岡山県高梁市の病院で、看護師の女性をナイフで刺し、殺害しようとした罪に問われている男の裁判員裁判が、岡山地裁で行われています。
【画像を見る】殺人未遂事件の現場/送検時の被告の男
殺人未遂・銃砲刀剣類所持等取締法違反の2つの罪に問われているのは、高梁市の無職の男(33)です。
起訴状などによりますと、男は2024年7月に高梁市の病院【画像①】で、看護師の女性の腹部などをナイフで4回突き刺して殺害しようとした、殺人未遂などの罪に問われています。

今年9月30日に行われた初公判で、男は起訴内容を認めていて、量刑が争点となっています。
冒頭陳述などによりますと、男は2024年7月午前9時半ごろ、高梁市内の病院敷地内の出入り口前で、勤務を終えて帰宅しようとしていた看護師の女性を、背部から刃体の長さ約13センチのナイフで刺したといいます。さらに路上に倒れた後も追撃して、腹部などをあわせて4回刺したとされています。
現場にいた病院職員から、「看護師が患者にナイフで刺された」という通報があり、警察が駆けつけたところ、腹部から血を流している女性を発見。現場にいた男や病院職員に話を聞き、男を現行犯逮捕しました。
女性はドクターヘリで病院に搬送され、肝損傷などの全治約1か月の重傷を負いましたが、命に別状はありませんでした。警察の調べに対し男は、「殺してやろうと思って刺したことに間違いない」と供述しました。その後、男は殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪で起訴されました。
2025年9月に行われた初公判。白のワイシャツ、ネイビーのスーツ、黒の細いフレームのメガネをかけた男が、一礼して証言台に入ってきました。裁判官から認否を問われた男は、「間違いないです」と起訴内容を認めました。
冒頭陳述などによりますと、男は、就労継続支援B型事業所でブドウ栽培をしていました。女性は男の元交際相手で、男は女性に別れを告げられた後も復縁を望み、毎日SNSの「X」で数十件ものメッセージを送り続けていたということです。すぐに返信をもらえないと、「女性が自分以外の男性と肉体関係を持っていること」を想像し、「自分との交際は、金銭や肉体関係目当てだったのではないか」と疑うなどして、女性に対する不満や怒りを一方的に募らせたといいます。
さらに、多数のメッセージを送りつけたり、「元カノ 殺したい」「必ず殺せるナイフの刺し方」などとネットで検索していたということです。そんな中、男は事件の前日から事件当日にかけて、同様の被害的な思い込みを強め、女性を問い詰めるメッセージを100件以上も送り続けましたが、女性が勤務だったため、返信はなく、そのことにも怒りを募らせたということです。
そして男は、犯行の数時間前に自身のスマートフォンで「殺害計画」メモを作成。住んでいたグループホームの台所にあったナイフを持ち出し、犯行の約1時間前から女性の仕事が終わるのを待ち伏せて、女性に後遺症を伴う全治1か月の重傷を負わせたとされています。検察は、「被告は、被害者と事件前まで交際していたが、別れを告げられ、不満や怒りを一方的に募らせて犯行に及んだ」とし、被害者に対する「執着心」や「殺意の強さ」を指摘しました。
一方で弁護側によりますと、男は当時ネットで、東京に住んでいた看護師の女性と知り合い、のちに女性が東京から高梁市に引っ越した際に、「自分のために来てくれた」と思い込み話を聞いてくれたこと、弁当を作ってくれたこと、寄り添ってくれたことなどから、「人生で一番愛した女性」と舞い上がったといいます。その後、男は女性から別れを告げられたことでどん底まで落ち、女性に「陥れられた」「裏切られた」「だまされた」と思い込んだということです。
弁護側は、「被告人は自閉スペクトラム症などの障害があり、当時、グループホームに入所していて、脆弱性や生育歴からきた犯行」「責任能力は争わないものの、過ちを繰り返さないための量刑を一緒に考えて欲しい」と主張しました。
これを聞いていた男は、唇をかみしめ、鼻をすすり、涙を拭っていました。【第2回】看護師の女性「一生消えない痛みが残った」に続く