X(エックス)が2025年12月から、投稿された画像についてAIで加工できる機能を追加し、物議を醸している。第三者が投稿した画像も対象だったことから、性的に改変される行為が相次ぐ事態となったからだ。
服を着ている女性をビキニ姿にしたり、裸同然の格好にしたりされ、そのような行為に悩まされた人が、人格権の侵害だとして不快感を示すこともあった。また、「服を1本のデンタルフロスにして」という改変指示により、水着どころか裸同然にされてしまうケースもみられる。
ある女性アカウントは、すでに警察に相談したことを報告し、開示請求を検討することも明かした。ほかのユーザーからも、問題の行為には、開示請求を受けるリスクなど、抑制的であるべきだとの声も上がっている。
Xに投稿された人物の写真を、AIでビキニ姿にするなどして投稿する行為は、どのような法的問題があるのか。インターネットの問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。
──Xに投稿された「衣服を着た人の写真」について、第三者がAIで「ビキニ姿」に加工したものを投稿する行為には、どのような法的問題があるでしょうか
「衣服を着た人の写真」を第三者がAIで加工して「ビキニ姿」など性的な画像にして投稿する場合、被写体にとっては不本意な改変がされているということになります。
この場合、どのような加工がされているかにもよりますが、色々な権利侵害があると考える余地があります。
裸やそれに近い画像にされている場合は、名誉毀損として構成することができる可能性があります。
名誉毀損は人の社会的評価の低下がある場合に成立するとされていますが、裸の写真が晒されるような場合は、判例上、社会的評価の低下が認められています。
また、私生活上の事実または事実らしく受け取られるものは、プライバシーの問題になってくるため、ビキニ姿に加工されたものはプライバシー権侵害の問題も生じるといえます。
さらに、不本意な加工がされた結果、社会通念上許される限度を超えるような侮辱であると言える場合には、名誉感情侵害の問題にもなってきます。
ビキニ姿への加工は、元の服装が何かということにもよるでしょうが、名誉感情侵害となる余地があります。
加えて、他者の肖像を勝手に利用するという点において肖像権侵害が、第三者が著作権を有している写真を利用する点において著作権侵害となる可能性も高いと言えます。
なお、前提としてですが、第三者がAIで加工をすること自体は、それを公開しない限りにおいて、原則として制限されているわけではありません。公開しなければ第三者のプライバシーや名誉などの権利を害することがなく、また第三者の著作物に当たる可能性がある写真を加工してはいますが、私的使用の範囲として許容されるためです。
──投稿者に対して開示請求手続きをした場合、認容されるでしょうか
開示請求が通るかは、その内容次第ではありますが、そのような加工を正当化する事情は基本的にはないと想定されることも踏まえれば、認められることは多いのではないかと思われます。
開示が認められた場合は、投稿者に対する慰謝料請求が可能です。賠償額の程度はケースバイケースになりますが、画像自体のひどさや、どのくらい閲覧されたのかが考慮されることになります。
また、名誉毀損罪に当たるような酷いものについては、刑事責任を問われる可能性がありますし、著作権侵害についても刑事責任を問われる可能性があります。
【取材協力弁護士】清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第5版(弘文堂)」などがあり、マンガ・ドラマ「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。事務所名:法律事務所アルシエン事務所URL:https://www.alcien.jp