石破茂首相(自民党総裁)が辞任を決断するきっかけとなった菅義偉副総裁(元首相、衆院神奈川2区)、小泉進次郎農相(11区)との6日深夜の三者会談を巡り、その背景が関係者の証言で明らかになってきた。「総裁選前倒し決定なら解散総選挙を打つ」との首相サイドの動きに菅氏が怒り5日早朝に首相を電話でただしたことが発端となったという。自民幹部は「『菅電』による解散構想への危機感や怒りの直接の伝達がなければ事は動かなかった」と振り返った。
■「むちゃはしません」
「1政党の予備選を巡り不利だから解散なんて国会軽視も甚だしい。憲政の常道にも反する」。5日早朝の携帯直電で菅氏が首相を詰問したのは首相周辺から発信されていた解散構想だ。法的には国会閉会中の解散は可能とされる。しかし憲法学者の間でも「本会議も開かないまま議員を解職する行為は議会制民主主義に照らし暴挙」と指摘され、歴代政権下での実施は皆無だ。
首相は「むちゃはいたしません」と回答したとされるが懸念を拭えない菅氏は農相として閣内の一員の小泉氏に即座に電話。首相へ危機感を伝えた旨を明かし「党分断も解散構想も絶対に阻止しなければ」と確認し合ったという。
しかし、前倒し賛成議員が過半数となる勢いに焦った首相周辺からの「解散におわせ」(党関係者)など分断をあおる情報発信はやむ気配はなかった。6日にそのような状況を報告した小泉氏に対し菅氏は「今すぐ総理と直接話したい」と官邸との交渉を託し会談への小泉氏の同席も求めた。
官邸幹部は同日午後8時半に公邸での会談をセット。小泉氏の同席も快諾した。官邸関係者は「菅さんの解散構想への怒りは尋常ではなく一対一なら首相が萎縮してしまう。小泉さんに緩衝役として入ってもらい助かった」と振り返る。