小学生を中心に、「シールブーム」が全国で再燃している。
平成時代にも流行したシールブームとは、シール帳と呼ばれるアルバムタイプのノートにお気に入りのシールを貼り付けて交換し合うもので、当時はお金さえ出せば自由に好みのシールが買えていた。しかし現在のブームでは、お目当てのシールを入手するための熾烈なバトルが繰り広げられている。
販売店舗ではトラブルが頻発、学校や警察が警戒を強める事案も起きている。令和の「シールブーム」の過熱ぶりを、家族間のトラブルや子育てなどをテーマに執筆活動を行うライターの清水芽々氏が取材した。
昨秋の終わり頃、週末になるとショッピングモールでは早朝から親子連れで長蛇の列ができているのが恒例になっていた。
手のひらサイズの手帳を手にして、ウキウキとした様子で並ぶ子どもの横で、膝の屈伸をしたり、アキレス腱を伸ばすようなストレッチを始める親の姿が目についた。
「はて?」と思いながら眺めていると開店時間になって、ようやくその理由がわかった。
開店と同時に店内に吸い込まれた保護者たちが、猛烈な勢いでお目当てのフロアまでエスカレーターを駆け上がって行くのである。
「もたもたしていると追い抜かれますし、足がもつれて倒れたりしてケガ人が出るようなことになれば、販売自体が中止になってしまうんです」
そう話すのは、小学生の娘ふたりとやって来たという30代の母親だ。彼女は家から着て来たダウンジャケットを脱いで傍らの娘に渡すと、ランニングシューズにジャージズボン、リュックサックという軽装で店内を駆け抜けて行った。
「たかがシールに」と思われるかも知れないが、「ボンボンドロップシール」と呼ばれる人気の立体型シールはこの頃から品薄状態が続いており、店舗に入荷するタイミングで争奪戦になるのだ。
「シールコーナーには開店と同時に一瞬で人だかりができます。『さっさとどけよ!』『何枚も持って行くなよ!』などの怒声が飛び交うこともあり、戦場さながら。あまりにも人が殺到するので、モール内の隣接する店舗の迷惑にもなってしまっています」(ショッピングモール・マネージャー)
このような混乱を避けるため店舗側は「おひとりさま1点限り」「シールの入荷は未定です」といった貼り紙をして周知に努めている。だが、家族総出で並んだり、入荷のタイミングを見逃すまいと、連日開店から閉店までショップに居座る人が出るなど、さらなる混乱を招くことになってしまった。
ある雑貨チェーン店の店長はこう困惑する。
「バックヤードから段ボールを抱えて戻って来たスタッフが、シール目的のお客さまに囲まれて身動きがとれなくなったこともありました。段ボールの中身がシールではないことがわかると、あからさまに舌打ちしたり、ため息をつく人もいるし、中には『期待させるんじゃねえよ』と暴言を吐く人もいて、メンタルをやられるスタッフも続出しています」
この雑貨店の系列の店舗では、「シールの品出しをしていたスタッフが小学生女子の集団に襲い掛かられ、手にしていたシールを無理やり奪われる」という事件も発生したそうだ。
「お客様同士のトラブルも起きています。他の人が手にしたシールを横から奪い取ったり、一旦買い物カゴに入れたシールを、他の人が隙を見て盗むんです。購入後であればレシートなどで持ち主が特定できますが、レジを通す前だと所有権が曖昧ですし、盗んだ瞬間が防犯カメラに映っていないと詳しい状況がわからないため、窃盗事件として扱うことは難しい」(同前)
こういった事態が相次ぐことから「ボンボンドロップシール」はもちろん、類似シールの取り扱いを止める店舗も増えている。
また、メーカーや店舗は抽選販売や予約販売などの対応策を取っているが、予約サイトのアクセスが集中し過ぎたために消費者からのクレームが相次いだり、システムにエラーが生じるなどして、あらたな火種を作ることになっている。
加えて、熱中しているのが主に小中学生であるがゆえの問題も起きている。つづく後編記事『自慢した子に誹謗中傷、交換で賠償金を請求するケースも…!「令和のシールブーム」で深刻化する「学校でのイジメ問題」』で詳報する。
【つづきを読む】自慢した子に誹謗中傷、交換で賠償金を請求するケースも…!「令和のシールブーム」で深刻化する「学校でのイジメ問題」