2月3日、退職代行サービス「モームリ」運営会社「アルバトロス」の社長・谷本慎二容疑者(37)と、その妻で従業員の谷本志織容疑者(31)が警視庁に逮捕された。容疑は弁護士法違反。2名は報酬を得る目的で、退職交渉に関わる仕事を違法に弁護士らに紹介した疑いがもたれているという。
労働環境の悪化のためか、近年、退職代行業者は隆盛を極めていた。その中でもメディアに出ずっぱりで最も知名度が高かったのが、「モームリ」と谷本容疑者である。その“効果”もあって、同社の売り上げは右肩上がり。谷本容疑者も昨年夏、億ションに生活の拠点を移すほどだった。一方で、従業員には「パワハラ」と受け止められるような言動を繰り返し、訴訟沙汰にもなっていたという。
「週刊新潮」では、同社が同容疑で家宅捜索を受けた昨年10月、その様を取材している。なぜメディアの寵児は一線を越えてしまったのか。そして犯行に妻の果たした役割とは――。当時の記事を再録する。(「週刊新潮」2025年11月6日号の再録です。文中の年代、肩書等は当時のものです)
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【写真を見る】「億ション生活」をしていた谷本容疑者の素顔
〈多くのうさんくさい業者であふれていました〉
「退職代行モームリ」の運営会社「アルバトロス」(以下アルバ社)が創業したのは2022年2月。その際、谷本慎二社長(36)が退職代行事業についてつづっていた言葉だ。
それから3年半余りを経た2025年の10月22日。
「警視庁保安課が、品川区西五反田のアルバ社と関係先の弁護士事務所2カ所に、家宅捜索に入りました」
と、社会部デスクが語る。
「捜索容疑は弁護士法違反(非弁行為や非弁提携)です。モームリのサービスにおいて弁護士資格のない谷本社長とアルバ社ができるのは、依頼者の勤務先に退職の意思を伝えることのみ。ですがアルバ社は、依頼者の残業代の請求といった法律事務が必要な交渉を弁護士に取り次ぎ、その見返りに弁護士から報酬を得たとの疑いが持たれています」
今後は押収資料の分析や関係者への聞き取りが行われ、谷本社長らの刑事責任を問えるかが決まる。
「捜索後、モームリは再開したものの、厳しい状態が続くでしょう。退職代行を弁護士に依頼した場合の費用は5万円前後ですが、モームリは正社員が2万2000円でアルバイトは1万2000円。低価格とはいえ、非弁行為の疑いがかかった業者が依頼者の勤務先に連絡しても、説得力がありませんから」
古参の退職代行業者が眉をひそめる。
「われわれのサービスは近年、退職時のストレスを軽減できるといった理由で急拡大していました。モームリもその流れに乗った。さらに谷本さんは、退職代行サービスの“第一人者”として新聞やテレビに出ずっぱりで、SNSなどを活用して利用者を増やしました」
結果、25年1月期の売り上げは約3億3000万円で、2期連続の大幅増収だった。
「名前と顔が売れた谷本さん自身も、港区内の超一等地にある億ションに居を構えるまでになりました。そんな彼はもともと、国内最大手のカラオケチェーンを手がける上場企業の社員でした。岡山県出身で、神戸学院大学卒業後に入ったその企業でエリアマネージャーまで務めて退職。アルバ社を設立しています」
そこに岡山や神戸の仲間、エリアマネージャー在任時に店長職だった女性を引き入れたのだという。
「この女性はアルバ社の執行役員であり、谷本さんの妻。しかも、捜索容疑となった非弁行為において重要な役割を担っていた。谷本さんは捜索前、メディアに“弁護士との間で金銭のやりとりはない”と話していましたが、彼女の関連先が報酬の発覚を免れる受け皿だったのです」
一体どういうことか。
「アルバ社は依頼者の勤務先との交渉のために“労働環境改善組合”なる組合をつくっていて、彼女が執行委員長でした。弁護士からの見返りは、この組合に対して“賛助金”との名目で支払われていたとされます」
アルバ社の元従業員が言う。
「賛助金の話や谷本夫妻が人格をおとしめるような文言で従業員にパワハラを行っていた事実。社長は、これらをメディアなど外部に喋ったとして退職者複数名を名誉毀損で訴えているんです」
その一方で、依頼者は増え業績は伸びていた。
「オフィスが毎年のように変わりました。川崎から大田区の蒲田周辺、港区の芝大門、そして現在の五反田駅近くのビルです。月十数万円の物件に住んでいた社長も、子どもが生まれるとかで、今年の夏に港区内の超高級マンションへと移っていて心底驚きました。なにしろ、月の賃料がゆうに100万円を超す億ションですからね。よほど羽振りがよかったのでしょう」
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デイリー新潮編集部