衆院選(8日投開票)で有権者の判断基準の一つになるのが政見放送だ。事前に録画する持ち込み方式が主流だが、衆院選比例ブロックはスタジオでの録画方式に限定される。収録チャンスは2回きり、編集なしの緊張感ある中で、人選や構成から各党の人間性や本音が垣間見えると話題になっている。
【自民党】歴代首相は女性議員との掛け合いが慣例で、岸田文雄氏は元SPEEDの今井絵理子氏、石破茂氏は三原じゅん子氏を起用していた。女性初の首相となった高市早苗首相の人選が注目されたが、アシスタント役を務めたのは昨年の参院選で初当選した1年生議員の脇雅昭氏。党内では「なぜ脇氏?」と大抜擢に疑問の声も出たが、前髪パッツンのヘアスタイルと名前から、芸人の「ペナルティ」ワッキーを彷彿とさせる愛嬌キャラで、政権運営や政策に自信をのぞかせた高市首相の引き立て役を演じた。
【中道改革連合】突然の解散総選挙で準備不足を露呈したのが立憲民主党と公明党が合流した中道だ。政策一致に不安をのぞかせていたが、野田佳彦、斉藤鉄夫両共同代表がテーマごとに互いに譲り合いながら主張や政策を展開した。お茶の間やネットで抱腹となったのは最後の場面で、「真ん中の道と書いて中道です。中道改革連合、略して中道の候補者に皆さんの一票を託してください」と声をハモらせたが、息が合わずにグダグダ。一方で、まだ撮影中にもかかわらず手話通訳士に斉藤氏がすぐさま頭を下げる誠実さを見せ、一連の流れに「AIかと思った」「中毒性がある」と話題をさらった。
【社民党】ラサール石井副党首は公示前のNHK「日曜討論」出演時に手元の原稿を棒読みして、他党から批判を浴びていたが、政見放送では「暮らしがきついのに政治は誰を向いているの?」とカメラ目線で堂々たる姿を見せた。野党関係者は「政見放送はプロンプター(原稿映写機)が使用できますからね」とコッソリ。タレント、俳優で40年以上のキャリアを誇るだけに汚名返上となったようだ。
【れいわ新選組】衆院選直前に多発性骨髄腫の一歩手前を理由に議員辞職し、選挙にはかかわらないと宣言していた山本太郎代表が出演した。東日本大震災での原発事故をきっかけに芸能界から政界へ転身、国会での孤軍奮闘ぶりなど自身のストーリーを振り返り、「再び戻って来るまでれいわをもっともっと大きくしてほしい」と前線撤退を前にラストメッセージとなっている。
【日本保守党】「自民党をぶっ壊す! 中道連合もぶっ壊す! この2つが日本の悪」とぶっ放し、暴走気味の百田尚樹代表を有本香代表代行がなだめるお約束の展開。台本なしのぶっつけ本番で臨んだといい、「1回目の収録で、有本香代表代行が時間を見てなくて収録途中で切れるという失敗」(百田氏のX)。「移民はもういらん」の主張が海外メディアやネットで話題となっており、百田氏は「他の政党とは一味も二味も違います」と出来栄えに胸を張った。
【他の政党】国民民主党は玉木雄一郎代表と牛田茉友参院議員の掛け合い。元NHKアナ牛田氏の進行だけに政見放送らしい王道感を見せた。維新は吉村洋文代表と藤田文武共同代表の距離の近さに漫才コンビのようだとのツッコミも。議席大幅増が予想される参政党、チームみらいはそれぞれ神谷宗幣代表、安野貴博代表の一人語りでとうとうと政策を訴えるスタイル。共産党は田村智子委員長ではなく、山添拓政策委員長と吉良よし子参院議員の若手コンビが気勢を上げた。公示2日前に結党したゆうこく連合は原口一博、河村たかし両共同代表が「30年前に国会Gメンやりました」「政界の悪代官がいる。ずいぶん大臣のクビも取った」と出会いから振り返り、何かとタブー視されがちな財務省やワクチン問題などそれぞれの持論に切り込んだ。多種多様な主張が並び、有権者はいかに判断するのか。