籠ったのです。孫の誕生――。それは広岡さんにとって本来は喜ばしい話ですが、悲しい報告になってしまいました。
<登場人物(年齢は相談時点。名前は仮)>
父:広岡紘一(66歳、嘱託職員。年収200万円)☆今回の相談者
娘:広岡美乃梨(40歳。パートタイマー。年収350万円)
娘の彼氏:(32歳。公務員。年収600万円)
広岡さんによれば、美乃梨さんは「彼とは婚活アプリで知り合った。彼は年下ですが、公務員ということで信用していました」と教えてくれたそうです。
婚活アプリは、住所地や出身地、年収や業種、趣味や好みのタイプなどを登録し、気になった相手とマッチングします。まずはアプリ上でやり取りをし、打ち解けたら連絡先を交換し、約束を取り付け、実際に会うという流れです。
彼の勤務先は、市役所の水道局で住所は官舎の一室。「最近、インフラの劣化で上下水の修理が多く、残業が増えて大変だよ」と具体的な話をしていたそう。プロフィールを「盛る」人もいますが、彼の言葉には信憑性がありました。
しかし、当時(2022年)はコロナ禍。外出自粛のムードが強まるなか、遊園地、水族館、動物園などの「お出かけデート」に行くことは難しかったのですが、後ろ指をさされやすい公務員はなおさらでした。美乃梨さんは「彼と会うのは部屋が多かったよ」と父親に話をしたそうです。
いわゆる「おうちデート」で愛を育んだのですが、やがて生理が不安定になり、妊娠検査キットを試したところ、結果は陽性。そして産婦人科で受診すると正式に妊娠したことが分かったのでした。
美乃梨さんは「ご両親に挨拶をさせて欲しい」と何度も頼んだのですが、彼は「また今度な」とはぐらかし、なかなか機会が与えられませんでした。
彼は、身勝手な性格でした。新型コロナウイルスは妊娠中に感染した場合、そうでない場合に比べ、重症化のリスクが高いと言われていました。美乃梨さんは「家のなかでもマスクをして欲しい」と頼んだのですが、彼は「仕事中、息苦しい思いをしているのだから、帰ってきたときくらいラクをさせて欲しい」と言って、マスクを着用しようとしませんでした。
美乃梨さんは「私や子どものことが大事じゃないの!」と大声を出したところ、彼は大きなため息をつきます。そして「俺はたばこを吸うから出て行ってくれ!」と言うのです。妊婦がたばこの副流煙を吸い込むことは、望ましくありません。美乃梨さんは呆れて、なにも言わずに出て行ったそうです。
しかし、これが彼と会う最後の機会となりました。それ以降、彼はLINEで別れ話を切り出してきました。
「もともと、そんなに好きじゃなかった」「他も当たってみたい」「好みのタイプじゃないから」
そして彼は、「親が反対しているんだ。説き伏せるのは無理。俺と美乃梨じゃ、どうしてもつり合いがとれないんだ」と明かしました。
結局、いい年をして自分の結婚すら自分で決められない、子どもじみた人間だったのです。
美乃梨さんは「私はもう一人の身体じゃないんだよ」と訴えかけました。
彼には子どもの父親としての責任があります。しかし、彼は「何を言おうと結婚するつもりはない」と前置きした上で、「悪いけれど、子どもを産んでも養育費を払うつもりはないから、勝手なことをしないで欲しい。今回は縁がなかったと思って、あきらめてくれよ」と無責任な態度をとります。
美乃梨さんは「私『たち』を捨てないで。何でも言うことを聞くから」と懇願しますが、彼は聞く耳を持ちませんでした。
さらに「金は出すから。ペイペイのギフトカードを送っておいたよ。20万で足りるだろ?」と一方的に別れ話を進めたのです。「今までありがとう。さようなら」の一言を最後に、彼からの連絡は途絶えました。
こうして美乃梨さんは、妊娠しているのに彼に見捨てられたのです。
筆者が「シングルマザーとして一人で子どもを育てていく選択肢もあるのでは?」と尋ねると、父親の広岡さんは首を横に振ります。
美乃梨さんは実家を出て一人暮らしをしています。20代の頃、看護師として大学病院で働いていたのですが、過労がたたり心身のバランスを崩して退職。現在は地元の内科クリニックで働いており、無理のないパートタイマー勤務に切り替えました。年収はわずか240万円。美乃梨さんは「私のお給料だけで育てるのは無理」と、父親に泣きついたのでした。
筆者は、「広岡さんが美乃梨さんのことを助けて、子どもを育てるという選択肢はなかったのですか?」と投げかけると、広岡さんは下を向きました。娘さんのことを助けられない理由は二つありました。
一つ目は体力的な問題です。広岡さんの妻は膠原病という持病を持っており、美乃梨さんを出産して以降、働いたことがありません。体の節々がこわばるなど、体調が不安定なのです。突然、腰痛を発症して起き上がれなくなることもあり、子どもの世話を任せるのは難しそうです。
二つ目は金銭的な問題です。広岡さんはリーマンショックのあおりを受けてリストラされて以降、正社員の職にありつけませんでした。派遣先を転々として、これまで年収が400万円を超えたことはありません。現在の住居は公営住宅の団地で家賃6万円。美乃梨さんが子育てをするスペースは、ありませんでした。
毎月7万円の年金で生活するのは難しく、65歳になった今もシルバー人材に登録し、働きに出ている状況です。広岡さんは「自分たちだけでぎりぎりの生活です。娘を援助する余裕はありません」とため息をつきました。
父と娘は、その後も公務員の身勝手な仕打ちに苦しめられていったのです。
つづきは、「重くのしかかる堕胎の罪と借金…「婚活アプリ」で娘を捨てた32歳公務員に父が誓った「復讐の中身」」で詳しくお伝えしましょう。
40代女性を襲う堕胎の罪と借金…「婚活アプリ」で娘を捨てた32歳公務員に父が誓った「復讐の中身」