安倍晋三・元首相(当時67歳)が2022年に奈良市で演説中に銃撃されて死亡した事件で、殺人罪や銃刀法違反などに問われた無職山上徹也被告(45)の裁判員裁判の初公判が28日、奈良地裁(田中伸一裁判長)であり、山上被告は「全て事実です。私がしたことに間違いありません」と起訴事実を認めた。
最大の争点は量刑で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が「宗教2世」の被告の動機にどの程度影響を与えたかが焦点となる。
起訴状では、山上被告は22年7月8日昼、奈良市の近鉄大和西大寺駅前の路上で、参院選の応援演説中の安倍氏を手製銃で銃撃して殺害したとしている。
山上被告は罪状認否で、起訴事実を認めた一方、「法律上どうなるかは弁護人に任せます」と述べた。弁護側は、手製銃は銃刀法の規制対象ではないとして同法違反の発射罪などについて無罪を主張した。
検察側は冒頭陳述で、山上被告は母親が多額の献金を続けた教団を恨み、教団最高幹部への襲撃を計画したが、コロナ禍で幹部の来日の見通しが立たないため、襲撃を断念したと説明。安倍氏が教団の友好団体にビデオメッセージを寄せていたことを知り、「非常に著名な安倍氏を襲撃対象とすれば、教団の活動実態に社会の注目が集まり、批判が高まる」と考えたとした。
その上で、「元首相を白昼堂々殺害しており、戦後史で前例を見ない極めて重大な結果と社会的反響をもたらした。不遇な生い立ちは量刑を大きく軽くするものではない」と強調した。
弁護側は、動機は教団への復讐(ふくしゅう)だと指摘した上で、「育った環境が児童虐待にあたること、被告の性格や行動がその影響を受けていることを立証する。刑の重さを決める上で非常に重要な事情として考慮すべきだ」と述べた。
公判は最大で全19回。母親や宗教学者らの証人尋問、被告人質問などが行われる。12月18日に結審予定で、判決は来年1月21日に言い渡される見通し。