「人生は、そんな簡単なものじゃないでしょう。この国で頑張ろうと思って、何十年間も日本で働いて死んでいった人に『火葬が嫌なら元の国に帰りなさい』というのは……」──こう語るのは、大分県選出衆院議員・岩屋毅前外相(68)だ。
【写真】〈絶対反対〉イスラム土葬墓地建設計画に反対する看板
岩屋氏は先月、地元の大分県議らが内閣府などに「ムスリム墓地に関する国の対応を求める要望書」を提出した際に、現場に同行。議員らの要望を受けての対応だというが、知名度も相まってSNS上などではもっぱらこの議題の”中心人物”とされている。
矢面に立ったことで、誹謗中傷も相次いでいるようだ。
X(旧Twitter)では同氏について、〈どこの国のために働いてるんだよ…〉〈岩屋を土葬しろ〉などと、強い言葉で非難する投稿がいくつも確認できる。
そんな中で異文化間の”橋渡し役”を買って出た岩屋氏本人が、前回に続いて土葬問題に関する課題や具体案を明かしてくれた。【前後編の後編。前編から読む】
──なぜ”国レベル”の対応が必要と考えるのでしょうか。
「『外国人との共生』は日本の重要なテーマです。私の地元でも建設や福祉、サービス業、農林水産業など、外国人がいなければ回らない社会になりつつあります。そして、ほとんどの人が真面目で一生懸命働いて、日本を支えてくれているのが実像ですよ。
もちろん中には、犯罪に手を染めたりルールを守らなかったりする人もいるから、それには厳格に対応する必要がある。しかし、少子高齢化が進む日本の現状を考えると、外国人も含めて共生できる国づくりを進めることが必要です」
──多種多様な宗教的背景をもつ人は今後も増えると見込まれています。
「在留外国人の増加に伴い、国内の外国人イスラム教徒の方々も増えています。これを考慮すると、土葬墓地問題は大分だけじゃなく、全国どこでも起こりうる問題です。
そして日本は国策として『外国人と秩序ある共生をしていこう』と言っているわけだから、この問題も地方自治体だけに判断を委ねるんじゃなく、国がもっと積極的に関与すべきではないかと。それで今回各省や党本部に要望をしたところです」
──宗教的多様性と地域住民の不安の調整について、岩屋氏が考える”落としどころ”は。
「これはなかなか難しく、私もまだ”解”は持っていません。しかし、イスラム教徒の土葬を認めている墓地は国内にごくわずかなので、そこだけに埋葬希望が集中するのは問題だし、遠くに住んでいる人にとってはご遺体の輸送や、のちのちのケアが大きな負担になってしまう。
だから『どうしても土葬で弔いたい』という人には、ある程度のブロックごとに土葬墓地が用意されているのが望ましいのではないかと思います。かといって、国立や国営にするわけにもいかないでしょうから、そこは今後の検討課題でしょうね」
──ブロックごとというと、たとえば「九州にひとつ、四国にひとつ」のような?
「それもひとつのアイデアでしょうが、私の中にまだ『こうすればいい』という確たるアイデアはありません。これは政府や党でしっかり議論してほしいし、専門家や日本のムスリム団体なども交えて意見交換をするのが望ましいんじゃないかと思っています」
──岩屋さんの地元でこれまでに亡くなったイスラム教徒は、どう埋葬されていたのでしょうか。
「それについては詳細を把握していません。ただ、イスラム教徒の方が日本で亡くなり、その子孫も日本で暮らしていくとなる場合、ちゃんと弔うところがないと困るだろうとは思います」
──土葬反対派の中には「日本は火葬の国なんだから、火葬が嫌なら自分の国に帰ればいい」という意見もあるようですが。
「人生は、そんな簡単なものじゃないでしょう。この国で頑張ろうと思って、何十年間も日本で働いて死んでいった人に『火葬が嫌なら元の国に帰りなさい』というのは……。
イスラムは教義で火葬が禁じられていると聞いています。死生観に関わる深刻な問題ですよね。共生の方法を探る努力は必要だと思います」
“死んだら終わりではない”──そう語気を強めて、話を締めくくった岩屋氏。他文化共生がますます求められている日本において、土葬問題はどのように帰結するのか。
(了)
取材・文/前島環夏
【プロフィール】前島環夏(まえじま・わかな)/ライター・エディター。Web媒体を中心にインタビューや書籍編集などを行なっている。