前橋市市之関町の阿久沢幸吉さんが8月5日、102歳と51日で富士山登頂に成功した。
麓にある富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)によると、37年ぶりの最高齢登頂記録の更新となり、8月16日にはギネス世界記録の認定証を受けた。今年は2回入院するなど挑戦の断念も頭をよぎったが、家族や仲間の支えで快挙を達成し、「夢がかなった」と喜んだ。(新井丈太)
阿久沢さんは宮城村(現前橋市)出身。戦時中は10歳代で、神奈川県横須賀市にあった軍用機の開発拠点「海軍航空技術廠(しょう)」でエンジンの製造に携わった。子どもの頃から山が好きで、住み込みで働く中、数少ない休みの日には息抜きに友人と箱根や丹沢地区など神奈川の山を登った。
終戦後、地元に戻って酪農を営む傍ら、「人と出会えるのがいい」と登山にのめり込んだ。暇さえあれば全国の山を巡り、登山愛好家で作る「群馬岳友会」にも参加。85歳で仕事を引退してからは毎週登り、東日本の日本百名山はほぼ制覇した。
富士山は、横須賀で働いていた15歳で初登頂し、その後も何度も登った。15回目の2018年、山頂にある高齢登頂者記帳所を見て、1988年に福島県の男性が打ち立てた101歳10か月が最高記録と知った。「必ず超える」。そう誓い、実現のために100歳を過ぎても毎週、赤城山の鍋割山(標高1332メートル)などに登り、鍛錬を重ねた。
しかし、今年1月に桐生市で下山中に転倒。頭を打って3週間の入院を余儀なくされた。退院して間もない3月には心不全で再び入院。筋力が落ち、歩くのがやっとになった。
それでも、岳友会の仲間が富士山の山小屋を手配するなど「挑戦を待ってくれている仲間がいる」と、早朝の散歩など長年の習慣を続けて徐々に体力を回復。県内の山で登山の感覚も取り戻した。
8月は、娘と孫夫婦、岳友会員の7人と、3日かけて登頂に挑んだ。3日目、8合目を過ぎて険しい岩場に差しかかったときは弱音を吐いたが、三女の星野元江さん(70)の「一歩ずつ頑張ろう」との声で歩みを再開。山頂に立つと、「みんなのおかげだ」と感謝した。
現在は自宅近くの老人福祉施設でボランティアをする。毎朝訪れ、年下の高齢者のうがいの手助けをしたり、おしぼりを用意して利用者を出迎えたりしている。絵画教室を主宰するなど活動は多彩で、精力的に生活している。「富士山は今回で最後になると思うけれど、これからもできるだけ長く山を登り続けたい」。笑顔で次の目標を語った。