平成24年、男は恋人を風俗で働かせ監禁し、首に鎖を巻かせて死に至らしめた。さらに新たな女性を邪推から殺害し、遺体を冷凍庫に入れて湖へ遺棄。
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この凶悪犯罪はいかにして起きたのか? 真面目だったもう一人の男がなぜ殺人の片棒をかついでしまったのか? なおプライバシー保護のため、登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/続きを読む)
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福井智雄(当時34)は約10年前、転職先の自動車部品製造会社で浅岡圭介(同40)と知り合った。責任者は別にいたが、「福井君にもっと丁寧に指導するべきじゃないか」などと上司にも堂々と意見を述べる浅岡に共感し、休日も一緒に遊ぶような関係になった。
その後、福井は浅岡に勧められて、浅岡の車と同じスカイラインGT-Rを購入したことから、一層親しくなった。福井の車が有償修理を求められると、浅岡が「それはおかしいんじゃないか?」と代わりに交渉し、無償修理を勝ち取ったこともあった。
「浅岡さんはスゴイっすね。ホント頼りになりますよ」
「昔から人助けは趣味なんだ。何も特別なことじゃない。しかし、言うべきことは言わないとダメだよ」
次第に福井は浅岡を敬服するようになり、2人が会社を辞めてからも付き合いは続いた。浅岡は「女性と話すのが苦手」という福井のためにキャバクラへ連れて行った。
そこでも浅岡は信じられないような口説きの早業を見せた。知り合って1カ月も経たないキャバクラ嬢と関係を結び、2カ月後には同棲に持ち込んだ。それがのちに第1の被害者となる河埜麻衣さん(同26)だった。
それだけでなく、女性の言動にも敏感で、麻衣さんを美容院に送って行った際、「駐車場には入れないで。手前で下ろして」と言われただけで、そこにいる美容師と浮気していることを見破り、麻衣さんを詰問して白状させるに至った。
「あいつは軽い女だ。浮気されるぐらいなら、風俗で働かせたほうがマシだ。浮気は法律で裁けないだけで、悪以外の何物でもない!」
こうして麻衣さんを風俗で働かせ、その稼ぎをピンハネするようになった。そんな生活に耐えかねて麻衣さんが逃げ出すと、激怒して連れ戻し、「オレに対する償いはどうなるんだ!」「1億円払え!」「1兆円払え!」などと朝から晩まで怒鳴り続け、麻衣さんが正常な判断ができなくなるほど精神的に追い詰めた。
麻衣さんが弱音を吐くと、模造刀で殴ったり、タバコの火を手に押し付けたり、あごの骨を折るなどの激しい暴行を加えた。通院先の病院は麻衣さんが何者かから暴力を受けてケガを負ったと判断し、警察に通報したこともあったが、麻衣さんは「自分で転んだ」としか言わず、被害を申告しなかった。
結局、麻衣さんは2年3カ月間、風俗で働いた。それが終わったのは麻衣さんが夜はキャバクラで働くという約束を破り、夜も風俗で働いていたことが発覚したからだ。それが浅岡の逆鱗に触れた。
「麻衣は外で働かせると浮気する。だから、カギ付きの部屋に閉じ込めて、ライブチャットで働かせることにした」
それから浅岡は3年近くも麻衣さんを監禁し、パソコンを通じて客と会話させるヌードモデルを務めさせた。もちろん、その売上金は浅岡がピンハネしていた。そうやって得た金は数千万円に上り、福井にはこんな説明をしていた。
「実はオレは裏の仕事もしていて、警察やヤクザの依頼で人をさらってくる。表には出せない仕事なので、報酬は宅配便で送られてくる。だから、警察もヤクザもオレの言いなりなんだ」
麻衣さんは浅岡の許しがないとトイレにも行けなかったため、ペットボトルに排尿し、ビニール袋に排便していた。壁には「寝るな」という張り紙が張られ、寝る間も惜しんで仕事をさせられていた。
福井が麻衣さんの姿を最後に見たとき、首に鎖を巻きつけられ、もう一方の端は梁にくくりつけられていた。浅岡から「麻衣が死んだ」と電話がかかってきたのは、その翌日のことだった。
〈【懲役は…】「お前もやれ!」女性の首を同僚と交互に絞めたことも…《福井県・キャバクラ嬢殺害事件》犯人男(40)の「その後の人生」(平成24年の凶悪事件)〉へ続く
(諸岡 宏樹)