退職代行サービス最大手「モームリ」を運営する「アルバトロス」(以下アルバ社)の谷本慎二社長(37)が2月24日、弁護士法違反(非弁行為)で起訴された。2022年2月のアルバ社創業から4年。同社で退職支援事業部長の要職にあった妻も起訴され、夫婦ともども剣が峰を迎えた格好だ。が、意外にも谷本被告は、公判を前にしながら再起の意欲を見せているという。
【写真を見る】強気な谷本被告 過去の取材時にも見せていた“余裕ある表情”
まずは社会部デスクが事件を振り返る。
「谷本とその妻が問われる罪は弁護士法違反(非弁行為)。弁護士資格がないのに退職希望者と勤務先との法的な交渉を弁護士事務所に斡旋した罪です。報酬を受け取った弁護士らも同法違反の罪で在宅起訴され、書類送検時には“違反ではないと仮装できると思った”と容疑を認めていた。にもかかわらず、谷本夫妻は“違反とは思わなかった”と否認を続けています」
その理由について、谷本被告を知る人物が明かす。
「昨年10月のアルバ社などへの家宅捜索後、刑事弁護に強い弁護士をつけたとされます。多数の無罪判決を獲得しているやり手で、当然、弁護料も高い。その費用が非弁行為を駆使したとされる退職代行サービスの儲けで賄われているとしたら、なんとも妙な話です。谷本社長は、容疑が晴れるとの確信があるのか、弁護士を通じてアルバ社の社員たちに“必ず復活するから”と伝えているのだそうです」
しかも、と、この人物が続ける。
「彼の強気の姿勢は、昨年、アルバ社が原告となって元社員2名を名誉毀損で訴えた民事訴訟を、逮捕後も取り下げていないことからもうかがえます。訴訟は、谷本夫妻のパワハラや非弁行為を内部告発した元社員に2200万円もの高額な損害賠償を求めたもの。内部告発封じのため提訴して個人を萎縮させる“スラップ訴訟”との指摘もあるのに、継続しているのです」
2月3日の社長夫妻の逮捕を受けてモームリはサービスの新規申し込みや無料相談受付を停止。事業規模を縮小した一方で、創業社長は、こちらの裁判も勝算アリとふんでいるわけだ。
「ですが経営の実情はかなり厳しい。モームリのサービスは最初に依頼者がLINE登録をしてから勤務先に退職意思を伝えるという流れで、利用料金は、おもにオンラインで決済していました。昨年の家宅捜索以降、金融機関の判断でこのオンライン決済がストップする事態になった。社長夫妻が起訴されたため、今後、金融機関はみな手を引くでしょう」
アルバ社を取り巻く状況は、谷本被告のように強気でいられるものではなさそうで、
「社内では、幹部が社員に対して“今月の給料は出るけれど、来月以降はどうなるか分からない”“移れる先があるなら移ってもらっても……”などと、それとなく退職勧奨のアナウンスをしていると聞きました。ところがどういうわけか、社員はさほど減っていないというのです」
民間調査会社のデータによれば、アルバ社の一昨年の従業員数は50名。日本年金機構の検索システムで厚生年金保険・健康保険の被保険者数を調べると、社長夫妻逮捕とちょうど同じ今年2月3日時点で42名であった。
つまり、家宅捜索以降も社員の数に大きな変動がなかったのは事実なのだが……。アルバ社の元社員が言う。
「社長夫妻が逮捕されても社員が残っていたワケは、次の二つのうちどちらかだと思います。一つめは、谷本社長に心酔していた社員が多く、社長の“復活する”という言葉を本当に信じている。あるいは、会社に現金があるうちは給料をもらい、金融機関との取引ができなくなり給料が出なくなった時点でパッと辞める。近いうち、はっきりするんじゃないですか」
こうした現状についてアルバ社は、
「お答えできる者がいないため、なにもご回答できない」
とのこと。昨年の家宅捜索後、アルバ社が品川区西五反田から本店を移した横浜市中区のオフィスには、看板も人影もなかった。
デイリー新潮編集部