ジャングリアの開園や、2月末に予定されているイマーシブ・フォート東京の営業終了など、ここ最近、「株式会社刀」が手がけるテーマパークが相次いで話題になっている。
刀は、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)出身の森岡毅氏が2017年に設立したマーケティング会社で、森岡氏はUSJの来園者数をV字回復させた立役者として広く知られている存在だ。
沖縄、お台場の話題に埋もれているが、実は刀が再生を支援した「西武園ゆうえんち」も厳しい状況に置かれている。
西武園ゆうえんちは、約100億円を投じて2021年にリニューアルオープン。当初は「昭和レトロ」を前面に打ち出した演出が話題となり、メディアにも多く取り上げられ来園者数も増加したが、その勢いは長く続かず失速。多額の減損損失を計上するなど、結果的に再生に成功したとは言い難い状況となっている。
刀の施策は、近年好調のテーマパークの潮流からは”逆行”している印象が否めず、西武園ゆうえんちの現状は、そのマーケティング手法が抱える限界を浮き彫りにしている可能性がある。その実態を探っていく。
「西武園ゆうえんち」は、1950年に「東村山文化園」として開業した。西武鉄道による沿線開発の一環として建設され、長らく沿線住民に親しまれるレジャー施設として機能してきた。ピーク時の1988年には年間194万人が来場した。
しかし、国内の子供の数は1982年をピークに減少し続けており、競合施設の開業も相まって、同園の来園者数も大幅に減少した。バブル崩壊後はリニューアルもままならず、2018年度の来園者数は49万人と、ピーク時の4分の1に落ち込んだ。
再生に向け、西武グループは森岡氏の率いる「刀」を頼った。刀によるマーケティング支援のもと、西武は総事業費約100億円を投入。2020年11月から施設を全面休園し、翌2021年5月にリニューアルオープンへと踏み切った。
リニューアル後の西武園ゆうえんちは、「1960年代の日本」をコンセプトに掲げ、エントランスの正面には昭和の街並みを再現した「夕日の丘商店街」を新設した。
この商店街には約30店舗が軒を連ね、園内の各所ではショーが行われる。来場者は実際に飲食店や売店で喫食することも可能で、当時の雰囲気を体験することができる。
丘の上にある映画館「夕陽館」もリニューアルの目玉施設であり、午前・午後に分けて「ウルトラマン・ザ・ライド」と「ゴジラ・ザ・ライド」の上映が行われる。スクリーンの映像に合わせて座席が動く、半体験型のアトラクションだ。
リニューアルにより一時はチケットの売上が13倍に膨らむなど、当初の客足は好調だった。昭和の雰囲気を模した「ネオ酒場」が話題になっていた時期でもあり、「昭和」を全面に打ち出した西武園ゆうえんちも注目を浴びて、20~30代の若者が多く来場した。
しかし、その勢いは長く続かず、現在ではかつてのような賑わいは見られない。「夕陽館」の上映時間は約10分間で、定員は70人程度だが、上映は午前・午後に各1回のみ。目玉アトラクションとして定着しているとは言い難い状況にある。
そもそも西武園ゆうえんちは、リニューアル後の来園者数を公表していない。仮にV字回復を遂げていれば、年間70万人、もしくは100万人といった具体的な数字を積極的に公表するはずだが、数値はなぜか伏せられている。一部報道によれば、来園者数は改装前と大きく変わっていないようだ。
幸いなことに、西武ホールディングス(HD)は上場企業であるため、公開されている決算資料から経営状況を断片的に推測することができる。
同社の決算資料によると、西武HDは「西武園ゆうえんち」に関連して減損損失を計上しており、その額は2023年3月期に32億円、2024年3月期に41億円。2期合計で73億円にのぼる。
減損損失とは、資産の収益性が低下し、投資額の回収が見込めないと判断した場合に計上される損失額のことだ。実際に資金が流出するわけではないものの、帳簿上、その分の資産価値が失われたことを意味する。つまり投資した約100億円のうち、73億円分が無価値だと判断されたわけだ。
実際、2022年度まで同園を運営していた「株式会社西武園ゆうえんち」の業績を見ると、2022年3月期の最終益は1724万円だったが、翌2023年3月期には3458万円の赤字へと転落した。73億円もの減損損失は、こうした収益の悪化を反映した結果だと考えられる。
その後、刀は2024年3月31日をもって西武園ゆうえんちとの協業期間を終了した。
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【つづきを読む】『苦戦するジャングリア、西武園ゆうえんち、イマーシブ・フォートには共通点があった…刀のテーマパーク「最大の弱点」』
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